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夫婦対談『今日の買い物』ができるまで 【岡本仁&岡本敬子】

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ポラロイドで撮る正方形の
フォーマットと非現実感が好き


―ところで、本に掲載されている“お買い物”の写真をすべてポラロイドで撮られていたのはなぜですか?

仁:僕は昔から音楽好きで、最初に触れたアートフォーマットといえばLPレコードでした。それで、格好いいものは正方形をしているという刷り込みが自分の中にできていたんですよね。以前フリーペーパーを作ったときにポラロイドを使ってみたら、プロではない自分の撮った写真でもそれなりのものに見えた。それ以来、気に入ってしまって。

 

敬:ポラロイドだといい写真に見えるのよね。画像がぼんやりしているし(笑)。

仁:そうだね(笑)。確かにあのぼんやりとした、現実を非現実化してくれるような感じが好きなんですよ。まあそういうわけで、著書に掲載されているように、1ページをポラロイドで撮った写真一枚と文章で構成するというスタイルが出来上がりました。近年はインスタグラムにポストをする写真を撮るのにスマホのカメラを使っていますが、この先も正方形のフォーマットから変えることはないかなと思います。

 


お買い物の楽しさに目覚めたのは
子どもの頃から


―さて、この本にはファッションアイテムに食器、食べ物、雑貨、家具etc.……、お二人のセンス溢れるお買い物エピソードがたくさん載っていて、読んでいるとワクワクしてきます。お二人がご自分のお買い物好きを初めて自覚されたのはいつですか?

敬: 私は小学校3年生の頃だったかな。ウインドウに飾られていたスニーカーを見てどうしても欲しくなり、貯めていたお小遣いでネイビーとイエローの2足買いしたことを覚えています。母には1足でいいでしょうと言われましたが、両方の色が可愛くてどちらにするか選べなかったんです。というより2色あるから素敵に見えて欲しくなった。(笑)。

仁:僕の買い物は、基本的に本かレコードが中心だったので、レコードでいえば中学生の頃かな。それ以外で買い物好きを自覚したのは、カミさんと結婚する前だから、今から32,3年前ですね。初めてパリの蚤の市に行ってぶらぶらしていたら、あれも欲しいこれも欲しい、という状態になってしまった。でも帰りの荷物を重くしたくなかったので、買うものは限られていましたけどね。

敬:灰皿をたくさん買っていたわよね。タバコも吸わないのに(笑)。

仁:そうそう(笑)。この本にも書いているけれど、一つ10~15フラン程度で値段が手頃だし、小さくて持ち帰るのにちょうどいいサイズだし。何よりデザインがおしゃれだし。もうだいぶ売ってしまいましたが、いまでも5,6個は手元に残しています。あとは当時まだ日本にあまり入っていなかったミントティーのグラスなんかも買いましたね。そうやって買ってきたものを並べていると、自分の趣味というものが何となく分かってくる。それも買い物の面白いところなんじゃないかなと思いますね。

最近の「今日の買い物」―5wのシャツジャケット(仁)
「秋田をベースに活動されている小野諭さんのブランド、5w(ゴワット)のシャツジャケット。カミさんがディレクションしている『pili』でこのブランドを扱っているんですが、最初はレディースだと思っていたので遠巻きに見ていただけでした。でも、帰国後にまた『pili』に行ってみたら、この5月にニューメキシコに行ってから妙に惹かれるようになったレンガ色のアイテムを発見。思わず手に取ると、ユニセックスで着られますとスタッフに勧められたので購入しました。昔ならこういう服を手に取ることはなかったけれど、体質改善をして体形が細くなったら着たいと思うようになりました。とはいえ、まだタグすら切っていない状態。いつもの自分のスタイルからいって、しばらくワインのように熟成させてから袖を通すことになるんだろうな、と思っています」
 

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『今日の買い物[新装版]』
岡本 仁 岡本 敬子 著


買い物は店へのエールである。今はもう失われてしまった店の記憶や、変わらぬ老舗の味。スタイルのある洋服やアクセサリー、そして古びないプロダクトデザイン。今日もまた、いろいろなものを縦横無尽に買い物する2人の、もの選びのセンスとは? ものを選ぶことが仕事でもある編集者岡本仁+ファッションディレクター岡本敬子の大人気買い物エッセイ、新装版が登場! (解説・平野紗季子)
※9月26日発売予定(予約受付中)

 

岡本 仁

北海道夕張市生まれ。テレビ局を経てマガジンハウスに入社、雑誌『ブルータス』『リラックス』『クウネル』などの編集に携わる。2009年よりランドスケーププロダクツにてプランニングや編集を担当。近年はキュレーションなども手掛ける。著書に『東京ひとり歩き ぼくの東京案内地図。』『また旅。』『果てしのない本の話』ほか多数。
Instagram:@manincafe

岡本 敬子

アタッシェ・ド・プレス、「KO」ディレクター。文化服装学院スタイリスト科卒業後、スタイリストオフィスに入社。その後、大手アパレル会社のPR部門にて国内外のブランドのPRを担当。独立し、アタッシュ・ド・プレスとして複数のブランドを担当しながら、2010年に自身のブランド「KO」を立ち上げている。現在はnanadecorにて「KO」ラインを、千駄ヶ谷のショップ「Pili」のディレクションも手がける。instagram:@kamisan_sun

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撮影/目黒智子 取材・文/河野真理子
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