資格を取るなら国家資格、または資格の掛け合わせを


大事なのは“肩書き”という武器を増やすこと。それにはやはり資格の取得が有効だと田村さんは言います。ただしここでポイントとなるのが、取る資格の種類。

「とくに女性に多いのですが、人気の民間資格を取るという方向にいきがちです。たとえばカラーコーディネーターとか薬膳コーディネーターなど。もちろんこれらの資格も良いのですが、残念ながら民間資格はピンポイントにその分野で働くのでない限り、広く評価はしてもらいにくい。また比較的取得しやすいこともあり持っている人が多いですから、その分野でも競合率が高く、それで稼ぐとなるとさらに難しくなります。取るならやはり国家資格をオススメします」

とはいえ、まったく興味のない分野の勉強をするのも難しいもの。「そんなときは資格の掛け合わせを」と田村さんは提案してくれました。

「たとえば美容師は国家資格ですが、合わせてカラーコーディネーターの資格も持っていたりすると、開業したとき、他と差別化ができて有利だと思うんです。私も税理士プラス経営学修士の学位も持っている、という掛け合わせを目指して勉強中ですが、それは“お客さんに好かれる税理士”になって頭一つ抜け出すため。お客さんに好かれるには、気軽にいろいろなことを相談してもらえるようにならなくてはいけないわけですが、普通は若い女性税理士にそんなに相談しようとは思いませんよね。でも学位を持っていれば、『専門的な知識を授けてくれるだろう』と思って相談してもらえます。たとえアドバイスしている内容が、学位をとる前と後とで同じだったとしても(笑)」


厳しい現実からも目を背けない


こう聞いていると、何か目標があったとしても、その実現のための行動は決して生易しいものではないということが感じられてきました。でも世の中には、もっと気軽に何かを始めて、そこそこ軌道に乗っている人もいるような気がしますが……?

 

「たしかに、そういう人がいるのも事実です。しかも今はSNSが普及して、そうやって成功して楽しそうにやっている人の話がたくさんアップされている。それだけに、そんなに頑張らなくても自分もできるのでは? と思ってしまいがちです。でもそういった人って、SNSには書かれていないけれどいろいろ恵まれていることが多いんですよ。私が以前に税務イベントで出会った女性も、オシャレなカフェを開いて華やかにやっている方でした。でもよく聞くと、お店を開いている場所は家族の持ちビルで、賃料はゼロ。それでも売り上げはトントンで、家賃があったら到底続けていけるものではありませんでした」

たしかに成功例を見ると前向きな気持ちにはなれますが、夢物語だけでなく、失敗事例もきちんとチェックしてほしい、と田村さんは言います。

「よく年末になると、プロ野球の戦力外通告の番組をやっていますよね。ああいった番組を見るのも大事だと思いますし、仕事を始めたけど続かなかった、今年で店をたたむことにした、という人のブログなども読んでほしいと思います。そうすると現実の厳しさが分かりますから、『私、現状で十分満たされているかも』ということに気づけるかもしれません。それでもやりたい!と思ったなら、その気持ちは本物ですから、是非戦略を立てて行動を起こしてほしいと思います!」

少し話はそれますが、主婦の方には行動する勇気がないのではなく、行動することに罪悪感を抱く女性も少なくないようです。「仕事で子供にかまってあげられないとかわいそう」と諦めたり、「子供がいるのに自分の生き方を追求したいなんてワガママではないか?」と思い悩んだり……。そのような人は、どのように割り切れば良いのでしょうか?

「その気持ち、分かります。まわりもいろいろ言いますしね。私も出産後すぐ働き出したため、よく『誰が子供を見ているんですか?』と聞かれましたから。私の場合は『仕事して何が悪いんだ!』という思いがありましたから、『旦那に決まってるじゃないですか!』とキレぎみに返していましたが(笑)、実際はそんなふうに開き直れない人がほとんどですよね。でも、どっちもは取れないのが現実だと思います。バリバリ何かをやりたいなら子育てにある程度のシワ寄せがいくことは受け入れないといけないし、反対に子育てのほうが大事なら、子供が手を離れるまではちょっと悶々とするのも仕方ない。で、子供が巣立った後、思いっきり行動すればいいと思うんです。必ずタイミングは巡ってくると思いますから。そうやって価値観の優先順位をつけることも戦略として大事。多くを求めすぎると、何も手に入れられなくなってしまいますから」



女性たちに「武器を身につけよ!」と伝えたい


田村さん自身、仕事を続けていくことを優先したいため、「二人目は生まない」と決めているそう。ではその仕事において、今後はどうしていきたいと考え、どのような戦略を練っているのでしょう?

「今は何とかやっていけていますが、税理士という仕事は今後は頭打ちになっていくと思うんですね。人数も増えていきますし、機械化も進むでしょうから、単価が下がっていくはず。だからもう一つ“税理士で◯◯”という軸がほしい、そう考えて本を書きたいと思ったんです。とはいっても、もちろんいきなり『本を出したい』と思って出せるわけではありませんから、とりあえず毎日ブログを書くことを自分に課しました。私は学生時代も国語の成績は2で、文章を書くことは苦手だったんですけど、それでも書き続けることで、どういった文章を人は面白いと感じてくれるか見えてきました。そこで、税理士の仕事とは関係ないことも面白おかしく書き綴っていたら、『税理士なのに面白い』と話題になって、今回本を出すことになった出版社の方に見つけてもらえたんですよ」

苦手なことでも続けていれば上手くなっていく。何かやりたいと思っているときは、とにかくできる形で続けるということも戦略の一つかもしれません。

「本を出したいと思った理由は、あわよくば本を踏み台にどこかの女子大の講師の座を射止めたい、と考えていたからなんです。私はそこで女子たちに、『いつでも戦えるように武器を身につけなさい!』と伝えたいんです。たとえ使わなくても、武器があれば人に頼らず自分の脚で自分の人生を歩くことができる。そのことを、早い段階で知ってもらいたいと思っているんです」

 

『ブスのマーケティング戦略』

田村麻美著 文響社 ¥1500(税別)

子供の頃からブスを自覚していた著者が、「ブスでも幸せな結婚」「ブスの経済的な自立」の2つの目標を立て、それを叶えるべく行動を開始。その行動戦略と、様々なブスエピソードを織り交ぜて綴ったエッセイ&実用書です。本書は、主に容姿によって様々なことを諦めている人、若い頃は容姿を武器にしてきたけれども30歳を超えたあたりからその武器が通用しなくなった人に向けてメッセージを発していますが、インタビューで答えているように、あらゆる言い訳のもと行動しない人たちにとって役に立つ戦略がたくさん載っているので、是非一読を!

撮影/塚田亮平
取材・文/山本奈緒子

インタビュー前編はこちら>>

 
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