「仕方ない」と諦めないで。調べ続けたことが差別を是正した実例
今ちょうど入試の時期ですが、2018年には医学部不正入試事件が起きました。女性が医学部に合格しにくくなるよう、複数の大学が点数を操作していたことが発覚したのです。大学側が述べた理由は「女性は医師になってもどうせ育児と両立できずに辞めてしまうから」。医師の過酷な働き方を見直すことなく、女性を排除していたのです。
この事件をきっかけに差別を是正し、毎年合格者の男女比を公表するように改めたところ、なんと2023年度の医学部入学者に占める女性の割合は4割にまで増加したそうです。医学部で学ぶ人の半分以上を女性が占めるようになる日も近いでしょう。いいぞ。日本では女性医師の割合は2割ほどですから、女性の医学生が過半数でもまだ足りないくらいです。
しかしせっかく女性の学生が増えたのなら、医師が健全に働ける環境を整えることが急務です。女性が増えることによって医師の働き方が変わることが肝心なのです。女性が長く働けない職場は女性に原因があるのではなく、その職場が極端に非人間的な働き方を強いるようになっているからです。医療の現場に限らず、男性の労働力を極限まで搾取する仕組みは、それに適応している男性には搾取であると認識できません。働きながら出産する人たちが参入したことによって、ようやくその歪んだ構造が可視化されたのです。人間らしく働けない職場は、働く人の心身を蝕みます。患者だって、ろくに寝ていない医師に手術されたくないですよね。医師が疲弊していたら、患者の不安に耳を傾ける余裕もないでしょう。
報道によると、産婦人科医の対馬ルリ子氏らが立ち上げた日本女性医療者連合会(JAMP)では、女性の医学部入学者の割合が一定の横ばいになっていることに気づき、 10年ほど前から調査していたのだそうです。当時、現場でも女性は男性よりも合格しづらいという認識はあったけれど、「仕方ない」「必要悪」と差別を受容する空気があったといいます。男性が圧倒的多数を占める医学界では、女性入学者の割合なんて問題にされません。それでもJAMPはこれを絶対に見過ごすわけにはいかないと諦めず、2018年に東京医大の不正入試事件が発覚したことがきっかけとなって、メディアに情報提供する機会を得たのだそうです。
対馬さんたちが現場の「仕方ない」に流されずに調べ続けたという話は、ガツンときました。女性が不利でも仕方ないと諦めてしまったことは誰しも覚えがあるんじゃないでしょうか。私にも経験があります。
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