問題を防ぐには「過ぎないこと」

不調を防ぐには「無気力に対処すること」。『暮しの手帖』元編集長が、50歳を過ぎて実践している「あたらしいがんばり方」を紹介_img0
 

日常に起きるいろいろな問題の原因をつきつめると、「過ぎる」に行き着くのではないかと、最近の僕はほぼ確信しています。

食べ過ぎる。寝過ぎる。働き過ぎる。遊び過ぎる。買い過ぎる。運動をし過ぎる。お酒を飲み過ぎる。

日常の営みは無限に選ぶことができて、自分の好きなようにカスタマイズできるのは、大人ならではの楽しみ。適度なバランスならいいのですが、ときに過剰に求めて自制を失ったときが、トラブルのはじまりなのではないでしょうか。自由を手に入れた大人だからこそ、過剰に求めないように、足るを知る心がけが大切なのだと思います。
 

 


「過ぎないことを心がけよう」とかたく決めたのは、40代で訪れた不調がきっかけでした。編集長という役職をいただいて、しらずしらず力が入っていたのかもしれません。心の具合が悪くなって病院にかかった時期がありました。そのときに、ドクターから教えてもらったのは「期待のし過ぎはよくないですよ」というアドバイス。家族や仕事仲間などのまわりの人に対して、「もっとこうしてほしい」「こうするべきだ」と期待をし過ぎるのがいけないのだと。

期待をかけた分、期待どおりにいかないときに、「なんで思ったとおりにやってくれないんだろう」「どうしてわかってくれないんだ」といらだちがつのっていく。そのストレスによって、自分の心を痛めつけてしまうのだと知って、不調の原因をつくり出していたのは自分自身だったのかと気づいたのです。それから、「期待をし過ぎない」と決めて、まわりの人と接するようにしてみたところ、少しずつ状況がよくなっていきました。

以来、僕は毎日となえるように「過ぎないでいよう」と心がけています。過ぎないでいるためには、つねに自分を客観的に見守っていなければならないので、簡単ではありません。でも、「過ぎないでいよう」ととなえるだけでも、だいぶ違う気がします。