——障がい児、医療的ケア児を育てながら働いていらっしゃる方々は、ぜひこの記事を参考にし、企業との交渉の際に活用していただきたいです。

「個別の意向確認」では、一律に基準を設けない代わりに、働き手と使用者の双方が、より丁寧な話し合いを重ねることが求められます。私たちは今回の改正法が、それぞれの企業に実効性のある制度として浸透していくか、注視しています。

ありがたいことに、今後の課題を解決するための宿題ともいえる附帯決議(※)もつきました。

障がいや疾患があっても、私たちは子の成長を願って育児をしていますが、介護の両立支援制度も使えると助かります。介護の両立支援制度の現在の要介護状態の判断基準は、主に高齢者介護を念頭に作成されているため、子に障害がある場合等では解釈が難しいケースがあります。

このため、要介護状態の判断基準について、早急に見直しの検討を開始し、見直す、ということが附帯決議に書き込まれたのです。

※附帯決議とは?附帯決議とは、政府が法律を執行するに当たっての留意事項を示したものですが、実際には条文を修正するには至らなかったものの、これを附帯決議に盛り込むことにより、その後の運用に国会として注文を付けるといった態様のものもみられます。(出典:参議院ホームページ)

——現状の介護の両立支援制度では、障がい児や医療的ケア児は、要介護状態の判断基準から漏れてしまうことがあるのですね。

障がい児や医療的ケア児は、大人になったからといって自立できるとは限りません。学校を卒業した後のほうが、障がいが重い子ほど居場所が狭まり、親亡き後の住まいの問題も深刻です。労働法だけではなく、福祉の制度も含めた包括的な家族の支援が欠かせません。附帯決議は、そのことにも触れてくださいました。

 


—— 法改正の審議中には、工藤さんご自身が参議院に参考人招致されたそうですね。

はい。5月21日、参議院厚生労働委員会に親の会会長として参考人招致していただき、私たちのような働き手について、議員の方々にお話しする貴重な機会をいただきました。議員のみなさんが熱心に聞いてくださり、とくに卒業後の障がい児や医療的ケア児の居場所や親亡き後の問題について質問してくださいました。

改正法は、令和7年4月1日から、段階的に施行されます。

多くの方が親身になって、心血を注いで作ってくださった改正法を、私たちは十分に活用しながら、次に続く人たちのために、スピード感を持って、当事者がより仕事と育児を両立できる制度に育てていかなくてはいけません。

そうすることで、子どもの貧困やきょうだい児のヤングケアラーの問題、私たちのような親の老後の低年金や企業の人材流出の問題などの改善に貢献することができ、いざというときにだれもが安心して暮らせる社会につながっていくと考えています。
 

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「障がい児及び医療的ケア児を育てる親の会」は、連続セミナーの最終回「多様性を認め合う風通しのよい社会を目指して」を2023年3月9日に開催しました。お話を伺ったのは、衆議院議員であり、障がい児及び医療的ケア児を育てる親の会顧問の野田聖子さん、障がい児や疾患児の両立支援制度の拡充を4月から実施するJR東日本会長の冨田哲郎さん、障がい児を育てる家族への支援を今年の春闘方針に盛り込んだ電機連合中央執行委員長の神保政史さん。政労使の分野の最前線に立っていらっしゃる当事者や支援者ならではの深い視点に基づくお話をぜひご視聴ください。

第3回 障がい児・医療的ケア児の親と就労「多様性を認め合う風通しのよい社会をめざして」


★「障がい児及び医療的ケア児を育てる親の会」は、朝日新聞厚生文化事業団の共催で連続セミナーを開催しています。過去のセミナーはこちらからご視聴いただけます。

第1回 障がい児・医療的ケア児の親と就労「障がい児を育てながら働く 綱渡りの毎日」

第2回 障がい児・医療的ケア児の親と就労「取り残される障がい児・医療的ケア児の親たち」

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構成・文/工藤さほ
編集/立原由華里

 


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