不幸なことに、不幸なことがなかったんだ
みうらじゅんさんの自伝的小説『アイデン&ティティ』。そして、後に宮藤官九郎さんが脚本、田口トモロヲさんが監督を務めた映画でも、主人公(映画では銀杏ボーイズの峯田くん)がこの台詞を言う場面が、私の中で最もエモい(この言葉以外思いつかないので、あえて使います)シーンとして描かれていました。
ごく普通の家庭に育ったみうら青年は、ある意味、順風満帆。言い換えれば幸福だった。その変わりに、彼が突き詰めたいロックに必要不可欠な反社会性というマイナーな要素が日常生活の中には皆無。つまり、真の不良になる必要がない自分がロックと向き合うことの難しさに悶えていたわけです。
幸せな悩みである。そう言ってしまえばそれまでなのですが、私にもそういうところが多分にありました。「自分が何者かになる」ために絶対に必要なリビドーの決定的な脆弱さ。もちろん、私なりのコンプレックスや葛藤はあったのですが、それでも「何者かになる」ためのリビドーを自家発電するには足りない。
この平凡すぎる生活環境がいけないんだ!
そんなふうに思っていたのです。はい、思春期ならではの過剰なる自意識の産物。傍若無人な言いがかりです。
先週、映画『アメリカン・アニマルズ』を観ました。内容も構成もおもしろさの質もまったく違いますが、昨年の大ヒット作『カメラを止めるな』と同様、前情報を詰め込まず、ニュートラルに向き合っていただきたい作品だな、と。だから、詳細は語りません(笑)! 多感な時期に『トレインスポッティング』を「これは、自分たちの物語だ!」と興奮して観ていた方なら間違いないと思います。クライムサスペンスにカテゴライズされているようですが、私にとっては圧倒的に青春映画枠なのです!
私のように「何者かになりたい病」にかかり悶々とこじらせ青春時代を過ごした方はもちろん、「YouTuberになりたいだなんて意味がわからん! TikTokなんて楽しさのポイントすらわからん! 若者が考えていることなんてまったく分から〜ん!」とお嘆きの方に、是非観ていただきたいです。
ご興味が出た方はこの予告動画すらも観ないで映画館へ。どうぞ、私を信じて(笑)!
今日のお品書き
遂に「はまじ」がミモレ初登場です! 私が『ヴァンテーヌ』編集部にいた頃、シスターモデルだったはまじ(『mcシスター』と『ヴァンテーヌ』は同じ出版社から刊行されていました)をよく見かけておりました。それから約20年……まったく印象が変わらない! なんという透明感。これから新たなステージへと進化するはまじとご一緒できて、幸せです!
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