このように、今回の定額減税は内容が分かりにくく、お金を手にした実感が湧きにくいということで、政府内部でも効果について疑問視する声が上がっていました。確かにその通りなのですが、1人当たり4万円が手に入るのは確実ですから、これをきっかけに給与明細をチェックしてみるのも良いでしょう。
ちなみに岸田政権は、今回の減税について衆院解散と結びつけようとしていたともいわれています。
4月に賃上げが行われ、6月に定額減税が実施されることで、理論上、家計には多少のゆとりが生じることになります。このタイミングで解散に持ち込むというシナリオだったとされていますが、その目論見は崩れつつあります。
今、説明したように定額減税の仕組みは複雑で、国民はそのメリットを実感しにくいというのが現実ですから、家計にゆとりができたと感じる人は少ないでしょう。しかも自民党は衆院の補選で全敗するなど、国民からの支持が低下しています。
しかも6月からは電気代やガス代の補助がなくなり、家計がさらに苦しくなるのはほぼ確実です。6月に解散ができない場合、9月の総裁選はより混沌とした状況になってくるでしょう。
ちなみに自民党内部では、定額減税はある種の鬼門と言われています。その理由は、かつて定額減税の導入で失敗した経緯があるからです。
1998年のことですが、橋本龍太郎政権が今回と同じような定額減税を実施しています。ところが橋本首相(当時)は、恒久減税か1回限りの減税なのかの説明で内容が二転三転。国民から批判を浴びて参院選で敗北し、退陣に追い込まれてしまいます。橋本氏の後を継いだ小渕恵三首相は、定額減税を定率減税に変更したうえで恒久化し、小泉政権が廃止するまでの10年間、定率減税が継続となりました。
来年10月には衆院の任期が満了となりますから、それまでには確実に選挙があるわけですが、あまりにも支持率が低いことから、場合によっては定額減税の延長という話が出てくるかもしれません。
選挙対策で税制をコロコロと変更されてしまっては、国民としてはたまったものではありませんが、とりあえずもらえるものはもらった方がよいのは間違いないでしょう。自分がどのぐらい手取り収入が増えるのかチェックして、賢く支出したいものです。
前回記事「「いちご白書」をもう一度? 全米に広がるガザ攻撃への反対デモと、1968年当時の“皮肉な共通点”とは」はこちら>>
- 1
- 2
Comment