2021年1月20日、アメリカ初の女性の副大統領が誕生します。カマラ・ハリスさん。彼女の母はインドから、父はジャマイカからアメリカに来た移民だといいます。ハリスさんは、初めての黒人副大統領でもあるのです。

2020年のコロナ禍によって、人種差別をはじめさまざまな問題点が浮き彫りになったアメリカ。そんななか、ハリスさんは大きな夢を持っているといいます。それは、「アメリカの人々を一つにする」こと。そのために大統領を支えつつ全力を尽くすと語っています。美しい笑顔で人々に力強く語りかけるハリスさんは、きっと「世界を変える女性」になることでしょう。

世界中には、これまでも「未来への扉を開いたたくさんの女性たち」がいました。どの女性も魅力的で、たくましい力の持ち主です。

 

そんな女性たちを集めた美しい本が出版されました。
『世界のすごい女子伝記 ~未来への扉をひらいた、歴史にのこる50人』(講談社)には、逆境や苦難を乗り越えて芸術や研究、統治や指導者として生き抜いた女性たちの物語がえがかれています。

50人の人生や功績を、写真とハイセンスなイラストを巧みに組み合わせた見開き(2ページ)で読むことができます。懸命に生きた女性たちのストーリーは、大人にも発見があり、子どもたちにも読み聞かせたい内容です。

では、この本に登場する唯一の日本人、夢を追い続けて成し遂げた登山家、田部井淳子さんをご紹介しましょう。

 


世界中の山々の「女性初登頂」を成し遂げた田部井淳子

Illustrations Copyright © Sarah Walsh 2020

登山家、田部井淳子。かつてテレビや雑誌で、初心者向けに山登りの解説をしていたのを覚えている方もいるでしょう。人々を連れて、日本や海外の山登りに行く姿もおなじみ。ちょっぴり福島訛りで話す優しそうな笑顔が魅力的でした。

穏やかな笑顔の向こう側で、田部井淳子はすごい人でした。最高峰エベレストに女性として世界初の登頂成功。その後は、世界初の七大陸最高峰登頂など、さまざまな「女性世界初」を成し遂げていきます。

その記録たるやすさまじいもの。しかも、その間に二人の子どもを産み育て、お琴の先生もしていたのですから。「どこにそんな時間があるの?」と尋ねたくなるほどです。

そんな田部井淳子も、子どもの頃は体が小さく病気がちで運動も苦手だったといいます。転機になったのは、小学4年の夏休みに、担任の先生に山登りに連れていってもらったことでした。

泊りがけで行ったその山は、川に温泉が流れていたりして「世の中には自分の知らないことがいっぱいあるんだ!」と驚きました。そして、「自分の足で一歩一歩登って頂上に立った」という達成感があったのです。

担任の先生は、「夢の多い子になれ」と教えてくれたといいます。田部井淳子は、「自分にもできることがある。もっといろいろな山を知りたい」と夢見るようになりました。この経験が、のちの田部井淳子の人生を導いたといえるでしょう。

のちに世界の山々を登るようになってから、田部井淳子は山の環境を守りつつ、山の魅力をもっと多くの人に知ってもらいたいと考えるようになりました。2011年3月に東日本大震災が起こってからは、福島の高校生たちを連れて富士登山をするようになったのです。

がんで闘病するようになってから、高校生たちを富士山の途中まで送っていったのが、最後の登山となりました。
その後、田部井淳子の遺志は受け継がれ、いまも多くの人に山の楽しみを伝える催しが続けられています。


試し読みをぜひチェック!
▼横にスワイプしてください▼ ※実際の本は左開きです

 

『世界のすごい女子伝記 未来への扉をひらいた、歴史にのこる50人』
キャスリン・ハリガン :文  サラ・ウォルシュ:絵  ふしみみさを:訳

「あなたの未来のために読んでほしい一冊」
世界で19カ国語に翻訳されたベストセラー!
ジャンヌ・ダルクからマララ・ユスフザイまで、時代を越えて人々に勇気と希望をもたらす女性たち50人の新しい伝記絵本。一人1見開き展開のオールカラーページで、心に残るお話が気鋭の英国人イラストレーターによる美しい挿絵で彩られ、楽しく読み進められる一冊。贈り物にも最適です。

●エリザベス1世/ジャンヌ・ダルク/インディラ・ガンディー/テレサ・カチェンダモト/武則天/ハリエット・タブマン/ボウディッカハトシェプスト/イサベル1世/サカジャウィア
●フリーダ・カーロ/ビアトリクス・ポター/ココ・シャネル/ビリー・ホリデイ/アンナ・パヴロワ/ミーラー・バーイー/マヤ・アンジェロウ/ジョージア・オキーフ/エミリー・ブロンテ/サラ・ベルナール
●フローレンス・ナイチンゲール/ヘレン・ケラー/アン・サリバン/メアリー・シーコール/シーリーン・エバーディー/マリア・モンテッソーリ/マザー・テレサ/ワンガリ・マータイ/エリザベス・ブラックウェル/エバ・ペロン
●マリー・キュリー/レイチェル・カーソン/エイダ・ラヴレス/ヒュパティア/ロザリンド・フランクリン/メアリー・アニング/キャサリン・ジョンソン/ドロシー・ホジキン/ダイアン・フォッシー/ワレンチナ・テレシコワ/マララ・ユスフザイ/リゴベルタ・メンチュウ/アメリア・イアハート/ハンナ・セネシュ/ローザ・パークス/ヌーア・イナヤット・カーン/エメリン・パンクハースト/キャシー・フリーマン/田部井淳子/アンネ・フランク

高木香織(たかぎ・かおり) 編集者・文筆業

出版社勤務を経て編集・文筆業。子育て・児童書・健康・医療の本を多く手掛ける。編集・編集協力に『美智子さまから眞子さま佳子さまへ プリンセスの育て方』『子どもの「学習脳」を育てる法則』(ともにこう書房)、『頭のよい子の家にある「もの」』『モンテッソーリで解決! 子育ての悩みに今すぐ役立つQ&A68』(ともに講談社)、『ピカソ 型破りの天才画家』『部活やめてもいいですか。』『リトルプリンセス 小公女セーラ』(すべて講談社青い鳥文庫)、『かみさまのおはなし』『犬と猫 どっちも飼ってると毎日たのしい事典』『美容お灸』(すべて講談社)など多数。著書に『後期高齢者医療がよくわかる』(リヨン社)、『ママが守る! 家庭の新型インフルエンザ対策』(講談社)。


文/高木香織