北澤 そうなんです。そのディレクターさんや、『ひげが ながすぎる ねこ』の編集Kさんもそうですが、おっしゃっていただいたことに従うとすごい良くなるのです。なので、自分を信頼してくださっている方の言うことは絶対聞こうと思っています。

中田 自分を信頼してくれている相手の言うことは聞く、大事ですね。この年齢になって、あらためて思います。

【大人も読みたい絵本】猫の“ツンデレ感”がたまらない『ひげが ながすぎる ねこ』。人気イラストレーター北澤平祐さんが「不思議な絵本」と語る制作秘話とは?_img0

『ひげが ながすぎる ねこ』(北澤平祐)より

北澤 一方で先日、新しいクライアントさんと打ち合わせをした時に、「どういう絵にしますか」とおたずねしたら、「私の仕事は北澤さんを選んだ時点でもう終わっているので、あとはもう全部お任せします」って言ってくださったことがあって。それもすごくうれしいしありがたいし、めちゃくちゃ頑張らなきゃって思いましたね。

 


三位一体でつくる絵本。そしてお菓子のパッケージ


中田 この絵本、緑にピンクっていうのがおしゃれな色使いで、なんだか新鮮で目を引くなぁと思いました。

北澤 ありがとうございます。実はこちらが、この表紙の原画なんですが……

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貴重な絵本の原画! カバーに使われた「みゃあ」の絵はどれ?

北澤 実は、原画には背景色はいれていなかったのです。これをスキャンして担当編集さんとデザイナーさんにお送りした時、あまり深く考えずにダミーの背景色として緑を入れていたらデザイナーさんが緑で確定だと思ってくださったようで、そのまま。

中田 そうだったんですか!

北澤 タイトルの色もははじめ、黒とピンクの2案いただいたのです。私は『ゆらゆら』のようにクラシカルな黒いタイトルがいいかなと思ってたんですが、デザイナーさんも編集のKさんも、今回はこのピンクのポップな感じがいいんじゃないかって。さらに編集部の若い子もみんなピンク推しのようです! と言われたので、じゃあピンクで……となりました。オビ代わりのかわいいふきだしシールも、デザイナーさんと担当編集Kさんのアイデア。そういう意味でもこの絵本は、デザイナーさん、編集者さんと3人で作ったという思いが強いです。

中田 3人のバランスが正三角形みたいに取れてるから、こういう素敵な絵本が生まれるんですね。

北澤 はい。そのお二人と仕事するきっかけになったのは、この『若草物語』なんです。もともとは、Kさんがこの本を企画したとき、デザイナーさんが私を推薦してくださったのが始まりなのです。Kさんが最初の打ち合わせで「キャラメルゴーストハウス」が大好きなので絵本を作りたいとおっしゃってくださったんですが、あいにく別の出版社で出すことが決まっていて。では別の絵本を作りましょうということになり、生まれたのが前作の『ゆらゆら』なのです。すべては『若草物語』から始まり、つながっている感じかな。

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『若草物語』からはじまった名作シリーズ。担当編集の熱い思いを受け止めて魂をこめてイラストを描いたそうです。

中田 素敵ですよねこのカバー。クラシックなお話と北澤さんの絵がすごい似合ってましたよね。私、全部これを缶にしたいです。開けたら可愛いゴーフレットとか入っていそう!

北澤 いいですね〜。実はこの本、見返しや表紙などの紙が違ったりと、デザイナーさんのこだわりが詰まっているのです。というのも、Kさんの名作に対する愛情がものすごいので、デザイナーさんも私も、その思いに応えなきゃって。熱意と愛情に動かされたんですよね。

中田 わかります。以前、取材にきてくださった新聞記者さんに、「変態の情熱は人を巻き込む」って言われたことがあるんですが(笑)、確かにそうだなと思います。

北澤 日本の推し文化とかもそうですけれども、何かを心から愛して止まない人の情熱っていうのは、優れていて本当にすごいですよね。



>>>5月28日公開の後編では、“可愛らしさの裏に「闇」がある?”北澤平祐さんのイラストの世界を深掘りしていきます。お楽しみに!
 

【東京にて、北澤平祐さんの原画展が開催されます!】
6月27日〜7月15日 ニジノ絵本屋(東京都目黒区平町)にて、北澤平祐さんの原画展が開催されます。最寄り駅は東急東横線の都立大学駅、ぜひ足をお運びください。


撮影/山下由香利
構成・文/立原由華里

 

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