小さな黒ねこルドルフの成長を描く、不朽の名作『ルドルフとイッパイアッテナ』。1987年の刊行以来、累計100万部のロングセラーとなり、世代を超えて愛されてきました。
ルドルフがたくましいノラねこイッパイアッテナに出会い、生きるすべを学んでいく物語は、深い人生哲学とユーモアにあふれています。とくに、ルドルフを教え導くメンター的な存在・イッパイアッテナの「粋なセリフ」は、大人の心にも響く名言ぞろいです。
新しい環境に否応なく放り込まれ、戸惑いながらも成長するルドルフの冒険は、今だからこそ読みたい魅力がいっぱい。
この記事では、そんな『ルドルフとイッパイアッテナ』シリーズ、そして、イッパイアッテナの名言についてご紹介します。
知恵と勇気と友情、そして、出会いと別れの物語
魚屋に追われ飛び乗った長距離トラックで、岐阜から東京に運ばれてしまった子ねこのルドルフは、大きなボスねこに出会います。
ルドルフがボスねこに名前を訊ねると、「おれの名前はいっぱいあってな……。」と答えたため、ルドルフはボスねこの名前が「イッパイアッテナ」だと勘違い! そこから、ルドルフと「イッパイアッテナ」の生活が始まります。
町のボスねこイッパイアッテナは、頼もしくて男前。セリフのひとつひとつがカッコよく、教養と説得力にあふれています。ちょっと強面なところもありますが、根は優しいノラねこであるイッパイアッテナ。彼は、ひとりぼっちのルドルフに生きていくすべを教えますが、実は何か秘密があるようで……。
この作品は、主人公ルドルフの「成長」とともに、「教養」もテーマの一つになっているのが見どころです。ルドルフの帰郷をめぐるドラマと並行して、「教養」あるねこイッパイアッテナの秘密とその過去が徐々に明かされていくストーリーは、バツグンのおもしろさ!
そこで、イッパイアッテナの教養がかいま見える名言をいくつかご紹介します。
「なんていわれたっていいじゃないか。黒ねこがえんぎが悪いなんて迷信だ。そんなことをいまどき信じてるのは、教養がねえしょうこさ。」
黒ねこは縁起が悪いと嫌がられてしまったルドルフに、イッパイアッテナがかけた言葉です。
根拠もなく、見た目だけで相手を判断することは愚かである、という事を人間よりもよくわかっているイッパイアッテナは、だからこそ「教養」を身につける大切さをルドルフに伝えようとしました。
「黒ねこ」であるルドルフの姿を肯定し、周りの声を気にせず堂々としていればいいんだよ、という励ましも感じられる、イッパイアッテナらしい言い回しです。
「絶望はおろか者の答えともいうぞ」
故郷が「岐阜」だと判明したものの、自力で帰るのはあまりにも困難だとわかったルドルフは「こんなことなら、何も知らなかったほうが、希望も持たないから幸せだったんじゃないだろうか」と嘆きます。そんな彼にイッパイアッテナがかけた言葉がこちら。あきらめないことの大切さを説いた、印象的なセリフです。
きっとイッパイアッテナは、イギリスの政治家ベンジャミン・ディズレーリの「絶望とは愚者の結論である」という言葉を知っていて、このセリフを言ったのではないでしょうか。イッパイアッテナは、ルドルフの名前の由来が「ハプスブルク家のルドルフ1世」だとすぐに言い当てるほどの博識ですから、このようなセリフもとっさに出てくるのでしょう。ねこながら、あっぱれな教養の深さです。
「できないやつをばかにするなんて、最低のねこのすることだ。教養のあるねこのやるこっちゃねえ」
イッパイアッテナに文字の読み書きを教わったルドルフは、字が読めないねこブッチーをふざけてからかいます。それを知ったイッパイアッテナは「ああいうことをしてはいけない。おれは、ああいうことをさせるために、おまえに字を教えたんじゃないからな。」と諫めました。
自分が優位にあることを利用して、相手を貶める行為をしてはならない、真に教養のあるものは、そのような行いはしないものだ、という事をストレートに伝えるセリフです。
『ルドルフとイッパイアッテナ』には、このほかにも、心に刺さる名台詞がたくさんあります。イッパイアッテナの教養あふれる言葉は、大人の読者にとっても心に響く人生哲学が詰まっているのです。
名作「ルドルフとイッパイアッテナ」シリーズを初めて読む人はもちろん、「なつかしい!」という人も再読してみると、新しい発見があるかもしれません。
『ルドルフとイッパイアッテナ』は、2016年にフル3DCGアニメーション映画化もされ、主人公のルドルフを井上真央さん、イッパイアッテナを鈴木亮平さんが声優として演じています。映画は、DVD・Blu-rayなどのパッケージ版の他に、Huluでも配信中。フワフワの毛並みや豊かな表情、ねこらしい仕草がリアルに表現されたルドルフとイッパイアッテナの映像は、かわいさいっぱいですよ!本と一緒に、ぜひご覧になってくださいね。
シリーズ最新作
ルドルフとイッパイアッテナの活躍をえがいたシリーズは、1作目の『ルドルフとイッパイアッテナ』、2作目の『ルドルフともだちひとりだち』、そして3作目の『ルドルフといくねこくるねこ』、4作目『ルドルフとスノーホワイト』、5作目『ルドルフとノラねこブッチー』、と続きます。
2作目では、ノラねこと飼いねこの生き方について、人間や友だちについて、立場の違いになやみながらも、やがて自分なりの答えを見つけだしていくルドルフの姿がえがかれます。
3作目では、変わっていく環境のなか、ルドルフとなかまたちそれぞれが自分と向き合い、自分自身を見つめなおすストーリーが語られます。
4作目では、とびきりパワフルなメスねこスノーホワイトが仲間に加わります。
笑いあり、涙あり、決闘ありの痛快物語です。
そして、シリーズ最新作の5作目は、2020年6月に刊行されたばかり。
今まで文字に興味を示したことが一度もなかったブッチーが、文字を習うと言いだし……⁉
ルドルフと仲間たちが、知恵と勇気で苦難を乗り越える冒険物語は、大人も子供も励まされることまちがいなし! ぜひ手に取ってみてください。
試し読みをぜひチェック!
▼横にスワイプしてください▼
『ルドルフとノラねこブッチー』
斉藤洋:作 杉浦範茂:絵
年の瀬もせまったある日、今まで文字に興味を示したことが一度もなかったブッチーが、文字を習おうかなと言いだした。同じ頃、どこかに引っ越しをしてしまったブッチーのもとの飼い主を近所で見かけたと犬のデビルから聞いたルドルフは……。今度はルドルフとブッチーが旅に出る⁉ 教養あるねこ、ルドルフたちの冒険がまた始まる!
Comment