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家庭でできる性教育ってどんなこと? 〜日本の性教育のいまと未来〜

子どもたちの健やかな未来に欠かせない性教育のあり方について、NPO法人ピルコン理事の染矢明日香さんにお話を伺う連載第2回目。前回のインタビューでは、日本の学校教育が性行為を「非行」と捉えている限り、性を肯定的に語れる豊かな性教育への道のりは、あまりに遠いのではないかと痛感させられました。

そこで重要になるのが、家庭での性教育。保護者も尻込みしてばかりはいられません。「何歳から始めればいい?」「自分たちのことを聞かれたらどうしよう?」などと不安がある場合も、あらかじめ自分なりの答えを用意しておくことが、性のことを落ち着いて語るためのカギとなりそうです。

2017年度には、保護者向けの講演は、東京、神奈川、大阪などで計13回、約1050名の方々に向けて実施。受講されたみなさんからは、「年齢に応じた伝え方があるとわかった」「今後、子どもに性のことを聞かれたら、成長を喜んでポジティブに答えたい」など、前向きな声をたくさんいただいたそう。


性教育のはじまりは
子どもの素朴な疑問に向き合うこと


−–− 学校の性教育を頼れない現状のもとでは、家庭での性教育が子どもの性の価値観を左右していく可能性がありますね。その重要性は理解できても、何をどう教えればいいのか、戸惑う保護者は多いのではないでしょうか。


染矢:そうですね。ピルコンでも、PTAや自治体からご依頼を受けて、保護者を対象とした「家庭における性教育」の講演をする機会は増えています。そして、そんな時にはまず「性教育とは、生殖や避妊方法だけを教えるものではありません」とお伝えしています。大事なのは、単に性について説明することではありません。性教育のゴールは、子ども自身が自分らしく生き、性にかかわる選択を自分でできるようにしてあげることなのです。そのためには、性にまつわることをごく自然に話せる親子の関係性を築いていくことが肝心。また、大人自身も正しい性の知識を身につけることが第一歩となります。

とりわけ、子どもから「赤ちゃんってどうやってできるの?」など性についての素朴な疑問を投げ掛かられた時は、きちんと向き合うことが重要です。そこで隠したり誤魔化したりすると、本当のことを伝えるタイミングを逸してしまうばかりか、子どもが「性のことは聞いてはいけないこと」と捉え、困ったことがあった時にも親に相談しにくくなってしまいます。せっかく子どもから聞いてきたのであれば、自分も学べるチャンスと考えて、絵本なども活用しながら科学的に教えてあげられるといいですね。不意を突かれて答え方が思いつかない場合は、まず「どうして知りたいと思ったの?」と質問の意図を確認し、「いい質問ね。大事なことだから、ちゃんと答えられるように調べておくね」と伝えて、後から答えれば問題はありません。子どもの感性は敏感なので、はぐらかさないことが大切です。

また、命の誕生の仕組みを説明する際に子どもがショックを受けないかと心配されていたり、「お父さんとお母さんもセックスしているの?」と聞かれたら困るという声も。前者については、子どもがセックスについて否定的な反応を示した場合は「あなたはそう感じたのね。セックスは子どもがするものではないし、どちらかがしたくないと思ったら無理にするものではないよ。お互いが本当に『したい』と思った時にだけするものなんだよ」と子どもの気持ちを受け止めてあげることが大切です。後者については、「セックスがあって、あなたが生まれたのよ」と伝えることは必要ですが、現在の性生活に関しては「それは、お母さんのプライバシーだから言えないよ。あなたもプライベートなことは、誰かに聞かれても無理に話さなくていいのよ」と教えてあげるといいと思います。

−–− 日本では家族内でプライバシーを守るという意識があまりなさそうですが、その感覚を持つことも大事かもしれませんね。

染矢:性教育をする際に、教える側の性についてすべて開示しなければならないかというと、決してそんなことはありません。何をどこまで話すか自分なりに線引きができれば、性のことも安心して教えられるのではないでしょうか。

2歳のお子さんには、性器を“恥ずかしいもの”と教えるのではなく、身体のいち器官として、頭やお腹と同じような感覚で覚えさせたいと思っているそう。「でも私もまだ、意識を変え切れていないところがあって、入浴後にオムツをはかずに走り回っていると、つい『恥ずかしいよ!』と言ってしまうことも(笑)。『大事なところだよ!』と言い換えるように意識しています。」

 

幼児期の入浴タイムは
性教育の絶好の機会


−–− 染矢さんご自身もお子さんがいらっしゃいますが、どのように性教育を実践されていますか?

染矢:そうですね。2歳になって喋れるようになってきたので、まずは、望まない身体接触を断って他のことを提案させる練習をしています。その方法としては、「ぎゅっとしていい?」「チュッチュしていい?」などと聞いて「やだ!」と言われたり、明確な返事がなければしません。もう一度「じゃあ、タッチならいい?」と聞いて「いいよ」と返事をされたら、その時点で初めて触るようにしています。「ぎゅっとされると嬉しいな」とふれあいの喜びも意識的に伝えるように。最近は子どもの方からも「ぎゅっとしていい?」と聞いてきてくれるんですよ(笑)。

−–− 「性的同意」を自然と身につけられるような練習をされているんですね。

染矢:身体の部分の名称も教えています。お風呂に入っている時に「頭もだいじ、おなかもだいじ、おまたもだいじ〜」と歌って指さしながら「すべて身体の一部だよ」と遊びながら伝えています。

−–−すべて並列に教えれば、性器だけタブーなものという先入観も抱かなそうですね。

染矢:自分が月経の時にあえて一緒にお風呂に入るというお母さんの話も聞きますね。「なんで血が出るの?」と尋ねられたら、「ママのお腹に赤ちゃんが入るお部屋があって、そこのお掃除をしているのよ。あなたも生まれる前は、そのお部屋にいたんだよ」と答えたり、「女の人は大人になるとみんな血が出るけど、ケガした時に出る血とは違って痛くないから大丈夫」「ただその時はイライラしやすかったり、お腹や頭が痛くなることもあるよ」と話したところ、月経中は子どもが優しく接するようになったという人も。自分の2歳の子どもにも試しに伝えてみたところ、まだ理解できていない様子でしたが(笑)。

性の話は、小学校低学年以下くらいの性的な関心に目覚めていない頃に伝えた方が、思春期のような反発もなく、すんなりと受け入れてくれるようです。性器の洗い方も、親と一緒に入浴する時期に男女ともに教えておけるといいですね。

“男の子の性”に関する書籍を作ったのは、「男の子が性の知識を身につけられる、読みやすい本が少なかったから」。男子が気にしがちな性器の形や大きさについての話から、女性の身体や月経、セックス、またスマホやSNSのトラブルなど実用的な内容が、マンガで読みやすく描かれています。大人が読んでもためになる1冊。
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