——改正ポイントをまとめた厚生労働省の資料を拝見しましたが、改めて、今回の改正において重要な点を教えてください。

今回の法改正では、「個別の意向確認」が、非常に重要なキーワードになります。「障がい児」や「医療的ケア児」への具体的な配慮の仕方の事例については、今後、指針で企業に示されていくことになります。

障がいや疾患の種類や程度は、お子さんによってさまざまです。生まれてすぐ長期入院が必要なお子さんもいますし、思春期になってからケアが大変になるお子さんもいます。退行性の遺伝子疾患もあります。人によって、状況やニーズが全く異なるのです。

だからこそ、それぞれの困りごとに合わせて勤め先に対応してもらえれば、安心して働くことができます。

心ある方たちから「障がいのある子は中学生まで制度を利用できるとか、もっとかっちりとした文言でなくていいの?」と心配されましたが、「いえいえ、それぞれのニーズに合わせて、柔軟かつ具体的な働き方の対応を勤め先と交渉できるから、“個別”のほうがとても助かるんです」と申しあげてきました。とてもありがたい改正内容でした。

 

——法律は令和7年から段階的に施行とのことですが、すでに動き始めている企業もあるそうですね。

この春から、施行を前に制度を導入し、社会を牽引していこうとする企業も出てきているんです。とても心強いことです。法律は必要な人に周知され、社会に浸透し、活用されてこそ、血の通ったものになりますから。

5月に改正育児・介護休業法が成立した際の各メディアの報道は、「3歳までのテレワーク」や、「父親の育休」といった改正項目に関するものが中心で、障がい児や医療的ケア児を育てる働き手への救済策について報じたメディアは多くありませんでした。

ですが、今回の法改正は、育児・介護休業法ができてから30余年にして、ようやくドアが開き、私たちのような障がい児、医療的ケア児を育てている働き手にも光が差し込んでくる、画期的な改正であることをぜひ多くの方々に知っていただきたいのです。

その光を頼りに、私たちはそれぞれの職場で、粘り強く、事情を説明し、共感を広げ、仕事を続けるために、それぞれが必要な配慮を引き出していかなくてはなりません。

「これで仕事を続けられる…」障がい児・医療的ケア児を育てる親たちを救う「改正育児・介護休業法」、その重要な改正ポイントとは?【障がい児を育てながら働く⑬】_img0
2022年12月、超党派議員らによる勉強会「永田町子ども未来会議」のヒアリングにて。私たちの苦労話を聞いてくださった医療的ケア児の親でもある衆議院議員・野田聖子さんは、のちに親の会の顧問になってくださいました。(認定NPO法人フローレンスのYouTubeチャンネルから)