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日本の賃金低迷や円安の影響などにより、ワーキングホリデー(ワーホリ)の制度を使って海外就労を目指す若者が増えています。ワーホリは本来、二国間の相互理解・交流を前提とした制度であり、労働を主目的としたものではありませんが、日本の賃金がここまで安くなってしまうと、就労目的にワーホリを活用しようとする人が増えてくるのは当然の結果といえるかもしれません。

【参考記事】ワーキングホリデー利用増 若者はなぜ海外へ 円安で海外出稼ぎも(北海道新聞・2023年7月28日付)

 


ワーキングホリデーとは、二国間の取り決めに基づき、若者の長期休暇目的での入国・滞在を許可するとともに、その間の生活費を賄うため、付随的な労働について認める制度です。

日本政府は1980年にオーストラリアとの間で制度をスタートしたのを皮切りに、現在ではニュージーランドやカナダなど、29の国や地域との間で導入しています。80年代のバブル時代には、多くの日本人の若者が大挙してオーストラリアにワーホリの制度を使って渡航していましたが(当時はバブルで社会全体が浮かれており、長期バカンスのつもりで渡航した人が多かったように思います)、最近ではだいぶ様子が変わっているようです。

以前と同じように、文化交流目的の人も多いと思いますが、ワーホリ中の就労そのものを目的にする人が増えているのです。

先ほど説明したように、ワーホリというのは、両国の若者が文化や生活様式を相互理解することが目的ですから、あくまで就労というのは滞在資金を稼ぐ手段に過ぎず、就労目的の渡航というのは本来の趣旨に反することになります。

ところが日本の賃金や為替がここまで安くなってしまうと状況が大きく変わってきます。

仮に1〜2年程度の期間であったとしても、そして仕事の中身がその後のキャリアにつながる高度なものではなかったとしても、絶対値として日本にいるよりもたくさんのお金を稼ぐことができます。オーストラリアの最低賃金は日本の2倍以上ありますから、給料の一定割合を貯金すれば、2倍のお金を貯められるわけです。

全体からすれば、ごくわずかかもしれませんが、渡航先の職場でその働きぶりが認められ、ワーホリの期間が終了した後も「是非、残って仕事をしてくれ」と言われる人も出てくることでしょう。そうなると勤務先の企業がスポンサーとして就労ビザの取得を後押ししてくれることになり、場合によっては、本格的な海外就職の道が開ける可能性も出てきます。

 
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