65歳を過ぎても高い給料をもらえる高齢者には朗報ですが、一方で、この制度が廃止された場合、年金財政の面ではいろいろと課題が出てきます。減らされた年金の合計額は年間4500億円に達しており、制度を廃止した場合、あらたに4500億円の財源が必要となります。政府は現在、40年となっている基礎年金の納付期間を45年に延長することで対処したい考えです。

65歳まで働くつもりのある人にとっては、それほど大きな変化ではありませんが、60歳以降は働かない人や自営業者からは反発の声が出てきそうです。

以上を整理すると、結局のところ問題の根底となっているのは年金財政の悪化であることがわかります。

 

年金財政が苦しいので、高所得を得ている高齢者の年金を減らすことで財源を捻出していたものの、その仕組みも限界に達しつつあります。その結果、全員に65歳まで納付してもらうという形で、保険料収入を増やす仕組みが検討されているわけです。

日本の公的年金は賦課方式といって、現役世代から徴収する保険料で高齢者の生活をカバーする仕組みですから、現役世代の比率が低下すると、どうしても現役世代の負担が増えてしまいます。高齢者の給付を抑制する施策としては、すでにマクロ経済スライドが導入されており、毎年、高齢者の年金は減額されています。

年金をもらいながら働くと年金が減額される「在職老齢年金」とは?制度見直しで再燃する深刻な財政問題_img0
イラスト:Shutterstock

今回、検討されている施策は、納付期間を延長するという形で、間接的に現役世代の負担を増やすものであり、その流れの一環で在職老齢年金の扱いも議論されています。

この仕組みがいつ導入されるのかは確定していませんが、減額対象となる人はそれなりの高所得者であり、多くの国民には当てはまりません。平均的な収入を得ている人は、やはり65歳以降も就労を続け、年金をもらいながら働くことを前提にした方が、老後の生活は安定しやすいでしょう。

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