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【失敗しないベランダ菜園】6月からでも間に合う野菜といい苗の選び方

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――植えたらあとは毎日水やりをしていけばいいですか?

藤田「水は毎日やる必要がない場合もあります。土が乾いていたら水をたっぷりやる。そして土が乾くまではやらないことです。根っこというのは水を吸うだけじゃなくて、空気も吸わなければなりません。空気を吸うには土が乾いてないと吸えない。なので、土が濡れている状況と乾いている状況が交互に来るというのがプランター栽培で重要な栽培状況です。乾く時間も大切なんですよ」

 

藤田「あと、苗を植えたあとは定期的に肥料を足していく必要があります。最初は培養土の栄養があるのでいいのですが、徐々に土に栄養がなくなってくるので補給してあげなくてはいけません。

肥料には3種類ありまして、まずは液体肥料。ハイポネックスというものがあるのですが、これを水で500倍に薄めて、水やりのときに撒くという方法。植えた1週間後から1週間に1回のペースであげるとよいです。

次が化学肥料や有機肥料。これはプランターに対して軽く一握り(約10〜20g)を2週間に1回、土の表面にパラパラと置いていく感じになります。

最後に『マグアンプK』という肥料を30〜40gほど土に混ぜるという方法があります。これはゆっくりと効果が持続する肥料で、最初の植え付けの際にあげたらもう追肥の必要はありません」

――プランターはどんな場所に置いておくのがいいですか?

藤田「野菜は全体的に日当たりを好みます。なので、ベランダの日当たりのいい場所に出しておいてください。もし日陰になってしまう場合は台などに乗せて高さを上げて、日が届くところまでプランターを高くすると日が当たりやすくなります」

プランターを乗せる棚もホームセンターなどで売っています

――雨の日もそのままにしておいて大丈夫ですか?

藤田「基本的に雨は大丈夫なんですが、たとえばトマトの実に雨が当たると亀裂が入ってしまうなどのトラブルも出てきます。ベランダは大体雨がしのげる屋根がついていると思いますので、ベランダで育てる分にはそこまで気を使わなくていいと思います」

POINT・夏野菜の苗を植えるには中型(横30cm×長さ50〜60cm×深さ30cm)のプランターがよい
・まずは「培養土」を買ってきてプランターに入れ、そこに苗を植える
・プランターは日当たりの良い場所に置き、土が乾いてきたら水をたっぷりあげる
・植えて1週間後くらいから追肥をする
 

【番外編】小さなプランターでもOKな野菜


――ベランダがそこまで広くない方のために、省スペースで育てられて、かつ育てやすい野菜を教えてください。

 

藤田「プランターで作るとしたら小松菜は割とつくりやすいです。種から植えても30日で収穫できるんですよ。これなら幅20cm×長さ60cm×深さ20cmくらいの小さめのプランターでも栽培できます。ただ虫がつきやすいのでその対策のひと手間だけかけてもらえたら。

最初にプランターに土を入れて、種を撒きます。土をかぶせて水を撒いて、プランターの上にトンネルを作るんです。その上に防虫ネットをかけるとまったく虫が入りません。このひと手間が必要なんですけど、成長も早くてとてもいい野菜です」

こうしたネットをプランターごとにかけてあげると虫の害を防げる

藤田「今だったら植えたら3日か4日で双葉が出てきますから、それだけでも感動モノですよね。芽が出てきたら、3cmくらいの間隔になるように間引きます。この間引いた芽もお味噌汁の具とか、サラダで食べられます」

――芽を食べられるんですね!?

藤田「食べられます。発芽した小松菜の菜っ葉はカイワレ菜といってよく食べられていますよ。そして間引いたあとは追肥をしまして、水をあげていけば、だいたい30日くらいで小松菜がプランターにたくさんできます。幅20cm×長さ60cm×深さ20cmのプランターに2列植えて、大体5〜6株くらい」

――結構とれるんですね!

藤田「はい、買えば500〜600円はしますよね。それを自分で育てられるというのは喜びもひとしおです」

――本当ですね。今日聞いたお話を踏まえて早速苗を買って植えたいと思います! あ、最後に、今年植えた夏野菜は秋に枯れますよね? そのあとはどうしたらいいですか?

藤田「根っこを抜いて、茎を切って、燃えるゴミとして出します。残った土は再利用できるので、土をふるいにかけて余分な根っこなどを取り除き、ゴミ袋などに移しましょう。そこに米ぬかや肥料を少々、そして水をたっぷり入れて、少しかきまぜて封をして置いておきます。外から光がたくさん当たるようにすると、袋の中の温度が50〜60度まで上がるんですよ。そうすると土が消毒されてまた使うことができます。1カ月くらい寝かせると、今度は秋に苗つけをする野菜(秋野菜・冬野菜)の時期がやってくるので、また楽しむことができます」

――土は再利用できるんですね! 少し休ませたら秋にまた植えられる野菜があると。これは1年中楽しめる趣味ですね。

藤田「そうなんです。最初、道具を全部揃えるまでは少しお金がかかりますけど、こうやって再利用したり長く楽しめるものも多いので、楽しんでやってもらえたらいいと思います。土をいじるのって、とても豊かな趣味だと思いますよ」

藤田 智

恵泉女学園大学人間社会学部の教授として学生たちに野菜園芸学、植物育種学、農業教育学などを指導。NHK「趣味の園芸 やさいの時間」「ごごナマ」日本テレビ「世界一受けたい授業」などテレビラジオに出演する他、園芸関係の本を130冊以上執筆。家庭菜園や市民農園の指導や普及活動などを通じて、野菜作りの楽しさをより多くの人々に知ってもらうための活動や、「日本の原風景」保全活動にも取り組んでいる。

取材・文/宮島麻衣
構成/片岡千晶(編集部)
 


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