社会派エンタメの最高峰


まず①社会問題を踏み込んで描く、生きづらさを描く作品について

 


社会問題をドストレートに描いた良質なエンタメといえば、2022年放送の『エルピス-希望、あるいは災いー』(フジテレビ系・カンテレ制作)がやはりその代表格です。「冤罪」、しかも殺人事件の犯人に仕立てられた死刑囚という、極めて重いテーマを扱った本作は、構想から実に6年を要した骨太ドラマです。腐敗した政治家や国家権力に忖度するマスコミを生々しく描いており、このドラマの企画をいろんなところに持ち込んでも、「リスクが高い」と断られたのだと言います。

 

結果として、ドラマは大きな反響を呼び、「東京ドラマアウォード2023」での連続ドラマ部門・優秀賞、「第60回(2022年度)ギャラクシー賞」のテレビ部門・大賞など数々の栄冠を手にしました。コメディでもなく、まっすぐに社会問題を描いた作品で、非常に重いテーマを扱いながら、引き込まれる構成や上質なクオリティで、エンタメ性の高い作品でした。


性的同意を真正面から描いたSHUT UP


2023年12月から2024年1月に放送された『SHUT UP』(テレビ東京系)は「性的同意」について真正面から描いた作品。望まない妊娠をした友人のために、性暴力の加害者に復讐するというサスペンスストーリーで、怒涛の展開に毎回目が離せませんでした。性暴力の被害者のケアや、性的合意について考える団体のスタッフや、ミーティングに参加する被害者の声を織り交ぜることで、性的同意について、非常に踏み込んで描いており、メッセージ性が光る作品でした。


家父長制への抵抗


2023年に放送された『こっち向いてよ向井くん』(日本テレビ系、ねむようこによる同名漫画が原作)は、コメディタッチで笑える要素が満載でありながら、フェミニズム要素がしっかりあり、女性の生きづらさにスポットが当たる作品でした。主人公・向井くんの妹が、結婚を機に家父長的な文脈で「男らしく」あろうとする夫にモヤモヤし、結果的に事実婚に移行することを選択します。