年末年始は、普段お参りをしない人でも神社に参拝する時期ですよね。毎年決まった神社に行く人もいれば、毎年違う神社に行く人もいたりとそれぞれですが、そもそも、なぜあなたはその神社を選ぶのでしょうか。有名だから? 今住んでいる場所の氏神様や自分の生まれた土地の産土神様だから? その情報は誰からどうやって知ったのかをちょっと思い出してみてください。実は、人が集まる神社には、必ず人を惹きつける仕掛けがあるのです。寂れた神社を再び蘇らせる神社復興コメディ『氏神さまのコンサルタント』の1巻が12月13日に発売されました。

日本には約8万社以上の神社があるそうですが、20年後にはその3分の1が「経済的な理由」で倒産・廃墟化すると言われています。
宮司の父と母を3年前に交通事故で亡くし、清田神社を引き継いだ女子高生の娘・佐倉真澄(さくら・ますみ)。毎日、神様のために掃除や神様へのお供えなどをしっかりやっているものの、現実問題では3000万円の修繕費が必要なのに、参拝者はほぼゼロで、神社の管理までできる収入がない状態。そして、都市開発のための立ち退きを迫られていました。

 

なんとしても神社を守りたい真澄は、父の知り合いだという自称コンサルタントの謎の男・袴田とともに、神社経営を立て直すことを決めます。

 


神社に限らない「お金儲け」「志の立て方」の本質とは


真澄は神社経営の現実的なノウハウを袴田から伝授されるのですが、最初に真澄が教わるのは、「稼ぐ」ことの本質。最初、神社はお金儲けをする場ではない、と真澄は抵抗するのですが、「人は信用できる人に金を払う」という袴田の言葉にはっとさせられます。

 

漠然と「お金が欲しい」「稼ぎたい」と思う時、この視点はあっただろうかと。あなたはありましたか?

 

「志の立て方」についても袴田は真澄に細かくレクチャーします。まずは「今後のビジョン」を具体的に思い描くことが必要なのだそう。
ビジョンを具体的に思い描き、その状態を感じる、そして一番肝心なのはそのビジョンを現実のものにするために行動するということ。これは、望むものを明確にし、今日できる具体的な行動を起こし続けるという「引き寄せの法則」ですね。

 

ここでポイントなのは、真澄が最初にぱっと発した目標をすぐ今後のビジョンに設定しなかったことです。その目標は彼女にとって「魅力的」だと思わなかった、つまり「ポジティブな感情を伴わないもの」だったから。ビジョンに必要なのは、それが成功した状況を自分が魅力的だと思えるかどうか、なのです。

袴田が教えてくれるこれらのことって神社経営に限らないビジネス、いや、人生全般における大事なポイントでもあるのでは、と感じます。

神社は人と人とをつなげる場でもあった


また、神社とはもともと神様にお参りするためだけでなく、お祭りなどの年中行事で人が集まり、そこで交流が生まれる場でもあったのです。真澄はそれを再認識し、袴田とともに新しい価値を付与して売り出すことを決めます。

令和の今も、リアルやネットでいろんな種類の新しい「交流の場」が生まれていますが、わざわざ作らなくても、日本にはすでに神社という場があったんですよね。このまま寂れていくなんてもったいない⋯⋯と思った方は、真澄と袴田の「古くからある場で新たな交流を作る」という試みをぜひ本編で読んでみてくださいね。

 

物事をうまく行かせたい時、自然と何かに祈っていたという経験は誰にでもあるのではないでしょうか。でも、祈るだけで神様が助けてくれる、なんてことはないのです。「困った時の神頼み」は、自分ができる最善を尽くした上で、なお困っているから神様に頼むのです。たとえ神社であってもそれは同じ。祈っているだけでは神社経営もうまくいかない、と教えてくれるのが本作です。
初詣で「この神社は人を集めるためにどんな仕掛けをしているのだろう?」という視点を持ちながらお参りすると、意外な発見があるかもしれませんよ。

 

『氏神さまのコンサルタント』第1話を試し読み!
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<作品紹介>
『氏神さまのコンサルタント』
胡原 おみ (著), 西山倫子+モノガタリラボ (原著)

街に愛され人に愛されてきた清田神社。そこで育った女子高生・真澄は、大の神社マニア。でも、父が亡くなって3年、清田神社はすっかりさびれてしまった。何か手を打たないと街から追いやられてしまう⋯⋯そんな時に現れた怪しいグラサン男。彼はこの神社の救世主か、それともとどめを刺す疫病神か? 神社やビジネスにまつわる豆知識満載、読むと神社にお参りしたくなるビジネスコメディ。

作者プロフィール 

漫画・胡原おみ:
現在、「ウルトラジャンプ」(集英社)にて『逢沢小春は死に急ぐ』、「コミックDAYS」(講談社)にて『氏神さまのコンサルタント』を連載中。過去作に『花園君と数さんの不可解な放課後』がある。
X(旧Twitter)アカウント:@koharaomi

原作・西山倫子+モノガタリラボ:
『ちはやふる』などの小泉徳宏監督が主宰するシナリオ制作チーム「モノガタリラボ」の所属メンバー。「モノガタリラボ」は、映画監督、舞台演出家、CMプランナー、アニメーターなど多彩なバックボーンをもつ25名のメンバーが所属し、 複数人で執筆にあたる「チームライティング」で映画・配信ドラマ・漫画などを創作している。
X(旧Twitter)アカウント:
西山倫子 @rinko_nishiyama
モノガタリラボ @mono_gatally


構成/大槻由実子
編集/坂口彩