© Moomin Characters ™
 


「わけのわからないことだらけね。でも本当は、なんでもいつも同じようにあると思うほうが、おかしいのかもしれないわ」
ムーミンママは、ひとりごとをいいました。

今年2020年に、誕生以来75周年を迎えた「ムーミン」小説シリーズ(全9巻)には、「ムーミン谷の名言」といわれるフレーズが、あちこちに散りばめられています。

 

ムーミンママのこの独り言は『ムーミン谷の夏まつり』という作品の一節なのですが、コロナウイルスに翻弄され、今まで「当たり前」だったことが、どれもこれもひっくり返ってしまった(そして、混乱しつつも、今の状況を受け入れざるをえない)私たちに、そっと寄り添ってくれると思いませんか?

ムーミン谷へようこそ。
気軽に旅行することが難しい今、いつでも誰でも自由に行けるムーミン谷。そこで出会える、心に響く言葉をいくつかご紹介したいと思います。

「ムーミン」小説シリーズは「子ども向け」の顔をしながら、実は大人も心を大きくゆさぶられる物語です。

例えば、冬眠中に家族の中でひとりだけ目覚めてしまい、未知なる冬の世界で試行錯誤しながら生きるムーミントロールに、トゥーティッキが投げかける言葉がこちら。
 

 

「雪って、つめたいと思うでしょ。だけど、雪でこしらえた家に入ると、あったかいのよ。雪って、白いと思うでしょ。ところがピンク色になることもあれば、青い色になるときもあるわ。どんなものよりやわらかいかと思うと、石よりもかたくなったりするの。ぜったい、なんてものはないのよね」(トゥーティッキ)

(『ムーミン谷の冬』)

 

物事には見えているようで見えていない、思いもよらない面があったりします。
良くも悪くも裏切られる経験を重ねていくのが、もしかしたら「大人になること」なのかもしれませんが、「雪」を「人」や「心」に置きかえると、頑なに思い描いていた「あるべき姿」を、ふっと手放せるような気がしませんか? 

そして、こんな世の中だからこそ、心おだやかに笑顔でいられる時間を大切にしたい。そう思っても、あれもできない、これもだめ……と制限ばかりじゃないの! と落ちこみそうになったときは、ミムラ流に楽しんでみてはいかがでしょう。

 

「橋の上に寝そべって、流れる水をながめるのもいいものだわ。走ったり、赤いブーツでジャブジャブ沼をわたったりするのも気持ちがいいわね。体をまるめて、屋根の上の雨の音に、じっと耳をすますのもいいものよ。たのしくすごすって、ほんとにわけのないことよ」(ミムラ)

 

ところが、自分の心を整えて、うつむいていた顔を上げて歩きだした途端に、あちこちから矢が飛んでくる……なんてことはありませんか?
そして、理不尽な矢をぐさぐさと受けながらも、笑って平気なふりをしていませんか?

朝から晩まで皮肉を浴びせられて、だんだんと体の端のほうから色あせていき、ついには姿が見えなくなってしまった少女・ニンニに向かって、ちびのミイはこう言い放ちます。

 

「あのさ、たたかうってことをおぼえないかぎり、あんたは自分の顔を持てるわけないわ。ほんとよ」(ミイ)

(『ムーミン谷の仲間たち』所収「目に見えない子」)

 


世の中の、声の大きい人たちの物差しに合わない自分に対して後ろめたさを感じてしまい、本当の気持ちを押し殺してしまうこともあるでしょう。

でも、そんな風に自分の心をないがしろに扱っていると「人にやさしく」なんてできる訳もなく、お互いの心はどんどん傷だらけになるばかり。

「たたかう」相手は余計な罪悪感に縛られている自分自身なのかもしれませんね。

心の奥の声をちゃんと聴きながら、自分の道を歩いていきたいと、誰もが思うもの。でも、道に迷ってしまったら、地図をひろげるように「ムーミン」の物語を手に取って、ページをめくってみてください。

きっと、そのときの自分にぴったりの言葉が、とびきりすてきな挿絵と共に見つかるはず。

トーベ・ヤンソンが25年をかけて書いた9冊のムーミンの物語は、出会ったときから生涯ずっと、共に過ごしていける本なのです。

少数派のスウェーデン語系フィンランド人として生まれ、子どもの頃は窮屈な学校生活になじめず、早々に芸術への道を進んだトーベ。
恋愛面では紆余曲折を経て、最終的には同性のパートナーと生涯を共にします。

フィンランドが今よりずっと保守的だった時代に、世間に流されるのではなく、自分自身にとって本当に大切なことは何かを忘れずに生き抜いたのです。

最後に、スナフキンの言葉にこめられた、トーベからのメッセージをあなたに。
 

 

「そうかい。大切なのは、自分のしたいことがなにかを、わかってるってことだよ」(スナフキン)

 

文/畑中 麻紀(翻訳者)
 

 


試し読みをぜひチェック!
▼横にスワイプしてください▼ ※実際の本は左開きです

 

『ムーミン谷の名言シリーズ1
スナフキンのことば

1964年に翻訳出版されてから、ずっと愛され続けてきた「ムーミン」の物語。大人気のキャラクター「ムーミン」は、9巻の物語が原典となっており、今なお人を惹きつけてやみません。大きな魅力のひとつは、キャラクターたちが発する、真実を突く言葉にあります。スナフキンの名言を抜き出して、美しいヤンソンの絵と共に、ぎゅっとまとめた1冊です。ギフトにも最適です。

 

『ムーミン全集[新版]全9巻BOXセット』
大人気キャラクター・ムーミンの原典であるムーミンの小説の翻訳を、初めて大きく改訂。この [新版]完結と、トーベ・ヤンソン最初のムーミン小説『小さなトロールと大きな洪水』の出版から75周年を迎えたことを記念して、新版全9巻を特別なBOXにセットしました。プレゼントに、コレクションに最適なオリジナルBOXセットです。
 

<ムーミンの世界をもっと楽しむ>

ブルガリ イル・チョコラート
ムーミンエディション2020

 

クリスマスの限定チョコレートとして、イタリアの高級宝飾ブランド、ブルガリが手がけるチョコレート『ブルガリ イル・チョコラート ムーミンエディション2020』が販売中です。

ブルガリ イル・チョコラート ムーミンエディション2020 (5個入)
※限定品につき、なくなり次第終了
価格:6500 円(税込)
販売場所:松屋銀座地下1 階 ブルガリ イル・チョコラート
 

フィンランド製のムーミンマグが、
日本にやってきた!

 

ムーミンの生まれた国フィンランドで作られたムーミンマグの限定販売が開始。
ムーミン・コミックスより、『フレンドシップ(Friendship)』、『ラブ(Love)』、『ライフ(Life)』を表現しているイラストをセレクトし、マグに使用。磁器ブランド「VAJA Finland(ワヤ フィンランド)」と協業し、最高のムーミンマグが誕生しました。

商品名:ワヤ フィンランド ムーミンマグ
フレンドシップ / ライフ / ラブ (3 種類)

 ※限定品につき、なくなり次第終了
価格:各5500 円(税込)
販売場所:
スキャンデックスオンラインストア
・スキャンデックス 松屋銀座
TEL:03-3567-1211(大代表)
・スキャンデックス大丸札幌
TEL:011-211-1603