31年前の1993年6月9日、天皇陛下と雅子さまはご成婚されました。前夜からの豪雨が奇跡のようにあがり、やさしい日差しのなかを華やかなパレードが行われたのです。白いバラの花びらのようなドレスに身を包んだ雅子さまの美しさに、国民は魅了されました。数日後の6月15日からは、3日間の昼夜にわたり、一般の披露宴にあたる「饗宴の儀」が行われました。午餐会と晩餐会は、全部で6回にもおよび、雅子さまはすべて違う装いでお出ましになったのです。雅子さまのご成婚にともなう、その華やかなお着物やドレスの物語を振り返りましょう。
「納采の儀」は美智子さまから贈られた帯を締めて
ご成婚の日から少し遡った4月12日、小和田家の16畳の応接間で「納采の儀」が行われました。納采とは、一般の「結納」にあたるものです。雅子さまと父・小和田恆さん、母・優美子さんが控えるなか、皇太子浩宮さま(今の天皇陛下)の使者が、納采の品々を雅子さまにお渡しします。
雅子さまは、瑞雲扇面模様(ずいうんせんめんもよう)の黄金色に輝く大振袖をお召しでした。瑞雲は幸せの予兆として現れるといわれる文様です。
朱色地に七宝華紋の丸帯を締め、真紅の組み紐の帯締めに二列のパールにダイヤモンドをあしらった帯留が華やかです。
実はこちらの七宝華紋の丸帯は、美智子さまが皇室に入られる際に、昭和天皇の皇后の良子さまから贈られ、ご婚約発表の際にご着用になったゆかりの品でした。
その帯が、美智子さまから雅子さまに譲られ、納采の日の晴れ姿を飾ったのです。
格調高い丸帯は、良子さまが宮家の姫としてご着用になられていたご伝来の逸品でした。
納采の品々のなかには、絹地の巻物5巻が含まれていました。ご結婚に関連する行事で着るドレスをつくるための絹地です。絹地には、それぞれ「明暉瑞鳥錦(めいきずいちょうにしき)」「四方(よも)の海」「呉竹」「やまなみ」「楽興(がっきょう)の時」という名前がつけられていました。
「明暉瑞鳥錦(めいきずいちょうにしき)」は、ご結婚の際のローブ・デコルテとウエディング・ジャケットに仕立てられました。白地に鳳凰が織り出された意匠で、金糸に金箔を入れた鮮やかな文様です。
「四方の海」は、平和祈念を続ける天皇家の願いをイメージしたもので、伊勢の神宮に結婚の報告に訪れた際の参拝服になりました。
若々しさをイメージした「呉竹」や「やまなみ」「楽興の時」は、「饗宴の儀」などのお召しものになったのです。
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