「一流」の接客術は「お客様目線だとこういう対応がいいよね」


―― 「嫌われる接客」や、「二流」「三流」の対応も、こちらの顧客視点だと「こういう接客ってよくあるよね」と感じるのですが、その後で「一流」の対応を見ると、「確かに良い店員さんだ」とはっとします。この「一流」の接客術というのは、ご自身の経験から得たものなのでしょうか。


ゆりさん:そうですね、自身の経験からが一番多いです。「一流」「二流」「三流」の動画を作る時の考え方なんですが、まずはシチュエーションを決めて、
三流:販売歴1年くらいの若い販売員に多い、だるそうな対応をしてしまう子
二流:販売歴3、4年ぐらいで、 ある程度もうできることも増えたし「私、仕事できますし」ってちょっと調子に乗っちゃっているタイプの子
一流:店長の立場からスタッフに「こうしたらいいんだよ」とアドバイスする対応例
と当てはめていきます。

私のいる会社はアパレルの販売代行もしている人材会社なので、現場に出ているスタッフやエリアマネージャーに、対応に困ったシチュエーションについてヒアリングしてみたり、社内でも私のアカウントを見ている方がいて「ちょっとこういうシチュエーションで動画を作ってください」という意見をいただいたりしています。

実はこのアカウントは、私ともう一人、動画を編集するスタッフで作っているんです。 そのスタッフも販売経験があるので「こういう時どう思います」とか相談しながら二人で台本を書いています。

――お二人でやっていたんですね。「二流」「三流」の販売員の設定を聞けて興味深かったです。

 


ゆりさん:このアカウントは、販売員一年目の人や、これから販売員を目指したいと思っている人や、若手の育成に悩んでしまっている上司の方を基本的にはターゲットにしていますし、このアカウントを見て少しでも若い人が販売員の仕事に興味を持ってくれたらいいなとも思っています。でも、そこだけだとニッチな領域なので、販売員以外のお客様視点でも、おもしろいなと思ってもらえるように設定を作っていきました。

―― ミモレ世代だと、若手の育成に悩む店長さん目線の人たちが多いと思うんですけれど、そういう世代に対して、アドバイスやメッセージがあれば教えていただきたいです。

ゆりさん:働き方や働くことに対しての考え方というのが、年代によって変わってきているなっていうのは、専門学校で授業をしていてすごく感じます。ショックだったのが販売員って今は「なりたい職業」じゃないんです。私が販売員を目指していた時は、カリスマショップ店員がいたりして、憧れで人気の職業だったんですけれど、今は「ファッションが好きだからアパレルの世界に行きたいけれど、土日は休みたい」「ずっと立っているのはちょっとしんどい」「なんで興味ない人にこっちから話しかけなきゃいけないんですか」といった考えの10代20代前半の子がすごく多かったんです。


でも、そこを「それは違うよ」と教えるんじゃなく、販売員の仕事のやりがいや楽しさをよく知らないだけだから「こういう良さがあるんだよ」というスタンスで伝えると、年代が違っていても、ちゃんとコミュニケーションが取れて「販売の仕事っていいな」って思ってもらえると考えています。

私の密かな野望なんですけど、私はカリスマ販売員時代を再来させたいんです。販売員を人気の職業にしたいですし。「販売員っていいかも」って思う新しい世代を増やしていきたいなと思っています。

若い世代の考え方に寄り添いながらも「お客様目線だとこういう対応がいいよね」ということを伝えていけば、変に対立せずにうまくいくのかなって思っています。