「3倍の速さ」でこなせる仕事があった!

しかし、転機が訪れます。転職で、動画編集をする仕事に就いたのです。動画編集の仕事を始めると、他の人と比べて3倍の速さで作れることがわかりました。Photoshopでサムネイルを作る作業も好きで、自分は何かを作ることが好きだ、と気づきました。同時期にライターの仕事を始めたのですが、そこでも書き上げるスピードが速く、書くことが全く苦になりませんでした。

元々、大学でレポートを何千字書くことも苦ではありませんでした。貧乏でPCが買えず、学校のPCルームの空いている時間に課題を済ませる必要があり、絶対に家に持ち帰れない、という状況で鍛えられたのだと思います。また、大学では統計学を専攻していたのですが、統計を調べまくることが好きでした。ライターではデータを用いることが多く、自分の特性を活かせることが多かったのです。

次から次にいろんなことが頭に浮かぶ散漫さが他の仕事では災いしましたが、ライターではむしろ、どんどんいろんなことに思考を巡らせることは強みになりました。

 

全体のバランスより、強みに集中すればいい

接客、飲食、工場...何をやってもダメ。「歩く不器用」を自覚するポンコツな私が、今の仕事に出会うまで_img0
 

相変わらず不器用でケアレスミスが多いため、誤字脱字は多いのですが、編集者や校正者がいるため、私が間違えても修正してくれます。長所をいかし、短所はカバーしてもらえる。そんな仕事に出会えたことで、ずっと抱えていた「自分は社会不適合者だ」「どこに行っても使い物にならない」という烙印から、少し解放されたような気がします。

今となっては、ありえない不器用でも、どうしようもないポンコツでも、この世にひとつくらいは自分に合った仕事があるんじゃないか、と思っています。実際、作家や漫画家といったクリエイターって、会社員としてはダメダメだった、生活自体が苦手・破綻している、みたいな人って案外少なくないんです。一般社会では思うように適応できなかったけど、逆に社会に適応している人ができないことが自分にはできる、そんなこともあるのです。

自分の能力を五角形のレーダーチャートで表すと、めちゃくちゃ歪(いびつ)だと思います。すべての項目で平均点を出すなんて絶対に無理。でも、何かひとつでも飛び抜けていれば、それも悪くないのでは? と思うのです。

イラスト/Sumi
文/ヒオカ
構成/金澤英恵

 

 

接客、飲食、工場...何をやってもダメ。「歩く不器用」を自覚するポンコツな私が、今の仕事に出会うまで_img1
 

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