驚くべきことに、子どもたちの10人に1人は発達障害を抱えている可能性が高いとされる今の日本。児童精神科を受診する人数は年々増加し、深刻な医師不足が叫ばれています。漫画『リエゾン ーこどものこころ診療所ー』で描かれるのは、そんな心の障害によって生きづらさを抱えながら暮らす子と親、そして、様々な悩みと向き合う医療現場、教育現場の人々の物語。今回は、特別にその一部をご紹介します。


小児科医を目指す主人公・遠野志保は、研修中の病院の子どもにも慕われる明るい性格。しかし、自他共に認める忘れ物・遅刻の常習犯で、ある日もまんまと朝礼に遅刻。担当研修医の山崎先生に呼び出され激しく叱責されますが、指摘されたのは遅刻のことではなく、志保による患者への処方箋ミスについてでした。

 

大事には至らなかったものの、小児科医としての素養を否定された志保。ヤケ酒を飲みながら思い出したのは、医師を目指すきっかけにもなった、幼い頃に優しく接してくれた近所の小児科医のことでした。自分もあの先生のようになりたいと、涙で濡れた顔で誓います。

 

なんとか小児科の研修を終え、臨床研修を受けることになった志保は、唯一受け入れてくれた児童精神科の病院「佐山クリニック」を訪問。そこで目にしたのは、嫌がる男の子の腕にトイレの水をかける医師・佐山卓の姿でした。
 

 

あまりの衝撃にすかさず佐山先生に飛びかかる志保。しかし、男の子は清潔さに対する強迫観念を持っており、それを取り除くためのれっきとした治療だったことがわかります。佐山先生は、障害を抱える子どもたちを1人でも多く治療するために奮闘する児童精神科医でした。志保の担当研修医・山崎先生から話を聞いていた佐山先生は、謝罪する志保に思いもよらない言葉を投げかけます。

 

発達障害は、日本ではおよそ48万人が診断されていると言われています。幼少期からの育児放棄(ネグレクト)によって心に傷を負う志保も、自身の障害と向き合うことを決意。佐山先生は発達障害を凸凹(でこぼこ)と呼び、「あなただけにぴったりハマる生き方がある」と志保を激励。そこから、佐山クリニックを舞台に様々な親子の物語が繰り広げられます。

ある日の診療で訪ねてきた1組の親子。息子が、離婚した元夫には描いた絵を見せても、自分には決して見せてくれないと悩む母親に対して、佐山先生は「自閉スペクトラム症」の可能性が男の子にあることを告げます。
 

 

うまく描けていないからと描いた絵を破る。「ちょっと」という言葉に対して何分なのかを聞いてくる。母親の回想の中にいる息子は、佐山先生が語る「自閉スペクトラム症」の特徴に当てはまるものでした。

 

描いた絵を決して母親に見せないのは、「うまく描けたら見せてね」という母親の何気ない一言が原因だったことを志保は突き止めます。「うまく描けるまではお母さんには見せてはいけない」、そう勘違いした男の子は、絵の感想を求めに離婚した父親の元を訪れていたのでした。

 

発達障害で絵が好きな子たちは決まって大好きなものを描く、と言う佐山先生。子どもの気持ちをわかってあげられなかったことに涙する母親に、息子が初めて見せてくれたその絵とは――。

親子の温かな心の交流を軸に、発達障害やメンタルヘルスについての知識もやさしく教えてくれる本書。今を生きる子どもたち、そして、身近にいるはずの「生きづらさ」を抱える人々について、理解を深めるための一助となるはずです。
 

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『リエゾン ーこどものこころ診療所ー 』1巻原作:竹村 優作 漫画:ヨンチャン 講談社704円


発達障害を凸凹(でこぼこ)と呼ぶ児童精神科医は、人知れずトラブルを抱える親子に向き合い続ける。純真な子どもたちと、葛藤する親たちの姿に胸打たれる、様々な心のかたちを炙りだす医療漫画。

構成/金澤英恵