子育ても一段落。仕事も多少は融通がきくようになった。若い頃よりは少し余裕もある…… コロナ禍も落ち着いた今、改めて日本の旅に出かけませんか? ミモレ世代よりちょっぴり先輩の人気料理家、arikoさんが添乗員となって旅をナビゲートする旅エッセイ本が誕生しました。インスタグラム @ariko418のフォロワー数はいまや22万人を超え、センスあふれる料理写真と行きたくなるお店情報が並ぶポストから、「おいしい情報はこの人に聞けば間違いない!」と信頼度大のarikoさんが教えてくれる「おいしい大人旅」とは?
 

 


人生後半。自分の好きなものがわかってきた大人の旅は


興味のある場所、行ってみたい場所に旅をするのは、日々の暮らしをリセットできるいい時間。心の栄養にもなります。でも、そんなふうにしみじみ思うようになってきたのは、意外と最近のこと。

人生後半。コロナ禍を経て、旅の仕方が変わってきました。若い頃は仕事の出張も含めて、出かけるのは海外が中心。名所旧跡の探訪はそこそこに、興味はもっぱらファッション。おいしいものにももちろん目がありませんでしたが、日本では買えないモデルの靴、バッグなどを手に入れるのに夢中で、スーツケースが重量オーバーになってしまうことも。今では信じられませんが、そういう時代もありました。

結婚をして子どもを授かってからは、旅は家族が中心のものへと変わりました。夏は海辺やプールのあるところ、冬は雪山でスキー。わが家の場合、自然に囲まれた場所で一緒にスポーツをして過ごす旅が多く、常に子どもが中心。それでも子どもの成長とともに、家族の思い出が増えていくのはかけがえのないことでした。

そして今、ひとりっ子の息子が成人して、子育ても一段落。仕事も自分の裁量である程度は自由にできるようになりました。気の合う女友達と誘いあって、もしくは勝手知ったる場所ならひとりで、気軽に旅に出ています。かつてが嘘のように物に執着することもなくなり、気持ち的にも軽やかになりました。

いろいろな経験を積んできて、自分の好きなものが何なのか、どういうことに感動するのかもはっきりしてきました。居心地のいい場所で好きなことを楽しめる時間は、この年齢だからこそのぜいたくなんだなぁと実感しています。

ひとり旅も50代になって始めたことのひとつです。誰と予定を合わせることもなく出かける旅は冒険気分を味わえるうえ、「自分ひとりでもやればできる」という達成感というか、ちょっとした自信も得られるんですよね。

「旅の食事は失敗したくない!」 旅先でおいしいものに出会うコツ【人気料理家arikoさんのおいしい大人旅①】_img0
arikoさんが季節折々の料理を目当てに通う、湯河原にある温泉宿「石葉(せきよう)」。美食を堪能し、温泉でふにゃふにゃになって倒れるように寝落ちした翌朝には、ご褒美のような朝ごはんが待っている。ひとり旅でもおすすめの名旅館。 Photo by ariko

そもそもひとりで旅をすることになったきっかけは、ハワイに住む友人を訪ねて、その行き帰りや宿泊するときだけひとりという旅からでした。いわば限定付きのひとり旅だったわけですが、そこから少しずつ慣れていったのです。そうしているうちに、女性がひとりで旅をするということへの世の中の認知度も上がってきて、さらにおひとりさまにやさしい宿や飲食店も増えてきて、より気兼ねなくひとりで出掛けられるようになりました。

ところが、突然のコロナ禍。気軽に海外へ行くことができなくなりました。先行きの見えない状況が続いていましたが、「それでもどこかへ行きたい」という思いは旅好きの誰もが持っていたのではないでしょうか。私も同じで、旅の目的地を国内へとシフトしました。はからずもですが、コロナ禍を機に日本各地を改めて旅するようになり、日本の魅力を見直すことになりました。

 
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