「週刊少年マガジン」で連載中の「ランウェイで笑って」は、タイトルから推測できる通り、ファッションを舞台にした漫画です。「少年漫画でファッション?」と思われそうですが、実はこれ、さまざまな立場にいる人たちが、ファッションの世界で目標に向かって一途に走り続ける、アツい青春物語なのです。
1月からはアニメが放送中。少年漫画の枠組みを超えて、多くのファンの心をつかむこの漫画の魅力に迫ります!
「ランウェイで笑って」の一話目を飾るのは、ある女子高生・藤戸千雪の物語。彼女の夢は、パリコレモデルになること。小さい頃から容姿に恵まれ、モデル事務所「ミルネージュ」や同名のアパレルブランドを展開する父に持ち、周囲から将来を大いに期待されていました。しかし、高校3年生になっても身長は10歳の時の158cmのまま。父に「その身長でパリコレは無理」と宣告されても、「夢は叶うものではなく、叶えるもの」と夢を諦めていません。
そんなある日、同じクラスで存在感の薄い都村育人と言葉を交わします。育人は小さい頃から服を作るのが大好きで、本当はファッションデザイナーを夢見ています。でも、病気の母を抱え、3人の妹の将来を考えると、家計を支えるためにも卒業後はお金のかかる進学ではなく、就職するしかないと決断。そんな育人に、デザイン業界でファッション系の専門学校や大学を卒業せずに高卒でデザイナーになるなんて「無理」と言い放つ千雪ですが、そこであることに気づきます。自分が低身長を理由に、周りの人から「パリコレモデルは無理」と言われ続けていても諦めずにいるのに、育人にも同じことを言い放ってしまったことに。
その後悔がきっかけで、「諦めないで、やれることは全部やってやる!」と迷いを吹っ切ることができた千雪は、育人に「わたしが一番魅力的に見える服がほしい!!」と無茶振りして、千雪が着なくなった服を元にして一着の服を作ってもらいます。そして千雪は、今まで何度も落とされ続けてきた「ミルネージュ」のオーディションにその服を着て挑んだところ、合格することができたのです。
一方で育人は、作った服を見た千雪の父に「才能がある」と評価されます。しかし、育人はファッションの基本すら学んだことがない高校3年生であったため、千雪の父に直談判してみたものの、「ミルネージュ」でデザイナーとして雇ってもらうという希望は叶いませんでした。それでも千雪の父は育人に可能性を感じ、ファッションブランド「HAZIME YANAGIDA」を主宰する若手デザイナー・柳田一に「面白い人材がいる」と育人を紹介。こうして育人もプロのデザイナーを目指すきっかけを掴むことになるのです。
千雪は、「私でもパリコレに出るのは(君でもデザイナーになるのは)無理じゃないって、わたしのためにも証明したいんだよ……」と祈るように育人に言い、育人の作った服を身にまとって、パリコレモデルを目指すための行動に移します。
育人も、自分が作った服を着こなして存在感を放つ千雪の写真を見て心を突き動かされ、プロのファッションデザイナーになって、再びモデルの千雪に自分の服を着てもらうという目標を定め、一度は諦めかけた夢を「無理」と決めつけずに、一歩を踏み出しはじめます。
モデルとしてのカリスマ性を秘めていても、身長が足りないという圧倒的に不利な条件を持つ千雪と、ファッションデザイナーとしての才能を持っていながら経済的な理由で進学できない育人は、本人の意志や気持ちだけではどうすることもできないハンディを背負っているという共通点があります。それでも二人はお互いを刺激しあい、夢に向かって壁を乗り越えようとしていきます。このストーリー展開は、まさに少年漫画の王道!
また、この物語の魅力は、不可能を可能にしようとする千雪と育人の青春奮闘劇だけではありません。ファッション業界を舞台にしているだけあって、その裏側が丁寧に描かれています。ファッションデザイナーがどのように服を作って発表しているのか、どういう過程でミラノ、パリ、ニューヨーク、ロンドンのコレクションに出られるようになるのか、ランウェイを歩くモデルはどのようにして上を目指していくのか、といったことを垣間見ることができる面白さがあります。物語の随所に用語解説があり、今までなんとなくわかったつもりでいたファッション用語などを学ぶこともできます。
また、デザイナーが頭の中で創り出した服のイメージを、どんな素材を選び、どうパターンに起こして具現化するかといった過程をこの物語を通して追うことによって、一着の服の裏には多くの専門的な技術を持つ人たちがいることに気付かされます。そして、彼らの努力や苦悩、夢があるからこそ、人々を魅了する服が形作られていくことを知ることになるのです。
少年漫画なんて、と食わず嫌いはもったいない! ファッション業界で奮闘する若者たちの青春端であり、ファッション業界についても詳しくなれるお仕事漫画としての面白さも兼ね備えた物語です。ファッション好きの人はもちろんですが、服や装うことにあまりこだわりがない人にこそ読んでもらいですし、きっと服を身につけることが、読む前よりもわくわくする行為になると思うのです。
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『ランウェイで笑って(1)』
著者 猪ノ谷言葉 講談社
身長は、158cmから伸びなかった・・・。藤戸千雪の夢は「パリ・コレ」モデル。モデルとして致命的な低身長ゆえに、周囲は「諦めろ」と言うが、千雪は折れない。そんなとき、千雪はクラスの貧乏男子・都村育人の諦めきれない夢「ファッションデザイナー」を「無理でしょ」と切ってしまい・・・!?「叶わない」宣告をされても、それでも一途に夢を追って走る2人の物語。
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