冬から春、春から夏へ。コロナ禍にも季節は巡りゆくのだなと、梅雨明けの庭の雑草をむしりながらしみじみした筆者ですが、旅行もレジャーも満喫できない今だからこそ挑戦できることがあるはず、と日々模索中です。そんななか出合った一冊、食文化研究家・北村光世さんの著書『おいしいハーブ暮らし12か月 キッチンガーデン発 元気のレシピ』には、おうち時間を豊かにするためのヒントが!

現在81歳、ハーブを日本の食文化に根付かせた第一人者の北村光世さんは、鎌倉の自邸での庭仕事のようすやハーブの種類や育て方、季節のハーブを使ったアイデアレシピなど、ハーブと共に日々を暮らすことの楽しさを教えてくれます。今回はハーブ初心者にも最適な本書から、秋からでも育てられるハーブや夏のレシピを特別に一部抜粋してご紹介。育ててよし、見てよし、食べてよしのハーブを生活に取り入れたい方は、ぜひ参考にしてみてくださいね。

 

北村光世さん:食文化研究家、ハーブ・オリーブオイル研究家。1939年、京都府生まれ。アメリカ・ミシガン州ホープカレッジ卒業。アメリカ留学時代にハーブと出会い、食文化に関心を広げる。言葉も食べ物もすべてひとつの文化という考え方で、鎌倉の自宅でハーブを育て、ハーブを楽しむ暮らしを実践。特にハーブを日常の料理に活かすことを提唱し、多くの雑誌や著書でハーブの使い方を紹介する。【HP】https://mitsuyokita1939.wixsite.com/slowfastfood

 

料理に欠かせないハーブとして、私がよく使うのはローズマリー、フレッシュローリエ、そしてドライオレガノの3種類です。特にローズマリーとローリエは一年中庭で元気に育っていて、料理に欠かせないハーブです。

そのなかでも一番出番が多いのはローズマリーかもしれません。ローズマリーはある程度育ったら枝先5センチほどを切りとって使うと、その下から新たな枝が出て、だんだんとこんもりと繁っていきます。新芽は柔らかく素揚げにしても美味しいし、オーブン料理なら固めの葉でも大丈夫で、特にじゃがいもとの相性は抜群です。肉や魚介、粉ものにも向きます。

最近、ローズマリーが脳機能改善に役立つとの研究発表があり、嬉しいニュースでした。地中海沿岸地方の健康長寿村に認知症が少ないのも、ローズマリーをとり入れた毎日の食事のおかげかもしれません。

 

【左】ローズマリー:1本植えれば一年中フレッシュが使える。肉類やじゃがいも、粉ものとの相性がよい上、脳機能改善にも役立つという。
【中】ローリエ:月桂樹の葉。ドライが一般的だが、フレッシュな葉は爽やかな香りで、炒め物、煮物などの臭いを消し、美味しくする。手で切り目を入れて使う。
【右】オレガノ:“山の喜び”と呼ばれ、シチリアでは山へ収穫に行く。ドライは青臭さが抜けて甘みがあり薬効も多い。ミイラ作りに使われたとも。

ローリエは一般にはシチューや煮込みに使うドライハーブとして知られていますが、実はフレッシュが持つ新鮮でスパイシーな香りには、誰しもが魅了されます。特にわが家のローリエは絶品。葉の間に肉を挟んだり、魚の下に敷いて焼くこともしばしば。春の新芽は香りが薄いので、葉の色が濃緑色になってから使います。残ったら、乾かして煮込み料理に用います。

私は庭でオレガノも育てていますが、シチリア産のドライオレガノと比べると香りが物足りません。5年前、シチリアを訪ねたとき、野生だと思っていたオレガノが実は栽培種だったことに驚きました。シチリアでは質のよい苗を選んで野生風に育てているとのこと。強い陽光を浴び、すでに半乾きになったオレガノを見て、日本の青々としたオレガノが目に浮かび、納得しました。シチリアのオレガノは収穫前から乾燥が始まるので、余計に香りが強くなるのです。

料理に用いるならオレガノは香りの強いドライがおすすめ。トマトとの相性は抜群で、肉、魚介、野菜料理にも役立ちます。