「若者は宇宙人」「上の世代は頭が固い」はどちらも違う

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本当に世間では“叱られていない若者アレルギー”があるんです。叱ってほしくて……(ぴえん)とかいう若者って、本当に「叱られてない若者けしからん」な上の世代の人の願望を投影しただけの架空のキャラクターだなと感じます。

叱られたくて(うるうる)みたいな若者が描かれた作品は他にもありますが、メディアのこういった若者の恣意的な描き方に辟易とすることが少なくありません。

例えば、現在放送中の『正直不動産2』(NHK)に、十影健人・通称トカゲくん(板垣瑞生)というキャラクターがいます。HPによると「タムパ(タイムパフォーマンス)重視で残業は一切しない。帰宅して自宅でチルってるZ世代の申し子」。なによりプライベートを重視し、食事に誘われたり仕事を振られても「タムパが悪い」と断る。仕事中ヘッドホンを付け、隙あらばサボろうとする(そもそも定時で帰る人をヤバイやつみたいに描くのがどうかと思います)。

いや、そんな若者どこにおんねん! って話で。もちろんごくごくまれにいるでしょうが、こういう「Z世代はタムパ(タイパ)命でやる気がない」みたいなテンプレートな描き方、本当に現実と乖離しています(Z世代への誤った見方と本当の現状については、古屋星斗さんへのインタビュー記事をぜひ読んでいただきたいです)。トカゲの先輩、月下咲良(福原遥)が「トカゲくんはなんであんなにひねくれ曲がってるんですか。いくらZ世代だからって」と言うシーンもあって、いや酷い言いよう!

ちなみに6話ではトカゲのタムパ至上主義が結果的に役に立つ展開もあり、Z世代を一方的に悪く描きたいわけではないようですが。こういった、「若者は宇宙人」みたいな先入観を強めるような描き方って、問題があると思うんですよね。もちろんそれは、上の世代を一括りに「頭が固い」みたいに描くことも同様です。

 


誠と大地の関係性は「一つの見本」になる

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ちなみに「おっパン」で印象的なのは、誠と大地の関係性。ふたりは世代を超えて友達になるのですが、令和の価値観についていけない誠に、大地は呆れたり馬鹿にしたりせず、丁寧に向き合うし対話をするんです。誠は誠で、内省的であろうとするし、柔軟になろうと努力する。ある意味、ふたりの関係性は、生きてきた時代背景が違う人のコミュニケーションとして一つの見本になるようなものです。

筆者も、上の世代の方と働いていると、お互いに理解できないと思うことはたくさんありました。例えば、たまたまイライラしていた社員から、電話で一方的に怒鳴られたことをバブル世代の先輩に相談すると、「そんなことよくある」と言われたり、セクハラについて相談しても、「私の時はお尻を触られるくらいよくあった」と一蹴されたり。

とにかく「あなたは気にしすぎ」みたいに言われました。その先輩の態度が理解できなかったのですが、先輩が若かった頃の時代背景、パワハラ・セクハラが日常茶飯事で、ある意味心を麻痺させないと生きていけない環境だったことを知るうち、先輩もそうやって適応せざるを得なかったと気づいたんです。お互いが会社を辞めた後に話した際、「私の時代はこうだったとか、それくらい気にするなんておかしいって言うのは違うよね。ごめんなさい」と言われて、わだかまりが溶けました。