カトリーヌさんは、このまま点滴を続け、ご主人が目覚める奇跡を待ちたい、という思いがあるのではないでしょうか。ですが厳しいことを言いますと、奇跡を信じている限り、いつまでも何も決断できないことでしょう。そして夫の病気に対してかつて何度も奇跡を願った私は、願いは通じない、ということも厳しいけれど真実だと思っています。さらにカトリーヌさんがこのまま現実と向き合えないまま時が過ぎ、何一つ決められず、そのままご主人に万が一何かあったとき、一生後悔を背負って生きていくことにもなりかねないと思うのです。
ですから今のカトリーヌさんがまずすべきことは、ご主人をどう介護するか一度具体的に検討してみる、ということだと思います。ご主人の状態とどう向き合うべきか、もう決断しなければならないタイミングにきているのです。
ただ、どうか全て1人で背負って一人で決めようとしないでください。せめてご家族にだけでも相談してみてください。できれば、ご主人の友人、ご自身の友人など、同じ立場に立って一緒に考えてもらえる人に相談をしてほしいと思います。ご主人をよく知る人、自分をよく知る人と、ご主人だったらどうするか、自分だったらどうするかを想像してみるのです。また、同じ遷延性意識障害の家族を介護する人たちが運営する家族会もありますので、そういったところでいろいろな話を聞いてみるのも良いかと思います。奇跡はなかなか起きてくれませんが、助けてくれる人は必ずいますから。
植物状態の方の介護というのは、命をどう捉えるか、という問題を突きつけてくるものだと思います。その人が生きていると捉えるか、死んでいると捉えるか……。私は、そのどちらであってもご家族が捉えたことが正しいと思っています。ですから、「何を選んでもアナタの味方よ」と言ってくれる友人に話してください。中には、「奇跡を信じて待つのが妻の姿よ」などと自分の価値観を押し付けてくる人もいますから。でも私は、もし身近にカトリーヌさんのような方がいらっしゃったら、「何を選んでもどう考えても、いつもアナタの味方よ」と言える人間でありたいと思っています。
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- 金子稚子(かねこわかこ)1967年生まれ。終活ジャーナリスト。終活ナビゲーター。一般社団法人日本医療コーディネーター協会顧問。雑誌、書籍の編集者、広告制作ディレクターの経験を生かし、死の前後に関わるあらゆる情報提供やサポートをおこなう「ライフ・ターミナル・ネットワーク」という活動を創設、代表を務めている。また、医療関係や宗教関係、葬儀関係、生命保険などの各種団体・企業や一般向けにも研修や講演活動もおこなっている。2012年に他界した流通ジャーナリストの金子哲雄氏の妻であり、著書に『金子哲雄の妻の生き方~夫を看取った500日』(小学館文庫)、『死後のプロデュース』(PHP新書)、『アクティブ・エンディング 大人の「終活」新作法』(河出書房新社)など。編集・執筆協力に『大人のおしゃれ手帖特別編集 親の看取り』(宝島社)がある。 この人の回答一覧を見る
- 山本 奈緒子1972年生まれ。6年間の会社員生活を経て、フリーライターに。『FRaU』や『VOCE』といった女性誌の他、週刊誌や新聞、WEBマガジンで、インタビュー、女性の生き方、また様々な流行事象分析など、主に“読み物”と言われる分野の記事を手掛ける。 この人の回答一覧を見る
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