母親の呪縛から逃れられない娘たちが話題になって久しいですが、その母の存在が影響して、自身の結婚生活が上手くいかなくなっている娘も多いようです。離婚問題を専門とする原口未緒弁護士は、離婚の前に母親の呪縛をしっかり断ち切ることのほうが大切だと説いています。
イヴさんからの質問
Q. 離婚もしたいし、一人になった母も心配だし。
どうしたらいいのか分かりません。
私は兄二人の末っ子、現在は結婚して夫と8歳の子供が1人おり、実家の自営業を手伝っています。少し前に父が亡くなり、80歳の母の面倒を通いで見ようと思っていましたが、母は都会に住む長男に見て欲しく、私が何をしても当たり前で刺々しい態度をとります。兄は母にお金を借りて自分の商売をしている状態ですが、商売を諦めて実家に帰るのは嫌なようです。ただ、母の商売も不景気で辞めた方が良いくらいだし、母は不安定なところがあり一人にするのも心配です。私も夫の給料だけでは生活できないので、働きにいかなくてはやっていけません。私の夫はモラハラで離婚したいのですが、子供が離婚を嫌がっているので今は仮面夫婦。大きくなってから、離婚しようと思っています。母から離れた方がいいのでしょうか?(43歳)
弁護士 原口未緒さんの回答
A. お母様に対して
“大人の反抗期”をすることをオススメします。
お母様の問題と、自身の離婚問題がゴチャ混ぜになっていらっしゃいますので、まずはこの二つを切り離して考えてみたいと思います。
ご自身の離婚問題ですが、今は子どものために仮面夫婦を続け、将来的に離婚しようと思われているとのこと。そこで今のうちにできることをアドバイスさせていただきますと、やはり仕事を見つけられることが一番でしょう。夫がモラハラであるというだけでは、離婚の際に多額の慰謝料をとることは難しいと思いますので、離婚後の経済的基盤と作っておくことは必須かと思います。
そして一人になられたお母様に関するお悩みですが、まずはお悩みの内容を整理させてくださいね。イヴさんはお母様のことが心配で、通いで面倒を見たいと考えられているのですよね。ですがお母様はお兄さんに面倒を見てもらいたがっていて、イヴさんの世話は必要ないといった態度をとる、と……。イヴさんのケースに関わらず、母親が他のきょうだいばかりかわいがっていたという方は、どうしても自己肯定感が低くなり、モラハラタイプの男性と付き合いやすい、という傾向はあるように感じます。結果、結婚生活も行き詰まりがち……。そんなご相談者に私がよく差し上げているアドバイスが、「大人の反抗期をしてください」というものなのです。
きょうだいが多い場合、きょうだいへの子育てが大変そうな親を見て、「迷惑をかけないよういい子にしなければ」と我慢をしてしまう子も多いのですね。すると親は「この子は手がかからない」とあまり関心を払わなくなるのですが、その子の中では「親に振り向いてほしい」という気持ちがどんどん膨らんでいきます。それを大人になっても引きずってしまう……。ですから一度、その不満をぶつけることが大切なのです。イヴさんなら、「何で兄ばかり大切にするの!?」と。
何を隠そう、実はこの「大人の反抗期」、私もおこなったのです。私は二人姉弟で、母からは「お姉ちゃんはしっかりしているから大丈夫」と言われて、母親のためにずっといい子にしてきたのですが、3度目の離婚をした39歳のときに、とうとう「お母さんたちが離婚していなければ私だってもっと上手くやれたはず!」と言ってしまったのです!
認めたくはなかったのですが、私が母親に無関心な態度を取られても「それなら別にそれでいいや」と割り切ることができなかったのは、結局は「愛されたい」と思っていたからなのですね。だからそれまでは、嫌われたくなくていい子にしていたのですが、それが報われない。そこで母親に嫌われることを覚悟したうえで不満をぶつけたのですが、これがとくに嫌われなかったのです。そのときは母も「何よ!」と言っていたのですが、翌日になると何事もなかったかのようにいつもと同じ態度で……。これが私には衝撃でした。別にいい子にしていなくても、母娘関係はゆるがないんだ、と。ただ、だからといって今までの態度を反省してくれたわけではありませんでしたが(笑)。それでもその後から私は、明らかに母の存在に囚われにくくなりました。
反抗期とまでいかなくとも、「兄ばかりにかまっていて寂しかったのよね」と気持ちを話すだけでも良いかもしれません。本音をぶつければ、涙が出るものです。泣く行為って浄化になるもの。今までの思いが流されれば、だんだんと「自分が母の世話をしたいからするんだ」と思えるようになってくるかもしれませんし、そうこうしているうちに、「兄に任せておけばいっか」と思うようにもなるかもしれません。
とにかく、一度お母様にきちんと不満をぶつけてください。私が言うのも何ですが、気持ちを打ち明ける先はお悩み相談の場ではないと思いますよ!
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- 原口未緒(はらぐちみお)1975年生まれ。弁護士。学習院大学法学部卒業。2004年に弁護士登録。民事、商事、家事、刑事、倒産処理、債務整理など様々な案件を担当した後、2010年に「未緒法律事務所」を開所。夫婦、離婚案件を主に扱っている。法的な解決策を提案するだけでなく、コーチング、カウンセリング、セラピー手法を取り入れ、「心のケアもする弁護士」として人気がある。著書に『「この結婚もうムリ」と思ったら読む本 こじらせない離婚』(ダイヤモンド社)がある。自身は3度の離婚を経て、現在4度目の結婚をし、第一子をもうける。 この人の回答一覧を見る
- 山本奈緒子(やまもとなおこ)1972年生まれ。6年間の会社員生活を経て、フリーライターに。『with』や『VOCE』といった女性誌の他、週刊誌や新聞、WEBマガジンで、インタビュー、女性の生き方、また様々な流行事象分析など、主に“読み物”と言われる分野の記事を手掛ける。 この人の回答一覧を見る
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