まるで映画のワンシーンのような華麗なパレード、豪華な宮殿での晩餐会……。6月22日から29日にかけて、天皇陛下と雅子さまは国賓として英国に公式訪問をされました。お二人は英国王室や国民からのあたたかい歓迎を受け、式典や晩餐会へのご出席をはじめ、さまざまな施設に足を運び友好親善を深められました。英国は、お二人にとって若いころにオックスフォード大学に留学した「第二の故郷」。懐かしい場所で、どのようなすてきな出会いやふれあいがあったのでしょう。そんなご様子を、皇室を長く担当し取材を重ねてきた毎日新聞客員編集委員でジャーナリストの大久保和夫さんに伺いました。
天皇陛下が青春を過ごしたマートン・コレッジをご訪問
――訪英の最終日6月28日に、天皇陛下と雅子さまは、かつて留学されたオックスフォード大学を訪問されました。オックスフォードの街は、両陛下を一目見ようとたくさんの人々が集まって大歓迎でしたね。
大久保さん:はい、今回のお二人の訪英は、皇室と王室の成熟した関係をきちっと再確認し、さらに未来につなげるようなとてもよい訪問だったと思います。その要因としてあげるとしたら、お二人がかつて英国に留学されていたこと、これが友好につなげるにあたって大きかったのです。
訪英の締めくくりとしてオックスフォード大学に行かれましたが、これはお二人の希望を入れて日本側がセットしたものでした。お二人ともご自分たちが青春時代を過ごしたことで、とても英国を大事に思っていらっしゃる。陛下にとっては、マートン・コレッジでご修学されていた2年間、最初で最後になる独り暮らしを体験された思い出の地です。
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――公のお立場にある天皇陛下が、生き生きしていらっしゃいましたね。心から素のご自分として楽しんでいらっしゃるご様子が伺えました。
大久保さん:今回のご訪問は、公の立場とプライベートの立場の想いがうまく組み合わされたスケジュールでしたね。
おそろいの赤いガウンで「名誉法学博士号」授与式へ
大久保さん:雅子さまも、ベーリオール・コレッジの修士課程に2年近く留学されていました。ほんとうは修士論文を完成させたかったけれど、政府留学生のために学業が終了する前に外務省から呼び戻されてしまい、修士論文が完成せず、学位は取れませんでした。雅子さまの心の中では、きっと留学は終わっていなかっただろうと思います。
それが今回、オックスフォード大学から「名誉法学博士号」という学位を授与されたのです。授与式は、オックスフォード大学総長主催の昼食会に臨まれたのちに行われました。
――陛下と雅子さまがそろって黒い帽子と赤いガウンをお召しで、とても晴れやかなご様子でしたね。
大久保さん:そうですね、とても感慨深いものがあったと思いますよ。その後、マートン・コレッジに移動して、桜の木の植樹をされてから、コレッジ内をご散策。留学時代の知人が出迎えてくれるなど、懐かしいひとときを過ごされたようです。
お二人にとって、私的な思い出もたくさんつくられた英国ご訪問でした。これからもますます英国を大事に思うお気持ちとともに、英国王室とのよい関係がずっと続いていくことでしょう。
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●大久保和夫(おおくぼ・かずお)
毎日新聞客員編集委員。長年、宮内庁担当記者を続け、皇室を通して日本と日本人について考えることを大きなテーマにしながら、ジャーナリストとして活動している。
●聞き手
高木香織(たかぎ・かおり)
出版社勤務を経て編集・文筆業。皇室や王室の本を多く手掛ける。書籍の編集・編集協力に『美智子さま マナーとお言葉の流儀』『美智子さまから眞子さま佳子さまへ プリンセスの育て方』(ともにこう書房)、『美智子さまに学ぶエレガンス』(学研プラス)、『美智子さま あの日あのとき』、『日めくり31日カレンダー 永遠に伝えたい美智子さまのお心』『ローマ法王の言葉』(すべて講談社)、『美智子さま いのちの旅―未来へー』(講談社ビーシー/講談社)など。著書に『後期高齢者医療がよくわかる』(共著/リヨン社)、『ママが守る! 家庭の新型インフルエンザ対策』(講談社)。
キャプションは過去の資料をあたり、敬称・名称・地名・施設名・大会名・催し物名など、その当時のものを使用しています。
バナー写真/JMPA
構成・文/高木香織
編集/立原由華里
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