東日本大震災から10年――。この記事では、コロナで「人々の絆」「再生する力」が問われる今だからこそ読んでほしいマンガ、『柴ばあと豆柴太』をご紹介します。

「あたたかさに涙する」とネットで超話題に!

「ボク、豆柴太。ボクは東北の港町で、お弁当屋を営む柴ばあ(しばばあ)と、二人で暮らしてる。この町では、たくさんのひとが、何かを背負って生きているんだ……」

 

死者1万5899人、行方不明者2529人、国内最大級の被害をもたらした東日本大震災から、もうすぐ10年が経とうとしています。
本作『柴ばあと豆柴太』は、悲しみを背負いながらもゆっくり確実に日々を生きる人々を、子犬の目線から暖かく切なく描くマンガ作品。

号泣必至と話題。震災で行方不明になった家族を探す漫画『柴ばあと豆柴太』_img1
 

震災で行方不明の娘と孫を探す柴ばあと、犬の豆柴太を中心に、人々を救えなかった後悔をかかえる消防士、東北出身の夫を亡くしたまま故郷ではない土地で暮らし続ける女性教師、自分のために同級生が助からなかったという悔恨を抱えた高校生など、様々な人々が登場します。
たくさんの人生が交錯し、前を向く勇気につながっていく群像劇——。
これは、東北の人々の物語というだけでなく、立ち上がり前を向こうとするすべての人に向けた物語なのです。

新人漫画家による緻密な取材で描き出す「東北の今」
 

作者は新人マンガ家のヤマモトヨウコ(@YY0905)さん。
ヤマモトさんがこの作品を描きはじめたのは、夫の転勤がきっかけでした。

転勤先の東北の地で、震災がまだ終わっていないことに触れたヤマモトさんは、「自分の目で見たり聞いたりしたことを伝え届けたい」とマンガ作品『3.11をめぐる物語』を執筆、Twitterで公開しました。
すると、
「東北民、注意! 泣かされます!」
「コロナの今だから身に染みるのかな? 日常の大切さにきづかされれる」
「寝ている息子を抱きしめました。大事なら今抱きしめないと……」
「朝から号泣」

と、作品に心を揺さぶられた人々のコメントが次々と寄せられ、大反響を呼んだのです。

そして、ヤマモトさんが新たに描きはじめた物語が『柴ばあと豆柴太』。

本作は、“3.11”から9年たった「東北の今」を舞台にしたストーリーで、豆柴太を主人公に、東日本に生きる人々の交流や葛藤を描いています。また、シリアスなお話のあいまに描かれる豆柴太の可愛いしぐさや、柴ばあが作るおいしい東北料理の数々が心を和ませてくれます。
震災風景を切り取った4ページのショートストーリーや、かわいくて癒される笑える4コマなど、いろいろな形で、東北の今を楽しめるのも魅力です。

『柴ばあと豆柴太』の登場人物

号泣必至と話題。震災で行方不明になった家族を探す漫画『柴ばあと豆柴太』_img2
 

この作品では子犬の「豆柴太」の目線でストーリーが描かれていきますが、主人公をあえて「犬」にしたワケを、ヤマモトさんはこう語っています。

「取材を重ねて、いろいろな方の話を聞いていて、どの思いもきちんと物語の中に込めていきたい、応援したい……と思った時、それぞれの心の痛みや、かくしごとに、フラットに近づけて、わからないなりに応援しても、そばにいても、おせっかいな上から目線にならない存在……はなんだろう……と思ったら、犬の目線で、震災後を眺めたいと思ったのです。
犬はたぶんニュースもテレビもわからないから、東日本大震災という言葉も知らないだろうけれど、心の痛みには、誰よりも何よりも気づけるんじゃないか……と。」

現代ビジネス「【漫画】5分で勇気が湧く!おばあちゃんを元気にしたい犬がとった「驚きの行動」とは…?」より

号泣必至と話題。震災で行方不明になった家族を探す漫画『柴ばあと豆柴太』_img3
 

「東北出身ではない自分が東日本大震災のことを描いていいのか? という悩みがずっとありました。」と語るヤマモトさん。

しかし、『3.11をめぐる物語』を発表するなかで、読者からもらったたくさんの感謝のことばに背中を押され、連載作品を描きためることができたのだそう。

悲しみを背負いながらゆっくり着実に日々を生きる人々を、豆柴犬の目線から暖かく切なく描いた本作。この物語には、社会が大きく変わっている今だからこそ胸にせまる「日常は永遠じゃない」という想いと、その先の希望が詰まっています。

東日本大震災をきっかけに、家族としてのペットと一緒に避難できる同行避難の指針も出されることになりました。
過去から学ぶ力がわたしたちを、いつでも前に向かわせています。

あなたもぜひ、懸命に生きる人々の再生を描く物語『柴ばあと豆柴太』を読んでみてください。


試し読みをぜひチェック!
▼右にスワイプしてください▼

号泣必至と話題。震災で行方不明になった家族を探す漫画『柴ばあと豆柴太』_img4

『柴ばあと豆柴太①』

ヤマモトヨウコ:作

自分を人間で、柴ばあの孫だと思っている豆柴太。娘と孫を津波で失い、たった一人で遺骨を探している柴ばあ。人々を助けられなかった消防士。小学生のころ、自分のせいで、同級生を死なせてしまった女子高生。みんながそれぞれこの港町で、一生懸命、毎日を生きています。この港町は、あの日のすべての港町です。
「あたたかさに涙する」とネットで超話題。ストーリーと4pと4コマで構成された新しい形のコミックス。

構成/北澤智子