ミモレ読者の方々から、「昨年までは、毎日TVで元気な姿を観ていたから、最近はお見かけしなくて寂しい……」といった声が多く寄せられていた雨宮塔子さん。キャスターとして仕事をされた3年間の日本での暮らしは、どのようなものだったのでしょう。また特に今年は、コロナ禍という今までにない生活を余儀なくされた年でもありました。そんな中、パリに戻られてどんな暮らし方をされているのか、またこれからのお仕事についてもお話を伺いました。

 

雨宮塔子
1970年12月28日生まれ。東京出身。成城大学文芸学部英文学科卒業後、1993年TBS(株式会社東京放送)に入社。バラエティ番組のアシスタントから、情報、スポーツ番組、またラジオなどでも活躍。1999年にTBSを退社し渡仏。フリーキャスター、エッセイストとして活動する中、2016年7月から2019年5月まで『NEWS23』(TBS)のキャスターを務めた。同年9月よりパリに拠点を戻す。一男一女の母でもある。『パリに住むこと、生きること』(文藝春秋)『パリ、この愛しい人たち』(講談社)、『金曜日のパリ』など、著書多数。現在は『雨宮塔子のパリ通信』(ニュースが少しスキになるノート from TBS)を連載中。

 


今の年齢だからこそ、伝えられることがある


2016年から昨年まで、パリから日本に戻り『NEWS23』のキャスターを務められた雨宮さん。実は17年ぶりの日本での仕事の話が届いた際には、やや不安もあったそう。

雨宮:当初オファーを頂いた際は、東日本大震災など、日本の方々が遭遇した切実な現実に肌で触れていないのに、私が何を伝えられるのだろう?という疑問が正直あって。でも娘から「このお仕事は絶対諦めちゃだめだよ」と言われたのもあり、逆に、私のような立場だからこそ、できることがあるのかな、という気持ちに切り替わったんです。日本を離れていた身だからこそ、情勢を俯瞰して見ることができる気がしましたし、出産、離婚を体験し、この年齢になったことで、いいことも悪いことも様々に経験値を積んできたからこそ、伝えられることがあるのではと思えたんです。

実際に日本でキャスターの仕事が始まってからは、充実した日々を送っていた雨宮さん。特に報道番組に関わるスタッフの熱量には、非常に刺激を受けたと語ります。

雨宮:何かを皆で作り上げる、目標に向かって一丸となるという感覚を久しぶりに味わいました。以前は報道というものにレギュラーで関わったことがほぼなかったので、あのパッションはすごいなあ、と。同じ女性でも、企画を出して、それを通して、自分で取材もインタビューも行い、編集までして……そんなことを全部やってのけちゃうところをみると、もう感心しきりでした。キー局のアナウンサーは編集まではしないので、そういう姿勢が本当に格好いいな、と思いました。

では、『NEWS23』で面白かったエピソードはありますか?と伺うと、雨宮さんの人柄が伝わるような返答が。

雨宮:よく呑んでましたね、スタッフと。スタッフが本当に良かったんですよ。ご一緒していたメインキャスターの星浩さんは素晴らしい方でしたし、駒田君、皆川さん、宇内さんというTBSの後輩アナウンサーは皆それぞれいとおしくて(笑)。ADの女の子たちともよくお茶や食事を一緒にしていました。よく呑んでいたのも、お酒自体というよりも、皆とよりカジュアルに接することができて、本音が聞ける、その人のことがよりわかるところが良かったんです。でも、そういう時に女性がお酌するのが多い気がしたんですね。フランスでは男性が注ぐのが普通なので、「あ、お酒は女の人に注いでもらうのが好きな日本の空気は変わらないなあ〜」と思いました。
私も天邪鬼なので、特にワインなどは「絶対触らない!」と意固地になったり。もちろん若い男性の中にはスマートに注いでくれる人も少なくないのですが、そうでない人には偉そうに「ワインは男性が注ぐものなんだから、注ぎやがれ〜」なんて。口が悪すぎますよね(笑)。

緊張感こそが、人の佇まいを整える

 

そんな3年間のキャスター生活を終え、昨年パリに戻られた雨宮さんですが、パリ生活を謳歌する間もなく、世界はコロナ禍に突入。フランスはヨーロッパでも1、2を争うほどのコロナ患者数の国となり、ロックダウンを余儀なくされました。厳しい生活を体験したことで感じたのは、「普通」の大切さ。

雨宮:やはり、ささいな生活がとても大事というか、その中での喜びというものが、いかに大切なものだったかと気がつかされました。外出がほとんどできなかったので、子供たちとじっくり過ごせたことは良かったのですが、女友達とはずっと会えずじまい。ですので、ロックダウンが明けて会えた時の喜びはひとしおでした。そして、お洒落をして出かける場所があるというのは、やはり気分が上がるものなのだな……と。人に会い、言葉をきちんと話す、そういう緊張感が人の佇まいを作るのであり、それがないと身体も表情も緩んできてしまう。そしてこういう年代だからということもあって、緩んだ時間が長ければ長いほど、戻りにくくなってしまうんですよね。Netflixを朝まで観て……なんてしていたら、本当に顔色が悪くなってしまって(笑)。そもそも引っ越しがあり、気をつかわない格好をずっとしていたのですが、日々のちょっとした緊張感というものの大事さを痛感しました。

雨宮塔子さんのパリ生活
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