11月18日、以前と変わらない人出でにぎわう東京・渋谷のスクランブル交差点。この日、国内感染者数が初めて2000人を超えた。 写真:西村尚己/アフロ

2020年も残すところ1カ月と少しになりましたが、今年はコロナ危機という歴史的な出来事がありました。当面のパニック的な混乱は回避されましたが、コロナ危機による本当の影響はこれからという指摘もあります。来年以降、日本経済はどうなるのか、そして、私たちの生活にはどのような影響があるのか考察します。

 

リーマンショックや古くはオイルショックなど、私たちは、多くの経済危機を経験してきましたが、今回のコロナ危機は従来の不況とは大きく異なります。リーマンショックは不動産ローンの破綻をきっかけにした金融危機ですし、オイルショックは原油価格の異常な高騰による企業活動の混乱です。

いずれも、何らかの理由で企業活動が一時的に混乱し、取引が停滞あるいは停止したことが不況の原因でしたから、原因がはっきりした段階で企業活動はすぐに元に戻りました。しかしコロナ危機はこれらとは根本的に状況が異なります。感染を避けるため、多くの人が外出を控えた結果、一部の分野を除いて、個人消費が丸ごと消滅してしまいました。これは前代未聞の事態といってよいでしょう。

確かにリーマンショックの時にも解雇が行われ、一部の人は生活に困窮しましたが、全員が外食をやめたり、旅行に行かなくなったわけではありません。経済学的に見ると、個人消費というのはGDP(国内総生産)の約6割を占めており、経済の屋台骨です。これが、ごっそりとなくなったわけですから、経済に対する影響は計り知れません。

GDPの算出には時間がかかるので、どのくらい消費が落ちたのかをGDPベースで知ることができるのはかなり後になってからです。しかしながら、クレジットカードの決済や企業の生産実績などから、おおよその消費動向を知ることは可能です。

緊急事態宣言が発令された4月時点では、一時、国内消費は6割落ち込みましたが、その後、徐々に回復して、現在は2割減という状況になっています。しかし、ここからコロナ前と同水準に戻るのかというとそうはいかないでしょう。

初期と比べると感染に対する恐怖感も少しは軽減されましたし、罹患した場合の致死率も下がっています。しかしながら、これが感染症であることに変わりはありませんから、理屈上、自然にウイルスが消滅するか、ワクチンが開発されない限り、リスクはゼロになりません。

人によってコロナに対する考え方は様々だと思いますが、慎重な人は、コロナが完全に終息しない限り、元の生活には戻らないでしょう。そうした人たちを無理に外出させることはできませんし、強制すべきでもないと思います。ということになると、消費が2割減という状況が今後も続く可能性が高いと判断せざるを得ませんし、多くの専門家がそう認識しています。

では、来年以降も消費2割減という状況が続くと経済はどうなるでしょうか。消費が2割減ると、製品を製造しているメーカーなどもやはり生産を縮小しますから、経済全体に影響が及びます。

 
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