日本で発生が予想されている地震の一つ、「南海トラフ地震」。内閣府の資料によると、駿河湾から日向灘沖にかけてのプレート境界を震源域として過去に大きな被害をもたらしてきた大規模地震で、これまで100~150年の周期で発生していると言います。
読売新聞社の「防災ニッポン」によれば、前回発生したのは1946年の昭和南海地震で、すでに70年以上が経過していることから、次の南海トラフ地震発生の可能性が高まっているとし、政府が防災対策を呼びかけています。
漫画『南海トラフ巨大地震』は、2025年2月に南海トラフ巨大地震が発生したという想定のストーリーで、1巻が8月に発売されました。
27歳・派遣社員で土木作業員をしている西藤命(さいとう・めい)。彼は自分のさえない人生に虚しくなって「誰かがこの世界を壊してほしい」と願っていました。
2025年2月11日15時07分、彼が名古屋港にいた時に南海トラフ巨大地震が発生します。
永遠に感じた「3分」の出来事
リアルなのは、作中の「南海トラフ巨大地震」は3分間しか揺れていなかったのに彼が「永遠に続くように思えた」と感じたところ。1話では地震発生後、12分しか経過していないのに、その間に彼の頭の中を駆けめぐったことや、一緒にいた老人とのやりとりの情報量の濃さといったら⋯⋯。地震発生後はとにかく分単位、いや、秒単位での時間との勝負。瞬時に自分がどう行動するのかを判断しなければ命を守れないのです。
そして、地震発生時に、彼の近くにいたのは見知らぬ老人でした。「その時」に一人でいるとは限らない。家族や親しい人ならまだいいですが、もし、面識のない見知らぬ人だったら、かつ、その人が自分よりも体力のない老人だったら、という想定も私たちの盲点です。
作中で主人公は地震発生後、避難しないといけない時に手を貸さないといけない他人がそばにいる状況になり、瞬時に判断を求められます。
津波についての思い込みと油断
東日本大震災では地震そのものよりも、津波で命を失った人の方が多いと言われていました。揺れてから津波が来るまでや、第一波から第二波までの時間差があるため、「津波はもう来ないのでは?」と油断してしまうのです。また、南海トラフ発生時、本作の舞台である名古屋で想定されている津波は東日本大震災の時のようなものとは違う種類なのだとか……。
ちなみに、東日本大震災からの教訓から「津波に注意」ということは知られてきましたが、前述の「防災ニッポン」によると、南海トラフ巨大地震では液状化による被害にも用心しなければいけないのだそうです。
車に乗っている時に地震が来たら?
そして、地震発生時にあり得るシチュエーションの一つ、「車に乗っている時」。東京だともしかすると地下鉄などの鉄道に乗っている時なのかもしれませんが、南海トラフ巨大地震で特に大きな被害が想定されるのは、静岡県から宮崎県までの太平洋岸なので、移動手段に車を使っている人も多いでしょう。
また、本作の主人公のように、避難場所として車内を選択せざるを得ない場合もあるのです。
この国の「宿命」である地震
日本は、本当に地震が多い国です。
2011年の東日本大震災でも余震が続いていましたし、その後も2016年の熊本地震、2018年の北海道胆振東部地震など、被害が出る地震が各地で発生しています。
南海トラフ巨大地震は日本の「宿命」だと言います。2025年2月という具体的な日付が、2023年に生きる私たちにリアリティをもって迫ってきます。
地震が起きる前までは人生に絶望していて、なんとなく「死にたい」と思っていた主人公の命でしたが、実際に地震に遭遇した時、「生きたい」という本能で必死に行動します。
けれど、そんな彼の前には、巨大地震発生で起こるさまざまな被害が立ちはだかります。
2巻以降、主人公はどうなってしまうのでしょうか。
『南海トラフ巨大地震』第1話を試し読み!
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<作品紹介>
『南海トラフ巨大地震』
よしづき くみち (著), biki (原著)
2025年2月11日15時07分、「南海トラフ巨大地震」発生――。いつか必ず起こる未曽有の災禍。そのとき、いったい何が起きるのか?
どうすれば、生き延びることができるのか?
綿密な取材に基づいて描かれた「いつか起こる震災のリアル」。
これは、「そのとき」が来る前に知っておかなければならない「現実」。
漫画・よしづきくみち
漫画家。過去作に『金曜日のバカ飯先輩』、『ああっ就活の女神さまっ』(原作:青木U平、協力:藤島康介)、『8畳カーニバル』など。
構成/大槻由実子
編集/坂口彩
作者プロフィール:
原作・biki
漫画原作者。平成元年生まれ。慶應義塾大学大学院 理工学研究科修了。現在は漫画やYouTubeアニメーションの原作をはじめ、キャラクタービジネスやIP開発のコンサルティングなども行う。手掛けた作品は、週刊少年マガジン『ワールドエンドクルセイダーズ』、別冊少年マガジン『いぐのべる』、YouTubeアニメ『全力回避フラグちゃん!』他。