今年3月、桜ピンクの大振袖と紺色の袴姿で大学の卒業式に臨まれた愛子さま。春風のような笑顔は、日本国中をあたたかな明るさで包み込みました。この装いから垣間見えたのは、一生に一度しかない尊い学生時代を大事にされる愛子さまのお気持ちでした。
袴姿から見える愛子さまのお気持ちとは? 美しさのヒミツはどこに? その謎を、皇室ファッションに詳しいファッション評論家の石原裕子さんに、ファッションの視点から紐解いていただきました。
合わせて、雅子さまがアメリカの大学をご卒業された時の懐かしい装いを振り返ってみましょう!
透き通るような肌に映える、桜ピンクの大振袖と紺袴
愛子さまは2020年に、学習院大学文学部日本語日本文学科にご入学されました。当時は新型コロナウイルスが世界的に大流行していたため、2年生になった4月に、一年遅れの入学式が行われました。やがて新型コロナウイルスの流行が落ち着き、4年生になると大学のキャンパス内で対面授業を受けられるように。そうして、この3月にご卒業されました。
――卒業式の装いは、いつまでも見ていたくなるようなお姿でしたね。
石原裕子さん(以下、石原さん):女子大学生の卒業ファッションは、4月から社会人としてスタートするにあたり選んだスーツか、成人式用も兼ねて作ったお振袖か、あるいは一生に一度しか着られない古式ゆかしい袴姿があります。
通常の学生にとって袴を着るチャンスは卒業式しかありませんが、皇族である愛子さまは、これからも袴や十二単をお召しになるチャンスは何度もおありだと思います。実際に、美智子さまも佳子さまも眞子さんもミッションスクールをご卒業ですし、雅子さまはハーバード大学でいらっしゃるので、卒業式はアカデミックガウンと房付きの角帽でした。そして黒田清子さんは、植田いつ子さんのスーツでした。
そのような歴史を念頭に置きつつも、今回愛子さまは卒業式にどんなお召し物で臨まれるのか、もしかしたら愛子さまの袴姿を拝見できるではと興味津々でした。そこに、桜色のお振袖に凛々しい袴姿でお出ましになった愛子さま……。輝くばかりの笑顔は期待どおりで、納得がいきました。
愛子さまはお言葉のはしばしに、友情を大切にしていらっしゃることが感じられます。お友だちとの関係がとても良好ですよね。卒業式の袴姿は一生に一度のチャンス。尊い学生時代を締めくくるときに、お友だちと同じような袴姿を楽しみたいと思われたのでしょう。
――とても優雅な振袖でしたね。
石原さん:成人式などで着用される振袖の多くは袖の長さが100cmほどの「中振袖」です。一方、大振袖はくるぶし付近まで袖丈があるもので、最も格調が高く、別名「本振袖」とも呼ばれています。これまでは結婚式で花嫁が着用することがほとんどですが、最近では成人式などで着用されることも増えてきていますね。
愛子さまはご卒業にあたり、宮内記者会の質問に文書でこう答えられています。「……学年の枠を超え、友人たちと一緒に授業を受けたり、直(じか)に話をして笑い合ったり、学内の様々な場所を訪れたりしたことは、私にとって忘れることのできない一生の思い出となりました」
――色白のお肌に、桜ピンクの振袖がとっても美しく映えていました。
石原さん:透明感のある色白の肌は、おばあさまである美智子さまゆずりですね。白い肌にはピンク色がよく似合います。桜ピンクの振袖と桜ピンクの口紅を薄くつけて、髪飾りは桜の花で日本伝統の「つまみ細工」でしょうか。他のどのお嬢さんよりも古典的でかわいらしい。愛子さまの勝負カラーはピンク色ですね。
――ほんとうに見とれてしまう美しさでした。初々しくて、まるで親戚のお嬢さまの成長を見守っているような気持ちになりました。
石原さん:短めにきりりと着付けた古典的な紺色の袴に、袴の裾より長いくらいの桜ピンクの大振袖が明るくて華やかでしたね。振袖はまるでパッチワークのような短冊柄。雅子さまのようなアカデミックガウンもすてきですが、振袖と袴姿は庶民的で、好感が持てますよね。
――そうですね、親しみを感じました。笑顔もとてもすてきでした。
石原さん:取材陣の前に歩いてくるとき、広い歩幅でさっさっと歩いてこられましたよね。もしスーツ姿だったなら、ヒールの音がカッカッと聞こえそう。愛子さまは、きっとこれからはお仕事の場でも活発に歩かれてご活躍されることでしょう。お母さまの雅子さまがそうであったように……。お元気な歩き方は、雅子さまの影響もありそうですね。
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