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家庭でできる性教育ってどんなこと? 〜日本の性教育のいまと未来〜

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二次性徴について、
親も正しい知識をつけて


−–− 小学校高学年以降から性教育を始める場合は、どのように教えるのがいいでしょうか?

染矢:その場合は、まず親自身が二次性徴についての正しい知識を身につけることが先決ですね。初潮も精通も10歳~15歳の間にほとんどの子が経験することで、現在、学校では小学校4年生の保健体育で学習します。親からは「学校で勉強した? わからないことある?」とか「心配なことがあったら相談してね」とひと声掛けておくと安心感が違うのではないでしょうか。

女の子なら、初潮の話をきっかけに命につながるセックスや避妊の話をしてみたり、すでに月経があるなら「お腹痛くない?」「毎月きちんと来てる?」などと声を掛けるといいですね。寝込んでしまうなど生活に支障が出るほどの強い月経痛があったり、月経時に貧血になってしまう、3ヵ月以上月経が来ないなどのトラブルがある時は、婦人科・産婦人科に連れて行ってあげてください。

男の子には、性的なことに関心が高まるのは自然なことであり、マスターベーションで解消できることや、回数を気にしたり罪悪感を持つ必要はないこと、プライベートな空間で、手を使ってやさしくするのが適切なやり方であることをぜひ伝えてあげて欲しいです。これらは女の子にも共通することですが、特に男の子が悩んでいることが多いのです。また夢精があった時には下着を自分で予洗いして洗濯機に入れておくことも教えてあげるといいでしょう。ただ、思春期以降は、異性の親は子どもの性にあまり踏み込まないようにして、同性の親や年長者の力を借りたいですね。思春期の正常な発達として、子どもが異性の親に性的なことを詳しく伝えることについて抵抗を感じることも多くあります。

また、二次性徴があるということは、セックスすれば妊娠する・させる体になるということ。そして、ネットを使い始めれば、様々な性に関する情報に触れることは、もはや避けられません。海外の研究では親から「セックスするな」と伝えること、もしくは何も伝えないことよりも、性について話すことが、子どもの性行動を慎重化させることがわかっています。「学生のうちは絶対妊娠はダメ」とか、黙ってコンドームを渡すだけというのはもったいない。たとえば「セックスってなぜすると思う?」「セックスができる準備ってどんなことだと思う?」「親になる準備ってどんなことだと思う?」など、子どもが主体的に考えながら、避妊や性感染症予防、性暴力についての正しい知識を学ぶ機会に繋げていけるといいのではないでしょうか。それには、親が子どもと本音で話せる関係性や大人自身のセックス観も問われますけどね。

−–− 染矢さんは、思春期の男の子が読める性の本も出版されていますよね。

染矢:はい、『マンガでわかるオトコの子の「性」 思春期男子へ13のレッスン』を書いた理由のひとつには、まさに性教育に迷う親御さんからお子さんに渡して欲しいという気持ちもありました。


この本を小学校5年生の学級文庫にしてくださったという先生から、「みんなでボロボロになるまで回し読みしています」という声をいただいたことも。そのクラスでは男子も女子も読んでくれているそうです。

 

男の子も女の子もお互いの身体について知ることが肝心なので、書籍のなかでは女性の身体のつくりや月経についても触れています。また「Q&Aの回答が詳しい」と評価していただくことも多いのですが、講演中に寄せられた質問を盛り込んでいるため、子どもたちが本当に知りたい情報をきちんと取り入れられたのではないかと思っています。

−–− なるほど。でもこうしてお話を伺っていると、やはり、できることなら思春期に入る前に、親子で性の話ができるといいですね。

染矢:そうですね。たとえば、性について幼児期から話して聞かせることはとても大事ですが、小さいうちは忘れるのも早いもの。だから、1度説明しておしまいではなく、何度もわかりやすく語り掛けながら、また、子どもがどう考えているのか理解度を確認しながら、性について当たり前のように話せる環境を家庭内に作っていくことが大切なのです。

さらに、性の話は、親が一方的に価値観を押しつけるのではなく、子どもの意見も聞きながら、お互いの考えが必ずしも一致しないことを前提に話し合えるということが、双方の意見を尊重することに繋がります。ニュースや身近な出来事などをきっかけに、性について一緒に考えられたら理想的。家庭にあたたかな居場所があり、困った時や悩んだ時に人生の先輩として一緒に解決策を探ったり、応援してくれる身近な存在がいるという安心感。それは、私たちが外部講師として講演するだけでは、かなえられないことです。家庭だからこそできる性教育だと思っています。


お風呂に入りながら楽しく性を学んだり、日常会話に自然と性の話題が上る家庭環境を整えてあげたりすることは、学校や専門家に任せきりにするだけではできない厚みのある性教育を実現してくれそうです。教える側の自分たちが完璧でなかったとしても、それは仕方がないことと割り切って、諦めず、子どもたちと一緒にアップデートしていく意識を持てるといいのかもしれません。次週11月23日(金)は、性教育先進国の教育法やピルコンさんの活動を通して見えてきた、未来の性教育についてお届けします。

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染矢 明日香

NPO法人ピルコン理事長。石川県金沢市出身。自身の経験をきっかけに、日本の望まない妊娠・中絶の多さに問題意識を持ち、慶応義塾大学在学中に「避妊啓発団体ピルコン」を立ち上げ、2013年にNPO法人化。医療従事者など専門家の協力を得ながら若者や保護者を対象とした性教育やライフプランニングを学ぶ講演活動やコンテンツ開発を行う。学生ボランティアを中心に身近な目線で性の健康を伝える「LILYプログラム」の出張講演をこれまでのべ150回以上、2万人を対象に実施。思春期からの正しい性知識の向上と対等なパートナーシップの意識醸成に貢献している。“人間と性”教育研究協議会東京サークル研究局長。著書に『マンガでわかるオトコの子の「性」 思春期男子へ13のレッスン』


撮影/浜村達也
取材・文/村上治子
構成/片岡千晶(編集部)


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