こんにちは、ファッションエディターの昼田祥子です。
今日も引き続き、稲垣えみ子さんのインタビューをお届けします。
前回記事
服は減ったのに悩みがなくならないのはなぜ?数を減らすこと=ゴールじゃない【稲垣えみ子さん】>>
買い物って、やめてみるとすごい無駄なことをしていたと思う【稲垣えみ子さん】>>
昼田「みんな断捨離したいって言いませんか? 50過ぎの友人は、今まで受けた講座やセミナーの資料が捨てられないって言います」
稲垣「資料をいつか見る日って絶対こないから、全部捨てるようにとこんまりさんも書いてましたよ」
昼田「私もそう思いますけど、なぜ捨てられないんでしょうかね?」
稲垣「講座やセミナーを受けるって、さっき(※前回の記事にて)話した人の可能性や夢とつながっている話なんじゃないかと思います。この歳になってつくづく思うんですけど、40代くらいまでは可能性って広げていいと思うんですね。でもそこを過ぎてもまだ可能性って言ってるのは、人生の全体の長さから考えたらちょっとおかしいっていうことに気がついたんです。私はもうすぐ60になりますけど、本当に人が一生でできることは限られているんですよね。限られているなかで、これまでやってきた中から、自分の資源をどう世の中に返していくかを考えるようになりました。自分があれもしたいこれもしたい、輝く自分でいたいとか、それは若い時の話で、それを過ぎたらお世話になったことをお返ししていく。最後にゼロにした状態で死んでいきたいよねっていう方向に変えた方がいいと思ったんです。そうしたらいろんなものを手放すことが怖くなくなって、すごく楽になりました。だからたぶん捨てられない人は、そこの整理ができなくて、今できてないことが未来にできるかもとか、そっちにいっちゃってるんじゃないかなって思うんですよね」
昼田「なるほど、広げていいのは40代までですか」
稲垣「20代とかの人はまだ捨てなくていいんじゃないのかなって。やっぱり得ていかないと自分が何者かが分からない時期ってあると思うんです。けれどある程度の経験がある人は、その経験は自分だけでできたことじゃないし、いろんな人に助けてもらって今の自分があるわけだから、じゃあこの経験をどう生かしていくか。自分が輝いていたいとか、そんなことはどうでもいいから、どうやって世の中に返していくか。まだ出会ってない自分に出会いたいとかはもういいんですよ。もう自分は自分なんです、素晴らしい自分なんですよ、みなさん」
昼田「“この自分でいいと思うこと”ですよね」
稲垣「みなさん思った以上に、モノも経験も持ってる。それが大事って思えば、自分が今やるべきことも見えてくるじゃないですか。死ぬまでにやっぱりゼロにしていかないと。やっぱり縁あって自分のとこにやってきたものを無駄にせず、行き先を決めて、嫁に出すように、と思ったらもうすごい大変なんですよ。心を込めて、そこにも人生をかけるくらいの責任がありますよね。ちゃんと処分して終わっていくっていう」
昼田「でも私この本を読んだら捨てられると思いましたよ。すでにいろいろ手放せましたし、未来に対してどう減らしていくか、そして最後には修道女っていうありたい姿が見えたことでものすごく安心しました」
捨てられないことがまさに地獄への第一歩になる
この本では、最後、修道女のような”変化の少ない暮らし”。アメリカで行われている修道女を対象にした研究によると、脳にはアルツハイマーの病変が出現しているのに現実には認知症を発症しないケースがあったそう。
稲垣「この本では、最後は修道女の暮らしっていう目標を掲げました。そう思ったら、全然捨てられるってなるじゃないですか。あれこれ溜め込むのは不安だからですよね。リスが食べ物を土に埋めるのは、餌がなくなったら冬を越せないかもって思うから。でも実はもう余ってるとなったら溜めなくていい。捨てられないのは、自分がまだ足りていないと思うから。その思い込みを変えないと、その不安は死ぬまで続きます。まさに地獄への第一歩。そう気づくことができたら、もう捨てますよね」
昼田「捨てた今は、持っていることでいろんなものを奪われてたことに気がつきましたけど、持っているときは気がつきませんでした。だから捨てられないとか言っていないで、捨てればいいじゃん? って言っちゃうんですけどね」
稲垣「でもそういう人も、どこかで気づいてるんですよね。みんな断捨離したがってるってことは、持っていることに対してやっぱりストレスがあるんです。でもその先が不安だからため込むんですよね。私はこの本で言いたかったのは、持ってることの方が不安。本当にリアルに不安だよっていうこと。そこが見えてないからみんなやっぱり、ため込んでおけば何とかなると思うんです」
家電やグッズなど便利なモノほど人は手放せないかもしれません。けれどその便利なものに乗っ取られ、脳を使わなくなり、体を動かさなくなり、どんどん自分を退化させてしまっているとしたら……つまり私たちは認知症まっしぐら!? ぜひ続きは、本を。
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