和食は、しょうゆに砂糖、酒、みりんなど、複数の調味料を組み合わせて味を決めます。つまり、塩やしょうゆだけで味付けが完了することは、あまり多くありません。でもフレンチは、基本、塩だけで味を決めます。和食のように、しょうゆを増やしたら、みりんも増やしてなどと複雑に考える必要がないので、とてもシンプルです。自分がちょうどいいと思える味まで、塩を加えればいい。塩だけで味付けが完了する。そう知ると気がラクになりませんか? フレンチは、和食よりわかりやすいんです。フレンチはラクと私が考える理由はそこにあります。

塩には、味を付けるだけでなく、素材のうまみを引き出す力があります。最後にまとめて加えるのではなく、肉や魚、そして野菜のうまみを引き出すように、段階的に塩をすることが料理をおいしくするコツです。

ラタトゥイユを例にとると、最初に玉ねぎを炒めますが、炒めるときに、塩をひとふり。そして玉ねぎがしんなり汗をかき、少し色づくまで炒めたら、残りの野菜を加えて、さらにひとふり。この塩で野菜の水分を出させ、ゆっくり炒めてうまみを凝縮させます。野菜に油が回ったらすぐにトマト缶詰を入れて煮る人も多いようですが、塩を加えてしっかり炒めることで、おいしさが変わってきます。逆にトマトを入れてからはさっと煮るだけでOK。そして味見し、足りなければ、最後の塩で完成です。

 

《タサン志麻さんのラタトゥイユのレシピ》


塩でしっかりうまみや甘みを引き出すので、 野菜だけなのに、ハッとするおいしさ!

 材料(2〜3人分)
玉ねぎ…1個
なす…2本
ズッキーニ…1~2本
パプリカ(赤・黄)…各1個
トマト缶詰(400㎖)…1個
にんにく…1かけ
オリーブオイル…適量
塩、こしょう…各適量
タイム、ローリエ(あれば)…各適量

 

 作り方 
① 鍋にオリーブオイルとつぶしたにんにくを入れ、香りを引き出すように熱する。玉ねぎをみじん切りにして加え、塩をふってじっくり炒める*。その間に、なす、ズッキーニ、パプリカを1~1.5㎝角に切り、切った順に鍋に加えて炒める。鍋に野菜がはりつくようなら途中オリーブオイルを加える。塩をふって炒め、全体がくったりして、引き出された野菜の水分が飛びきるまで炒める。
*炒めるというより、ときどき混ぜる程度で大丈夫。その間に次の野菜を切ると効率がよい。

②トマト缶詰を加え、実をつぶす。水100~200㎖で缶の内側をすすいでから、その水、タイム、ローリエを加えて弱火で煮込む。全体にトマトがなじんだらOK。味をみて足りなければ塩、こしょうで味をととのえる。