春は新入生、新社会人にとっては新しい環境がスタートする大切な季節。もちろん、それ以外の人にとっても、年度初めは新たな課題・問題に取り組む重要なタイミングです。
この大切な節目の時期に、目の前に立ちはだかる大きな壁=「悩み」をいかに克服するか。
今回ご紹介する本は、一筋縄ではいかない「悩みとの戦い方」を教えてくれる、学生も社会人も必見のサバイバルブックです。
この残酷な世界を、丸腰で生きることを勇気とは呼ばない。
それは、単なる無謀というものだ。
まず我々は、生き抜くための「武器」を持たなければならない。
『進撃の相談室』は、こんな言葉で始まります。
「進撃」といえば、もちろんあの大ヒット漫画『進撃の巨人』の事ですが、この本のタイトルは『進撃の相談室』……いったいどんな内容なんでしょう。
「戦略」という武器
作者は、「戦略」という武器で、様々な企業や団体の悩みを解決する「クリエーティブ・ストラテジスト」の工藤拓真さん。
グローバル企業のブランド開発、老舗企業の事業再生戦略、官民協同の街づくり事業、スタートアップ上場前後のブランディング支援など、数々のプロジェクトを手掛けてきた、凄腕の戦略マンです。
「以前から、『進撃の巨人』という作品に対して、特別な思いを抱いていました。」
という工藤さんは、
「この物語は、どんな分厚い戦略の専門書にも負けない、実践的な問題解決のアイデアにあふれた「戦略思考の教科書」なのです」
と、戦略のプロとして「進撃」に惜しみない賛辞をおくっています。
そんな工藤さんが『進撃の巨人』を原作に、「問題解決の武器=戦略」を誰もが実践できるようわかりやすく解説したのが、この『進撃の相談室』というわけです。
7つの「戦略スイッチ」
『進撃の巨人』で調査兵団が巨人と戦うとき、そこにだれかが用意した答えなどありません。もしあったとしても、刻々と変わる戦況の中で、そんなもの、すぐに使いものにならなくなってしまいます。それは、現実世界における私たちの悩みも同じです。
では、「悩み」という巨人を倒すための武器=「戦略」とは、どのようなものなのでしょうか。
古くは孫武(中国・春秋時代の兵法家。生没年不詳)や、ナポレオン・ボナパルト(十九世紀フランスの皇帝。一七六九〜一八二一年)など、世界史に名を残すような人物はみな、戦略という武器を使いこなしてきた。
長い間、争いごとに使われてきた戦略論は、二十世紀以降、主戦場をビジネスの世界に変えて、会社が抱えるさまざまな悩みを駆逐するための武器となった。
『進撃の相談室「 13 歳からの戦略論」』より
戦略というものは、目には見えません。
『進撃の相談室』では、そんな戦略の構造を明らかにするために、7つのキーワードを掲げています。
モヤモヤとした「悩み」を、解決可能な「問題」に変える変換器、それが「7つの戦略スイッチ」です。
この本では、進撃ファンにはおなじみの名場面、名台詞を例として、悩みと向き合うための思考の型=戦略論の基本をわかりやすく解説しています。くわしくは、ぜひ本をご覧いただきたいのですが、この記事では簡単に、『進撃の相談室』から一部抜粋して、そのエッセンスをご紹介します。
【戦略スイッチ①目的(ゴール)】 迷える君へ
⇒自分自身はどうしたいのか。目的(ゴール)を明確に!
「最終的にこうなりたい」という願いがはっきりしていれば、やる気(モチベーション)が湧き出て、難題にも挑めるようになるはず!
【戦略スイッチ②標的(ターゲット)】 的外れな君へ
⇒問題解決のカギを握るのはダレ? 標的(ターゲット)を見つけだそう
目的を達成するには、誰にアプローチするべきかを見つけ出すことが重要。
【戦略スイッチ③本音(マインド)ビフォー・アフター】 人の気持ちが読めない君へ
⇒標的(ターゲット)の本音(マインド)を見つけ出そう
相手は何を望んでいるのか?建前だけではなく、「本音」を見抜くことが、人を動かすカギになる。
【戦略スイッチ④障壁(バリア)】 ただ立ち尽くす君へ
⇒理想と現実のギャップ、その正体=障壁(バリア)を乗り越えよう!
問題解決を阻む原因を見極めれば、無謀なチャレンジを続けるのではなく、乗り越えられる壁に置き換えられるはず。
【戦略スイッチ⑤材料(アイテム)】 武器がないと嘆く君へ
⇒材料(アイテム)とは、ビジネスでいう「資源(リソース)」のこと。
問題と向き合うための材料をゲットしよう!
【戦略スイッチ⑥作戦(ディレクション)】 人を動かせない君へ
⇒作戦(ディレクション)は、悩みを駆逐するというプロジェクト全体をつかさどる総監督。
行動のよりどころとなる大方針こそが「作戦」。優れた作戦は、一度に数万の敵をなぎ倒すことだってできるのです。
【戦略スイッチ⑦実行(アクション)】 結局なにもやらない君へ
⇒実行(アクション)できなければ、なにも変わらない。
さまざまな選択肢の中から「本当にやるべきこと」を決めよう!
以上が悩みを解決可能な問題に変えるための「7つの戦略スイッチ」です。
進撃ファンにはおなじみの名場面、名台詞を例として、悩みと向き合うための思考の型=戦略論の基本を簡単にご説明してみましたが、「戦略思考」がどんなものか、そのエッセンスが伝わりましたでしょうか。
この本では、ここでご紹介したほかにも、たくさんの進撃エピソードをもとに「戦略思考の基本のキ」をわかりやすく解説しています。
「目的(ゴール)」「標的(ターゲット)」「障壁(バリア)」「材料(アイテム)」等といったキーワードを道しるべに、「戦略思考」を実践して、あなたの抱える「悩み」を駆逐していきましょう!
リヴァイ兵士長の名台詞、「悔いが残らない方を、自分で選べ」。自分自身の悩みと向き合って、悔いが残らない生き方ができるようになりたいですね!
試し読みをぜひチェック!
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『進撃の相談室 13歳からの「戦略論」』
工藤拓真:著 諫山創:原作
私たちが生きる現実には、巨人や壁は見えない。しかし、私たちはとっくに気づいている。現実はフィクションと同じぐらい、いやフィクション以上に、残酷だということを。
どんな人でも、たとえ幸せそうに見える人だって、「私だけの巨人や壁」が作りだす「私だけの悩み」に苦しみながら、生きている。では、「私だけの悩み」を解決する術は、いったい誰が見つけてくれるのか。
本書は、『進撃の巨人』を舞台に、一筋縄ではいかない「私だけの悩みとの戦い方」を、エレンやリヴァイたちとともに習得するサバイバルブックである。
では、さっそく調査兵団の仲間たちとともに、悩みを駆逐する闘いを始めよう。
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ⓒTakuma Kudo/Hajime Isayama/講談社
工藤拓真(くどうたくま)
電通 クリエーティブ・ストラテジスト。大分県大分市生まれ。早稲田大学法学部卒。電通で広告制作・PR に従事した後、クリエーティブ・ブティックに移籍。グローバル企業のブランド開発、老舗企業の事業再生戦略、官民協同の街づくり事業、スタートアップ上場前後のブランディング支援などを担当。2018 年11 月より電通に帰任し、「クリエーティブ・ストラテジスト」として活動。大学非常勤講師、日本広告学会クリエーティブ委員会委員、NewsPicks アカデミアプロフェッサーなど兼任。 自著に『勇者に学ぶ 難題に立ち向かう「戦略思考」』(日本経済新聞出版社)『進撃の相談室 13歳からの「戦略論」』(講談社)がある。