――とても伸び伸び描かれているように感じます。

山本さん:銅版画はたくさんの工程があるので、ねらったように仕上げるには、いろいろ試さないと描けません。この絵はパパっと描いているように見えますけれど、実は試行錯誤して描いています。とっても自由に描いているようですが、銅版画の線はきりっとしているんですよ。

――そうですね、銅版画というとシャープな線を思いうかべますものね。

山本さん:銅版画を刷った上から、手で彩色をしているんです。色もきれいですよね。お話ともとっても合っています。銅版画を自由に使いこなし、絵が動いていて言葉のリズムを感じられる、よい絵ですよね。

山本容子が語る、銅版画の魅力とは?「なんにでもぺこぺこするやさしい王さま」のお話 『ぺこぺこ』(作・絵:佐野洋子)が待望の復刊!_img0
『新装版 ぺこぺこ』(作・絵:佐野洋子)の裏表紙。転がっている赤い缶の秘密は……? ©︎JIROCHO, Inc.


16世紀に始まった芸術としての銅版画


銅版画は16世紀にドイツで始まったといわれ、17世紀に最盛期を迎えています。なかでも16世紀初頭にドイツで活躍したデューラーは、たいへん精密な絵を描いて、銅版画を芸術として人々に認めさせました。さらにオランダの「光と影の魔術師」と呼ばれたレンブラントは、銅版画でもたくさんの作品を残しています。
 

 


――銅版画はどのようにつくるのですか。

山本さん:とってもたくさんの工程があるんですよ。かんたんに説明すると、銅板に描いた絵の部分を硝酸液につけて腐食させ、へこんだ部分にインクを入れて、プレスして紙に転写します。銅板には厚みがあるので、プレスしたときに、銅板のあとが紙に残るんです。これは「プレートマーク」といって、銅版画の印です。