どこまで知ってる? プログラミング教育


2020年から、小学校で必修化されるプログラミング教育。
新年度をひかえ、ニュースなどでさかんに取り上げられていますが、具体的には何をするのかご存じでしょうか?
ここでは、幼小一貫教育の「講談社こども教室」で教材開発と講師をつとめ、幼児からのプログラミング教育にくわしい廣野清美先生にお話をうかがい、プログラミング教育の疑問にこたえる記事を3回連載でお送りします。


1回目▼プログラミング教育って? 小学校必修化の本当の目的とは
2回目▼幼児からプログラミング教育は必要? おすすめ教材と大切なのは「対話」
3回目▼プログラミング教育でどうなる? これからの社会

 

第1回目は、プログラミング教育の基礎知識についてです。


プログラミング教育って?


「プログラミング教育」と聞くと、パソコンを使い、プログラミング言語を覚えて、実際にプログラミング(コーディング)をする授業……を思い浮かべる読者も多いでしょう。しかし、このたびの「プログラミング教育」必修化の目的は、どうやらちょっと違うようです。
 

廣野先生、「プログラミング教育」の目的って、なんですか?

(廣野先生)「プログラミング教育」は「プログラミング的思考」をやしなうための教育です。「プログラミング的思考」とは、コンピュータやプログラミングの考え方にもとづいた、「問題解決型」の思考のことなんですよ。

 

私たちは、コンピューターとインターネットが生活の隅々にまで行き渡った社会を生きています。さらにAIの発達により、これからは、人間は人間にしか出来ない仕事をして、コンピューターにできる仕事はコンピューターにさせることが大事になります。
そんな新しい時代を生き抜くこれからの子どもたちが、将来どのような進路を選択しどのような仕事に就くとしても、普遍的に求められる力が「プログラミング的思考」です。

全員がプログラムを書けるようになってコンピューターを使いこなそう、全員プログラマーになろう、という教育ではありません。「物事を順序立てて考えて、問題を解決する力」を身につけるための教育なのです。
「プログラミング的思考」(英語では Computational Thinking )は、 かかえている課題の答えに到達するために、いくつもの一連のステップを実行する、「問題解決のプロセス」のことです。
文科省の「小学校のプログラミング教育の手引き」には以下のように定義されています。

◆情報技術を効果的に活用しながら、論理的・創造的に思考し課題を発見・解決していくために、「プログラミング的思考」が必要

◆「プログラミング的思考」は、 将来どのような進路を選択しどのような職業に就くとしても、普遍的に求められる力

◆「プログラミング的思考」とは、「自分が意図する一連の活動を実現するために、どのような動きの組合せが必要であり、一つ一つの動きに対応した記号を、どのように組み合わせたらいいのか、記号の組合せをどのように改善していけば、より意図した活動に近づくのか、といったことを論理的に考えていく力」


このように、「プログラミング教育」とは、具体的に「プログラミングをする」ための勉強ではなく、「ものごとを順序だてて考えて、問題を解決する力」を身につけるための教育なのです。
 

「プログラミング的思考」ってなんだか難しそうだし、具体的にはどんなものかイメージがつかめません……。

(廣野先生)「プログラミング的思考」はいろんな場面で応用できます。たとえば、給食、水泳、宿題、など、日常の行動も「プログラミング的思考」で表現することができます。

(講談社こども教室国語算数コース 教材より引用)

日常的な行動も、このようにプログラミング的思考で表現すると、どんな動きの組み合わせが必要なのか、より理解しやすくなります。


学校での「プログラミング教育」


2020年から小学校で必修化される「プログラミング教育」。授業では、「国語」や「算数」と同じように「プログラミング」という教科ができるのでしょうか?

「プログラミング」って、教科書があるのですか? タブレットPCやノートPCを買わなきゃダメ?

(廣野先生)「国語」や「算数」などの教科とおなじように「プログラミング」という教科ができるのではありません。専門の教科ではなく、算数・理科をはじめ、国語や総合、生活などさまざまな教科で「プログラミング的思考」を取り入れるのが、今回の必修化なのです。

「世間では、プログラミング教育という言葉が先走りしているように感じます」と心配する廣野先生。
そもそも、「プログラミング教育」はプログラミングの具体的な方法を学ぶのが目的ではなく、「プログラミング的思考」をやしなう事が目的です。ですから、一般家庭でも「プログラミング教育必修化!」と、あわてて新たにPCやタブレットを買いそろえる必要はないのです。(ただし、2020年度からの教科書には、「二次元コード」が掲載されているものがあります。それらを家庭でも見るために、デジタル機器が必要になる場合もあります)
2020年度版の教科書では、プログラミング的思考をやしなうページ(アンプラグドでプログラミング的に思考する活動)のほか、デジタルコンテンツを活用しプログラミングを体験できるようになっているものなどがあります。
たとえば、5年生の算数では、「プログラミングで正多角形を作図する」などの学習が取り入れられています。

(例)

 

 


もっと詳しく! プログラミング的思考

実際に 「プログラミング的思考」を実践するにはどうしたらいいのですか?

(廣野先生)「プログラミング的思考」で大切なのは「アルゴリズム(問題・課題を解決するための手順)」です。ある目的を達成するための課題をみつけ、その課題を解決するための手順=アルゴリズムを考える事こそが、「プログラミング的思考」の要です。

アルゴリズム(手順)を組み立てる基本は、

 

の3つです。
「アルゴリズム」は、数学、言語、さらに生活のなかの様々な場面で、問題や課題を解くための表現として広く応用できます。
一例として、積み木で考える「プログラミング的思考」の問題をみてみましょう。

(講談社こども教室国語算数コース 教材より引用)


そしてこちらは、廣野先生が監修した「はじめてのプログラミングえほん」の1ページです。

 

「ミライカー」を「ゴール」にたどり着かせるためには、どうすればいいのか?を大人に読み聞かせてもらいながら、一緒に話しあい考えることで、プログラミング的思考の基礎が身につくしくみになっています。
こういった「あそびながら学べる」ツールを活用すれば、小さいお子さんでも楽しく、そしてプログラミングに苦手意識のある大人でも気軽にチャレンジできますね。

次回の第二回目は、幼児から学べる「プログラミング的思考」についての記事をお送りします。どうぞお楽しみに!


試し読みをぜひチェック!
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はじめてのプログラミングえほん

★対象年齢/親子で3歳以上

NII 国立情報学研究所 三浦謙一名誉教授
青山学院大学社会情報学部 松澤芳昭准教授 
推薦!
STEP、TURN RIGHT、TURN LEFTの3つのコマンドだけで、プログラミングを楽しく学べる絵本が登場! 「ミライカー」をプログラミングして、スタートからゴールへうまく導けるかな? コマンドを打ち込む付属の電子ユニットからは、いろいろな音声が鳴ります。プログラミング的思考に親しんでいく、きっかけにぴったりです。

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えほんにのっているプログラミングがおわったら、
さらに10問のプログラミングにチャレンジできます。
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国立情報学研究所オープンハウス2020
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2020年6月13日(土)開催予定 (参加には事前申し込みが必要です)


場所:国立情報学研究所(学術総合センター)
(東京都千代田区一ツ橋2-1-2)

お問い合わせ
国立情報学研究所オープンハウス事務局
メール:oh@nii.ac.jp
https://www.nii.ac.jp/openhouse/(4月中旬公開予定)

*新型コロナウイルス感染拡大のため開催を見送る場合がございます

廣野清美(ひろの・きよみ)
静岡大学教育学部を卒業。小学校教師を務めたのち、講談社パルへ入社。小学生用教材を企画開発出版。子供だけでなく、保護者、講師等の指導にも当たる。JAXA宇宙教育リーダー資格取得。『はじめてのプログラミングえほん』の監修をつとめるほか、パソコンなどの電子機器等を使わない「アンプラグドプログラミング」の講座を、NHK文化センターで開催。そのほか、国立情報学研究所でコンピューターサイエンスパークや、こども霞ヶ関見学デー(文科省)にて講座を実施。私生活では2女の母。長女は慶応義塾大学卒、次女は東京大学卒。

構成/北澤智子