先延ばしにはできないから、エンディングノートに夢を書きました

夫はエンディングノートを書くうちに、記憶に濃淡があることに気づいたといいます。「濃」のことをしっかり書き留めたそう(『71歳、74歳夫と97歳義母と大人だけで楽しく暮らす』より)

私は今71歳。人生の大先輩、97歳の義母と暮らし、自分の20年後を想像してみることがあります。

年の近い夫とは、どちらかひとり、生活の自立が難しくなったら、施設か病院に入ろうと話しています。本音をいえば最後まで家で過ごすのがいいのですが、そうなると離れて暮らす娘たちが世話をしに来るので、迷惑をかけたくありません。亡くなったあとの葬儀については、家族と身内だけの小さなものを希望し、準備を進めてきました。

 

29年前に義父を見送ったあと、冠婚葬祭会社で義母と夫の葬儀代の積み立てを始めたのです。義父の葬儀で勝手がわからなかった私たちは、葬儀会社のいうままに葬儀を進め、その後の請求額に驚いたことがあります。そうはならないよう葬儀会社を選び、葬儀代も支払いを終えています。

その会社から、エンディングノートをもらっています。ノートには、病気の告知、介護の希望、延命治療などを書く欄もあって、なかには答えづらい内容もあります。もらったときはまだ若く、何をどういうふうに書いたらいいのかわからず、いつかいつかと先延ばしになっていました。

最近じっくりと読んでみたら、これ一冊あれば私自身のことがよくわかるようになっていました。また、保険や銀行など重要書類のありかについて、夫と共有できていないものが判明し、保管場所を伝えるいい機会にも。

書き終えた今では、安心感が生まれました。自分がいつどうなっても、家族がこのノートを見れば自分のことをわかってくれる。元気なうちに書いておいてよかった、と思っています。二女も、「今ならデリケートな話もズバズバ聞けるね」とほっとした様子。

エンディングノートには夢を書く欄もあります。

そこに書いたのは、「夫と青森に旅行に行きたい」。山々が連なる広大な風景は憧れで、昔から行ってみたいとふたりで話していたのです。できれば体力のある70代のうちに。

長年の憧れ、青森旅行。青森の写真集や旅行会社のパンフレットを眺めて、気分を高めます(『71歳、74歳夫と97歳義母と大人だけで楽しく暮らす』より)

万が一の備えもこれからの夢も、文字にすることで、俄然現実味を帯びてきました。具体的なプランが決まったことで、明日に向かって歩く前向きさが生まれてきたのです。