料理家でインテリアデザイナーの行正り香さんと、俳優のともさかりえさんは、17年来の親交がある良きお友達。そんなおふたりのスペシャルな対談が、行正さんの著書『人生を変えるリノベーション』の刊行を祝して実現! 4回にわたってお届けしてきた“お家”にまつわる連載、最終回は「人生を変えるリノベーション」のヒントを考えます。
40代以降が適齢期? リノベーションは選択と決断の連続
行正 前回、「家は育てるもの」だとお話ししたけど、家って子どもと同じだと思っています。愛情をもって、育ててあげる。掃除や整理整頓もそうだけど、壁が剥げたら塗り直したりと、メンテナンスもしながら、少しずつ手をかけて完成させていくものなんです。
ともさか その感覚、私もようやくわかってきました。家に手をかけること、暮らしを豊かにすることに自分の興味の重点が移ってきました。
行正 コロナ禍が、一つの契機だったんじゃないかな。家を育てる時間やその余裕をもつことに対して、ストンッと腑に落ちた人が多かったんだと思う。
ともさか あの“お家時間”はたしかに大きかった。私は基本的に家にいるのが大好きなんだけど、「もっといい空間にしたい」という気持ちは、家にいる時間が長くなったあのタイミングにより深まったから。
行正 「家は人生を豊かにするもの」という考えが、世の中的にも育まれたんじゃないかな。そうなると次は「リノベーション」が視野に入ってくるんだけど、住空間に手をかけるのって、決めることが本当にたくさんある。だから、決断力を発揮してガシガシ決めていかないと、物事は進まない。
ともさか そうだよね〜。あ〜。私、物ごとを決めるのが本当に苦手で(苦笑)。
行正 リノベーションは“決断の連続”の最たるもの。「このABCDではどれがいいですか?」「AとBならどっち?」「ここにPを加えると、どれが?」……と次々に選択していく感じ。胆力がないと疲れ切ってしまうのよね。
ともさか 自分で決めるタイプのリノベーションを選ぶと、それこそ果てしなく決めることがありそう……
行正 ドアの取っ手、天井や壁の照明器具……、すべての選択一つ一つに相当悩むからね。ただそのプロセスは、自分が求めるものを見つける作業なので、自分を知ることにもつながる。リノベーションって、セラピーみたいなところがあるんじゃないかな。
ともさか 洋服のディレクションをしていて、生地を選ぶときですら、小さなサンプルだと色の差がわからないことがある。家の壁や絨毯の色なんて、大きさで印象が全然変わりそう。そのあたりも難しいですね。
行正 だから、ある程度の人生経験があったほうがリノベーションはしやすくなります。実家から始まって、これまでいろいろな家に暮らしてきたり、見てきたりもしてきたわけで。一般的には40代以降かな。住まいの大切さを実感して、「好きな空間を育ててあげよう」という気持ちが高まるまでは、待つ。そう思ったときが、ベストタイミングじゃないでしょうか。
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