「おっさんずラブ」効果による田中圭の遅ればせながらの大ブレイクや、「中学聖日記」に抜擢された超新星・岡田健史の出現などで盛り上がった、2018年のテレビドラマ界。そんななか、年末にかけてあちこちのドラマに顔を出し、気になる存在となっていたのが清原翔だ。
清原翔は、1993年2月2日生まれの25歳。神奈川県出身。2013年に「MEN'S NON-NO」の専属モデル(通称メンノンモデル)となり、2016年から俳優業へ進出する。所属事務所はスターダストプロモーション。185cmのスタイルの良さと、綾野剛を彷彿とさせる体温の低そうな風貌が魅力的だ。
2018年は10月クールに深夜ドラマ「深夜のダメ恋図鑑」と「PRINCE OF LEGEND」に掛け持ちで出演し、織田裕二主演の月9ドラマ「SUITS/スーツ」の第1話にメインのゲストとして登場してインパクトを残し、「忘却のサチコ」の第5話にもゲスト出演するなど、急速に存在感を増していった。
そして2019年は、まだ知る人ぞ知る存在である清原の快進撃が本格的に始まるだろう。なぜなら、4月から始まる朝ドラ「連続テレビ小説 なつぞら」で、広瀬すずが演じるヒロイン・奥原なつが引き取られる柴田家の照男役に抜擢されたから。照男の父親は藤木直人、祖父は草刈正雄という、ハンサム家系の長男坊。真面目な性格で、酪農を営む柴田家の跡取りとして奮闘するも、不器用で、なつにいつも先を越されるというあたり、はやくもほっとけないキャラのイントロが聞こえてくる。このドラマには、岡田将生や吉沢亮といった超美形俳優も出演するので、ベースの注目度が高いこともブレイクへの後押しになるだろう。
今年3月21日には映画『PRINCE OF LEGEND』が公開。テレビドラマ版に引き続き、モテすぎて付き合うと苦労する《美容師王子》を演じる。さらに5月17日には、映画『うちの執事が言うことには』も公開。役柄は、飛ぶ鳥を落とす勢いのアイドルグループKing & Princeの永瀬廉が演じる主人公に仕えるクールな執事。美少年に仕えるクールな執事…? こ、これはおいしい役の匂いがする…!! 同時期に放送中の朝ドラで演じるキャラクターとのギャップがあることも、2018年に「半分、青い。」と「義母と娘のブルース」が同時期に放送されて絶賛された佐藤健のように、功を奏しそうだ。
それはさておき、メンノンモデル出身の俳優は、東出昌大(30)、柳俊太郎(27)、坂口健太郎(27)、成田凌(25)と、錚々たる顔ぶれだ。東出昌大は昨年公開された映画『寝ても覚めても』が世界20カ国での配給が決定するなど、世界での活躍が視野に入ってきている。柳は個性的な風貌を活かし、バイプレイヤーとして着実にキャリアを築いている。坂口健太郎は「シグナル 長期未解決事件捜査班」に続き、1月19日よりスタートする「イノセンス 冤罪弁護士」で連続ドラマに主演する。俳優になるための手段としてメンノンモデルとなった成田凌は、『ニワトリ★スター』や『ここは退屈迎えに来て』など、2018年は6本の映画に出演。2019年も、『チワワちゃん』(1月19日公開)を皮切りに、出演作が目白押し。
そこに続く存在が清原翔であり、2018年に東出と舞台「豊饒の海」で共演した宮沢氷魚(24)も後に控えている。なぜメンノンモデルは俳優として強いのか? 彼らは彫刻のように美しい超イケメンというよりも、尖りすぎていないセンスの持ち主である男性読者が親しみを感じるような隙や愛嬌を備えた風貌なので、好青年から闇を抱えた陰キャラまで、幅広い役にフィットする。ここはけっこう重要で、あまりに美形すぎると役柄が限定されてしまうもの。だから清原翔のように、ちょい役で経験を積んでいくことができるのだ。これはメンノンモデルに限ったことではないが、モデルは服の引き立て役に徹することができるので、脇役のときは主役を立てることができる。また、モデルのときはクールな表情やポーズを決める彼らが、役を演じるときのエモーショナルな表現がギャップとなるのも大きな武器。本連載の第8回での、木俣冬さんの「モデル出身者は、背が高く見栄えがいいことはもちろん、服を美しく見せるすべを体得しているので、映画やドラマでも絵になるのです。持論ですが、服を理解する知性や感性が、役(脚本や演出)を理解することにも生かされているのではないかと思われます。」という分析にも激しく同意! カメラのレンズが何を狙っているのか、作り手が何を撮りたいのかを探るモデル経験者は、0から演技を始める人に比べて、大きなアドバンテージがある。だから演技者としてのスタートが遅くても、短期間での伸び率が大きいのだろう。
4月の朝ドラが待ちきれない人は、3月に放送される清原翔と鈴木拡樹のW主演作「虫籠の錠前」(WOWOW)をチェックしよう。「裏社会の人間などを相手に仕事の仲介や情報の売買を行っているナナミ」役とは、これもまたおいしそうな匂い…!!
<映画紹介>
『PRINCE OF LEGEND』
監督:守屋健太郎 脚本:松田裕子
出演:片寄涼太、鈴木伸之、佐野玲於、関口メンディー、清原翔、町田啓太、飯島寛騎、川村壱馬、吉野北人、加藤諒ほか
3月21日(木・祝)全国東宝系にてロードショー
©2019「PRINCE OF LEGEND」製作委員会
<ドラマ紹介>
『イノセンス 冤罪弁護士』
脚本:古家和尚
出演:坂口健太郎、川口春奈、趣里、小市慢太郎、正名僕蔵、赤楚衛二、中島広稀、杉本哲太、志賀廣太郎、市川実日子、草刈正雄(特別出演)、藤木直人 ほか
1月19日夜10時スタート。初回15分拡大スペシャル
©日本テレビ
<映画紹介>
『チワワちゃん』
監督・脚本:二宮健 原作・岡崎京子
出演:門脇麦、成田凌、寛 一 郎、玉城ティナ、吉田志織、村上虹郎、仲万美、古川琴音、篠原悠伸、上遠野太洸、松本妃代、松本穂香、成河、栗山千明、浅野忠信 ほか
1月18日新宿バルト9ほか全国公開
ライター 須永 貴子
2019年の年女。群馬で生まれ育ち、大学進学を機に上京。いくつかの職を転々とした後にライターとなり、俳優、アイドル、芸人、スタッフなどへのインタビューや作品レビューなどを執筆して早20年。近年はホラーやミステリー、サスペンスを偏愛する傾向にあり。
文筆家 長谷川 町蔵
1968年生まれ。東京都町田市出身。アメリカの映画や音楽の紹介、小説執筆まで色々やっているライター。著書に『サ・ン・ト・ランド サウンドトラックで観る映画』(洋泉社)、『聴くシネマ×観るロック』(シンコーミュージック・エンタテイメント)、共著に『ヤング・アダルトU.S.A.』(DU BOOKS)、『文化系のためのヒップホップ入門1&2』(アルテスパブリッシング)など。
ライター 横川 良明
1983年生まれ。大阪府出身。テレビドラマから映画、演劇までエンタメに関するインタビュー、コラムを幅広く手がける。人生で最も強く影響を受けた作品は、テレビドラマ『未成年』。
メディアジャーナリスト 長谷川 朋子
1975年生まれ。国内外のドラマ、バラエティー、ドキュメンタリー番組制作事情を解説する記事多数執筆。カンヌのテレビ見本市に年2回10年ほど足しげく通いつつ、ふだんは猫と娘とひっそり暮らしてます。
ライター 須永 貴子
2019年の年女。群馬で生まれ育ち、大学進学を機に上京。いくつかの職を転々とした後にライターとなり、俳優、アイドル、芸人、スタッフなどへのインタビューや作品レビューなどを執筆して早20年。近年はホラーやミステリー、サスペンスを偏愛する傾向にあり。
ライター 西澤 千央
1976年生まれ。文春オンライン、Quick Japan、日刊サイゾーなどで執筆。ベイスターズとビールとねこがすき。
ライター・編集者 小泉なつみ
1983年生まれ、東京都出身。TV番組制作会社、映画系出版社を経てフリーランス。好きな言葉は「タイムセール」「生(ビール)」。
ライター 木俣 冬
テレビドラマ、映画、演劇などエンタメを中心に取材、執筆。著書に、講談社現代新書『みんなの朝ドラ』をはじめ、『挑戦者たち トップアクターズ・ルポルタージュ』ほか。企画、構成した本に、蜷川幸雄『身体的物語論』など。『隣の家族は青く見える』『コンフィデンスマンJP』『僕らは奇跡でできている』などドラマや映画のノベライズも多数手がける。エキレビ!で毎日朝ドラレビューを休まず連載中。
映画ライター 細谷 美香
1972年生まれ。情報誌の編集者を経て、フリーライターに。『Marisol』(集英社)『大人のおしゃれ手帖』(宝島社)をはじめとする女性誌や毎日新聞などを中心に、映画紹介やインタビューを担当しています。