国際的な環境問題や戦争・紛争への思い
――昨年、天皇陛下と雅子さまは、インドネシアに友好親善のための海外訪問をされました。令和になって初めてのことですね。
大久保さん:そうですね。令和になって英国のエリザベス前女王の葬儀に参列されましたが、皇室本来の海外訪問の目的である友好と親善を旨としたご夫妻での訪問は、東宮時代の豪州訪問以来、21年ぶりになりました。
今後は、こうした訪問も行われるようになるでしょう。雅子さまの昨年12月9日の60歳還暦のお誕生日に際してのご感想は、とても興味深かったです。雅子さまらしい視点が随所にありました。ご感想の中で、雅子さまは、
「大雨による災害や山火事、深刻な干ばつなど、地球温暖化に伴うと思われる自然災害も世界各地で多発しています。気候変動など地球規模の環境問題は、私たちが協力し合いながら真剣に取り組まなければならない喫緊の課題の一つであると考えます」
とおっしゃっています。地球規模の課題に目を向けておられます。
天皇陛下も、昨年3月21日に米ニューヨーク市で行われた国連の水と災害に関する国際会議で、ビデオによる基調講演をしました。陛下は江戸時代の水運などをテーマに英語で話し、「水環境全体を俯瞰し大局的に捉え、水、災害、気候変動の課題をつなぎ、総合的に解決していくことが期待されます」と演説されました。
――子どもたちのことについてもふれられていましたね。
大久保さん:そうですね。具体的にウクライナとかガザといった地名は出ていませんでしたが、雅子さまは、
「世界に目を向けますと、戦争や紛争により、各地で子どもを含む多くの人の命が失われていることに大変心が痛みます。そして、現在、国際社会の中で、分断と対立が深まっているのではないかということが気に掛かります」
とおっしゃっています。そういったグローバルな視点のなかで、日本ばかりでなくて世界のいま起こっている事象を考えながら、自らの視点にも言及されています。そうした考えが、誕生日のお言葉のなかによく出ていました。
雅子さまは60歳のお誕生日が、結婚してちょうど30年目にあたるのです。皇室での生活が自分にとってどういうものであるかを、改めて振り返っておられ、その中には「皇后としての覚悟」がとてもよく表れていました。
Comment