人口減少によって切実な20XX年問題
「20XX年問題」は過去に何度も取りざたされてきましたが、実際には問題にならなかったケースがほとんどです。たとえば2007年問題。これは団塊の世代の大量退職に伴う労働力不足などを危惧したものでしたが、実際は定年の延長などで雇用形態が変わったり、景気回復によって新卒採用が増えるなどして結果的にそれほど問題にはなりませんでした。介護における20XX年問題も杞憂に終われば喜ばしいですが、現時点では半年後に迫る2025年問題を皮切りに、介護は崩壊の一途を辿ると言われています。
2025年問題とは、1947~1949年に生まれた団塊の世代が75歳になることで起こるさまざまな問題のこと。75歳以上の後期高齢者が増えると当然介護費用は膨れ上がり、約32万人の介護人材が不足すると言われています。
中でも在宅介護において肝となるホームヘルパー(訪問介護員)の人手不足は死活問題。ホームヘルパーは身体介護や食事作りなどの生活援助を担い、在宅生活を支えてくれる方々ですが、介護労働安定センターが行った「介護労働実態調査」によると、人材の不足感を感じている介護職はホームヘルパーが83.5%で最も多く、次いで介護職員の69.3%となっています。
国は住み慣れた地域で最期まで暮らす在宅介護を推し進めていますが、実はその在宅介護が存続の危機を迎えているのです。
団塊ジュニアは41万人が老後貧困に?
2030年になると少子高齢化がさらに進み、この時点でなんと日本の人口の約3分の1が65歳以上に。年金や社会保障制度への影響も加速し、介護業界を筆頭に労働人口不足になる業界は多岐にわたります。
相談者の由佳さんが心配していた2040年問題は、少子化による人口減少と、団塊の世代の子ども(1971~1974年生まれの団塊ジュニア)が高齢化するタイミングが合うのが2040年であることからそう名付けられています。団塊ジュニアは、バブル崩壊後で非正規雇用も多かった時代。生活困窮者も他の世代よりやや多く、高齢化した団塊ジュニア世代のうち実に41万人が老後貧困に陥ってしまうと言われています。
この団塊ジュニアの高齢化以降、日本の高齢者人口は減少していきますが、高齢者を支える現役世代が減る一方なので、問題はこれ以降も山積しています。
介護の備え、自分でできる3つのこと
介護保険制度も自己負担額が上がり、施設入居の費用も値上がりし、貯蓄もほどほど、年金も期待できないとなると、自宅でいかに生活し続けられるかがポイントになります。そこで筆者から、「自宅で快適に生活し続けるために意識したい3つのこと」をご提案します。
①住まいの環境づくり
たとえ介護になったとしても、自宅を車いすや杖でも動きやすいバリアフリーにすると、ストレスを感じづらくなります。移動の動線を意識して、トイレや洗面所、浴室、キッチンに車いすでも移動しやすいレイアウトにするのがオススメ。風通しや日差しの良さも確保したいので、家具などで窓をふさがないようにしたいところです。また、身内が泊まったり人を呼べるような部屋が1つあると便利です。
介護の負担軽減や転倒予防のために自宅をリフォームする時は、介護保険制度の住宅改修を活用してみてください。これを使えば工事費用(20万円まで)の7~9割が支給され、上限の20万円は数回に分けて申請することも可能です。自治体によっては独自に住宅改修費制度を設けているところもあるので、役所に問い合わせをするか、ホームページでチェックしてみてください。
制度を使わなくても300万円あれば主要部分のリフォームはできますし、家具の配置換えを工夫するだけでも環境は変わります。たとえばリビングの中心にベッドを置くとどこにでも動きやすくなるので、「ベッドは端に」という固定観念を捨てるのも良いかもしれません。
②人間関係づくり
介護が必要になっても自宅で暮らし続けるためには、訪問介護、訪問看護、訪問診療は欠かせません。たとえ介護が目的であったとしても、毎日誰かが入れ替わり訪問してくれると、自分にも用事があるという張り合いにつながります。また、友人や地域の知り合いとの他愛のない会話も活力になるので、介護前から人間関係づくりは意識しておきたいところです。
③気持ちの持ち方
介護の専門家にとっては仕事ですが、排泄介助などは利用者側からすると申し訳ないと思いがち。時には遠慮して、助けてもらうことをためらってしまうことがあるかもしれません。ですが素直に助けてもらい、感謝の言葉を伝える方がうまくいきます。自分の気持ちや願い、考えを伝えられるように意識してみてください。
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