負の連鎖から抜け出せない、貧困と格差の現実

「ついていった方が悪い」という自己責任論で片付けてはいけない。ドラマ『SHUT UP』が描いた性的同意、貧困・格差の問題_img0
©️「SHUT UP」製作委員会

このドラマが描くテーマの一つが、貧困・格差です。彼女たちが次々とトラブルに巻き込まれて、負の連鎖から抜け出せないのは“お金がないから”。

バイトを掛け持ちし、授業が眠くて頭に入ってこないくらい働き続けても、生活は一切楽にならない。奨学金を返さないといけない未来に不安しかない。そんな彼女たちの生活の細部がよく描かれています。例えば、1日の生活費を300円以下に抑えなければならず、生理用ナプキンや鎮痛剤も譲り合ったりしてしのぐこともある。ナプキンは昼用を買うのがもったいないからと夜用を買って長時間つけて持たせる。

「お金がないとか、時間がないとか、女であるとか、私はその全部から自由になりたい」
そう願うけれど、お金がないがゆえに、パパ活をせざるを得なくなる。いくら友達の人生のためとはいえ、割り切れるわけじゃない。パパ活の時の心境を彼女たちはこう表現します。「やすりにかけられてる感じ」「ものになったみたい」。

 


「大丈夫。私たち何にも失ってない、汚れてない」


あるパンフレットに書かれた「自分を大切に」という文言を見て、由希が呟きます。
「自分を大切にって、そんなこと言われてもどうにもできないときってあるよね」。

この気持ち、すごく分かるんですよね。いつもギリギリで生きていたら、自分を大事にする方法なんて分からない。それに、自分の心や身体を優先する選択って、お金がないとできなかったりする。由希たちも、お金さえあれば、パパ活をすることもなかったし、動画を撮られることも、100万円強奪計画を企てることもなかった。パパ活の相手と望まない性行為をしたことは、その後も由希の心に暗い影を落とします。そんな由希に紗奈(渡邉美穂)は言います。

「あのときはああするしかなかった」「大丈夫。私たち何にも失ってない、汚れてない」

「ついていった方が悪い」という自己責任論で片付けてはいけない。ドラマ『SHUT UP』が描いた性的同意、貧困・格差の問題_img1
©️「SHUT UP」製作委員会

貧しく、身を削られる中にあって、由希たち4人は常に互いのことを考えるし、互いの痛みを自分の痛みとして、何があっても一番の味方であろうとします。みんながいれば、強くなれる。どんな現実でも生きていける。そう思わされるような、切実ながらも温かい友情も、このドラマの見どころの一つです。