美味しい食べ物にお値ごろファッション、可愛いアイドルと極楽エステ――その全部が揃った韓国・ソウルは、何度でも行きたくなる旅行先。でもたまには「いつもと違うソウル」も見てみたーい!ということで、編集部・バタやんと、私、ライター・渥美志保の「オチビさん二人組取材班」は一路韓国へ。3回目のキーワードは、なんと「無料」。お散歩して、ゆっくり過ごして、好奇心をくすぐられて……え?これ全部タダ?というスポットをお届けします~。


●ソウル路7017

通常の湯歩道より高い場所にあるので、見晴らしも最高。街の真ん中にあるのに、抜群の解放感を味わえます。

「“ソウル路7017”は、昨年の春にオープンしたばかりの遊歩道なんですよ」とガイドさん。なんでも南大門市場近辺からソウル駅西部の萬里洞(マルリドン)までの1.2kmほどを繋いでいるらしいのですが――でもつまりは歩道でしょ、A地点とB地点へと向かう機能のほかに何があるっていうのかなあ……とイメージしきれぬままの、オチビさん二人組取材班。30分後には「いいじゃないの、2017!(→7017ですから)」と名前を完全に間違いながら盛り上がったのは言うまでもありません。

ということでスタート地点は、地下鉄4号線の「会賢駅」。私たちは階段を使いましたが、西側改札口に設置されたエレベーターからいくのがオススメ。
「ソウル路7017」は一番高い場所で地上17mあり、けっこう高い場所です。実はここ、もとはと言えば1970年に造られた高速道路で、老朽化に伴ってリノベーションし生まれ変わったもの。名前の7017は、高速が作られた70年と、遊歩道として生まれ変わった17年を繋ぐ架け橋の意味があるのだとか。もともとが高速道路ですからルートは最短だし信号もなく、ソウル駅までシューッといけるのですが、ただそれだけではなくお散歩に楽しい仕掛けがいろいろあります。

ソウル路7017の一番の魅力はその緑の多さ。路上に配置された665個の大きな植木鉢には、ソウルの気候に合わせた200種類以上、約24000株の植物が植えられています。松やブナなどの樹木に、韓国の国の花であるムクゲ、モクレンやバラなどの花々も多く、季節が季節なら、ちょっとしたお花見ができそうです。
私たちが取材したのはポカポカと暖かい極上の秋の日で、目の前を遮るものがない解放感と空の広さが最高……とそぞろ歩いていると、あら、植木鉢になんか書いてある?よく見ると多くの植木鉢には、ヒットした歌の歌詞や楽譜が書いてあるんです。ハングルだけでなく英語や日本語の曲もあり、「あ!『世界にひとつだけの花』が!」なーんてバタやんとプチ盛りあがり。楽譜なんて見たら“ソルフェージュ”な気分で口ずさんでみたくなるなあ。ああ、ピアノさえあれば弾いちゃうのに!残念!と思ってたら、なんと!!あるんですよ、「ソウル路7017」の上に、通りすがりの誰もが自由に弾いていいピアノが。歌い踊るのが大好きな韓国人、こんなところにも国民性……っていうか、屋外にピアノを置くなんて意見、日本では絶対に出てこないと思います。

植木鉢にはこんな感じで歌詞の文言が。こちらはKiroroの「ベストフレンド」。見つけると思わず口ずさんだりして、お散歩がより楽しくなっちゃいます。
そこここに配された謎のQRコードは、場所により、クーポンなどのお得情報が得られるサイトにつながるものや、植えられている樹木や花の説明してくれるものなど、さまざま。リアルとネットを上手に繋いで楽しませてくれるのは、さすがネット大国の韓国。

その他にも、随時マーケットやイベントを随時開催している広場やステージ、夏にはひんやりできる「足湯」、「好奇心鉢」と名付けられた“覗き穴”、さらに「EXOスホの木」「2PMジュノの木」などファンクラブが寄贈した木を探すのも、ファンならば楽しいかも。終点の萬里洞の北広場にある公共アート「ユンスル」は、インスタ映えも抜群ですよ~。

ソウル路7017には、こんな「足湯(?)」スポットも。日本でよくある温かいものではなく、夏の暑い日に足を浸して涼むタイプ。バタやん、足が浮いてます。

そして夜になるとすべての植木鉢がブルーにライトアップされ、「ソウル路7017」全体が町から浮かび上がるように青く光ります。ソウル駅周辺は、クラシックな旧駅舎や、ドラマ『ミセン 未生』のロケ地で知られるソウルスクエアビルの電光アートなど、夜景が楽しい場所でもあるので、こちらと合わせて夜に行くのもおススメです。

路上には普通に腰を下ろせるところがたくさんありますが、カフェやレストラン、トイレもあり、直結しているビルもあるので、散歩に疲れたな~という時もご安心を。

青く浮かび上がるソウル路7017の夜景。日本ではあまり経験したことのない青一色のライトアップは、まるで海の底にいるような神秘的な気持に。
太陽や月の光を浴びて輝く水波を意味する韓国語「ユンスル」と名付けられた公共アート。光が作る波にあふれる内部では、他では絶対に撮れない写真がとれます。昼と夜で表情が変わるので、両方見てみたい~!

 

●市庁舎&ソウル図書館

ソウル図書館に入ると、バタやんのサイズがどんどんと小さくなり……というわけではありません。クラシックな館内はこんな感じのキュートな現代アートがたくさん。インスタも楽しめます。

前々回、少しご紹介したソウル市庁舎内は、カフェや物販のスペースももちろんあるのですが、何が素晴らしいって、そこここにベンチやソファが置いてあること。「市庁舎は市民のためのもの」というコンセプトから、多くの場所が解放されていて、ふらっと立ち寄った市民が時間を過ごせる場所にしてあるんですね。もちろんwifi使用可。
市庁舎の近くで、ご飯を食べてお腹いっぱいだけどどこかでちょっと座りたい、外にいるには寒すぎるけどどこのカフェもいっぱい……みたいなときは、是非とも市庁舎へ。

市庁舎の中にはこんな感じで、そこここにテーブルと椅子が置いてあります。町の真ん中にこういう場所があるのは嬉しいですよね。

市庁舎のお隣、クラシックな風情が素敵なソウル図書館(旧市庁舎)も、ソウル市庁舎とは異なる雰囲気ではありますが、自由に腰を下ろせる場所がたくさん。ただこちらでは、くれぐれも静粛に。5階にはカフェがありますが、おすすめはそこからさらに上にある入場無料の屋上庭園。これからの冬の季節はちょっと寒いかもしれませんが、緑の中にポンポンと配置されたベンチからは、あの「ろうそくデモ」で数万人が集まったソウル広場も見渡すことができます。

ガイドさんの目印はこの赤いジャケット。私たちを案内して下さった、元銀行マンのチョさん。息子さんは日本で、あの大手広告代理店でお勤めなのだとか。エリート一家!

ちなみに市庁舎では、火曜から金曜は朝10時から、土曜日は14時30分から、庁舎内を案内する無料の日本語ツアーもやっていますので、ご興味のある方はこちらもどうぞ。
 

●漢陽都城博物館


さてさて、最後にご紹介するのは「漢陽都城博物館」。今も町中にその一部が残る、李氏朝鮮時代に造られたソウルの“城壁”についての博物館です。ちょっとマニアックかなーと思いますが、韓国の時代劇ドラマが好きな方(それは私)、「歴女」(それはバタやん)には必見の場所かもしれません!

博物館を出るとすぐの場所には、今も残る城壁が。現在残る漢陽都城は全体の2割弱だそうですが、町中も気を付けながら歩いていると「ここに!あそこにも!」という感じで見つかります。

さてそういうわけで、韓流時代劇とかにぜんぜんご興味ない方には非常に恐縮なのですが、ドラマで、よく地方から旅人が首都・漢陽(ハニャン、現在のソウル)にたどり着くと、番人が立ってる門をくぐる場面をよく見かけます。それが漢陽都城。李氏朝鮮時代、ソウルの町は周囲約90kmをぐるーっと壁で囲まれていたんですね。1396年にこれを造ったのが、『六龍が飛ぶ』でお馴染み、李氏朝鮮初代の太祖イ・ソンゲ。
「南大門」はその城壁のメインゲートで、王様や外国からの使節が通った門。そう思うと確かに、ソウル駅から南大門を通過し一番大きい世宗路を真っすぐ行くと、当時の王宮「景福宮」まで一直線。一方の「東大門」から、現在は地名のみ残る「西大門」までも、清渓川と並行しながらの一本道。この南北と東西の道が、光化門広場で交わっています。歴史を紐解くと、なんとなーく現在のソウルの位置関係が見えてくるんじゃないでしょうか。
え、でも、あれ?「北大門」は?気になりますよね~。もちろん北大門も、南大門から景福宮を越え、まっすぐの延長線上、白岳山(ペックァクサン)の山中にあるのですが、2006年まで一般の立ち入りが禁止されていたのです。というのも景福宮の裏手、北大門のすぐ手前に大統領府「青瓦台」があり、1968年にこちらがわから北朝鮮の暗殺部隊が侵入したからなのです~!ちなみに現在は身分証があれば一般の方も行くことができます。
ソウルの町のそんなこんなを知ることができる漢陽都城博物館。こんなにも充実していて無料ってすごいことです。博物館を出るとすぐの場所にも城壁が残っているので、館内を見学の後はその足で歴史を実感しながらお散歩するのもオススメ。ソウル市ではそれぞれの門と城壁を訪ねるツアーも用意しているので、足に自信のある方はぜひ行ってみてくださいね~。

DDPのすぐわきの城壁に残る刻字。この部分の城壁が壊れた時に「誰が直すんだよ!」ってことにならないよう、建設時期、現場監督の名前とその出身地、そこを治める知事の名前などが刻まれています。責任逃れできません。
 
撮影/PENTA PRESS/Seoul Metropolitan Government、
渥美志保、川端里恵(編集部)
取材・文/渥美志保
構成/川端里恵(編集部)

 


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