血のつながりがなくても働く「親性」は、男女関係なく子どもを守ろうとする脳のネットワーク


私はこの「親性」、人が幸せに暮らせる社会づくりには不可欠なんじゃないかと思います。親性は子どもがいなくても、自分の子ども以外に対しても働くそうです。赤ん坊は、極めて無力な存在ですよね。つまりヒトの社会で最も助けを必要としている仲間です。多くの人が親性を育めば、赤ん坊だけでなく、いろんな事情で助けが必要な仲間に対する想像力がより働くようになり、より能動的に助けようとするのではないかと思うのです。社会の一員として、そうすることが自然だと思えるようになるのではないか。ちなみに、親性脳と呼ばれる脳のネットワークは、社会脳と重なるところが大きいのだそうです。

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この親性脳のネットワークは脳の二つの領域の連携からなるといいます。割と原始的な脳の領域で起きる「子どもを守らねば!」という強い情動と、大脳新皮質で行われる「この子にとってはどのような対処が望ましいだろうか」という冷静な判断の組み合わせです。育児しながら自然にやっていることですが、実は脳の異なる領域が働いているのですね。親性脳の働きには、男女の差はないことがわかっています。これ、とても重要なポイントです! 子どもを持つ予定のない若い男性が乳児のお世話経験をする実験では、親性脳の領域が強く活動したそうです。 つまり男性は潜在的に親性に関わる脳機能を持っていることが示されたというのです。親性脳ネットワークは赤ん坊との接点を持つことで活発になり、育児時間が長いほど強化されるとも。また、子育てをしている男性同性カップルと異性カップルを対象に行った研究では、どちらも親性脳を働かせていることがわかっています。

 

このことから、“子育てが女性の役割なのは自然の摂理”とする、いわゆる「母性神話」は誤りであることがわかります。同性カップルの子育ては子どもに悪影響を及ぼすと主張する政治家にも、ぜひ知ってほしい研究結果です。

親子に血のつながりがなくても、親子という関係でなくても、大人が子どもに対して親性を働かせることは可能であることがわかったのなら、神話頼みで母親に押し付けていたやり方から、大人の親性が発揮されるような画一的でない支援を模索することが課題となります。