例えば、スコットランドで行われた大規模な研究では、元プロサッカー選手は一般の人と比べて認知症になるリスクが約3.7倍高いことが示されました(参考文献3)。特に、ヘディングの頻度が高いディフェンダーや、15年以上の長いキャリアを持つ選手でそのリスクが高まっていたという結果でした。また、別の小規模な研究では、元プロサッカー選手の認知機能がヘディングの回数と逆相関している、つまりヘディングを多く行う選手ほど認知機能が低下している可能性も示唆されています(参考文献4)。 こうしたことから、1回あたりの頭への衝撃が小さくても、何度も繰り返されることで問題になる可能性があると考えられているのです。

元プロサッカー選手は認知症になる率が一般人の約3.7倍!「頭の怪我」「頭への衝撃」がもたらすこと【山田悠史医師】_img0
写真:Shutterstock


ヘルメットなしで自転車やバイクに乗ることの危険性


あるいは、自転車やバイクにヘルメットを着用しないで乗っている場合、転倒や事故で頭に直接的な衝撃を受けるリスクが高まります。そして、そのような大きな頭の怪我は、たった一度でも認知症のリスクを高める可能性が指摘されています(参考文献5,6)。一度でもクリティカルなのであれば、未然に防ぐことが重要になりそうです。これが一番初めに登場した「ヘルメットを着用しているか」という質問に繋がってくるわけです。
 

 


とはいっても、脳に出血を起こしてしまうようなものでなく、いわゆる脳震盪(のうしんとう)であれば、一時的なもので、長い目で見れば問題はないと思われるかもしれません。確かに、一見するとすぐに回復するように見えます。しかし、脳には微細な損傷が残ってしまうことがあります。この微細な損傷が、長期的に認知症のリスクを高める可能性があるのです。実際、ある研究では、脳震盪のような軽い頭の怪我を経験しただけでも、アルツハイマー病のリスクが約18%高まることが報告されています(参考文献6)

それではなぜ、頭の怪我が認知症のリスクを高めるのでしょうか?
頭の怪我が認知症のリスクを高めるのには、以下の複数のメカニズムが重なっていると考えられています(参考文献7,8)