「階下をのぞくと、まさかの……」夜中に目にした戦慄の光景
 

「義父はますます口数が減り、ぼんやりする時間が増えたなと思っていました。無理もありません、外出はほとんどしませんし、義母は義父にはほとんど話しかけません。でも単にふさぎ込んでいるのとは違い、食事や会話の内容を記憶していないことがあります。病院に相談して検査をすると、やはり認知症が始まっていたんです」

義母はますます義父を冷遇し、茉優さんがヘルパーの頻度を増やすなどしてできるだけ目が届くように頑張っていました。しかし、幼い3人の育児があるため、義母に任せざるを得ない時間帯もあります。

ある冬の寒い日のことでした。トイレに起きたとき、戸締りが気になり、階段下の玄関に確認のため降りた茉優さん。すると、電気が消えた1階の居間の椅子に、上半身裸で座っている義父の姿がありました。

「お義父さん、どうしたの!? と思わず悲鳴を上げて、リビングに入りました。普段は義母の手前、突然階下の部屋に入らないように気をつけているんですが、その日は雪で、古い一軒家はまるで冷蔵庫。暗いリビングは暖房さえも切れていて、ぞっとするほど冷えていました。そこになぜか裸で、体を丸めて座っている義父。何をきいても答えません。

そこに義母が寝室から出てきて、ちょうど体を拭いてあげていたのよ、っていうんです。でも真夜中ですし、冷え切っているし、長時間放置されていたのは明らか。義父は介助がないとベッドに行けないし、ひどすぎる状況です。気管支が弱いので、風邪をひいたら大事になる可能性があります」

茉優さんが正さんに服を着せて、暖房をつけ、温かいお茶を飲ませてからベッドに移すと、義父は無言で涙を流したそうです。

それからほどなくしてリハビリ施設で脳梗塞が再発し、帰らぬ人となりました。

「お父さんのご飯は1日2回で充分」笑顔を浮かべる義母の正体が明らかになった雪の降る夜_img0
 

義父が生前、まだ認知症が進む前に弁護士と作成した遺言状には、もちろん配偶者である義母にも相応の財産が分与されていましたが、二世帯住宅は息子の英輔さんが相続することが書かれていました。すると義母の芳江さんは半狂乱になったと言います。おそらく義父が亡くなってから自分が名実ともに家の女当主になるような気持ちだったのでしょう。間接的に、茉優さんが恩恵を受けることに怒りをぶちまけたそう。

「そのときはっきりと、義母が私を敵対視していることがわかりました。義父の介護要員として便利に使っていたし、そのことがあって私に過剰な不満をぶつけることはありませんでした。でも本心では、義父が自分よりも私を頼っていたことにむかついていたんだと思います。義父もいなくなり、遺言状も自分の思い通りにはいかず、もうタガが外れた様子でした。そこから嫌がらせが始まって……。

 

私のコートに『悪霊退散』的なお札を貼って塩だらけにしたり、近所の人があなたの悪口を言っているといってきたり。むしろつんけんしてゴミ当番や町内会のことを一切しない義母がよほど嫌われていたんですけれども……。深夜12時に無言電話がかかってくることもありましたが、着信履歴が義母のスマホだったり、げんなりするような、でもボディブローのように憂鬱になる嫌がらせが続きました」

しかし、茉優さんが本当に悩んだのは、義母の仕打ちではありませんでした。